速効性窒素肥料について

  • 速効性の窒素肥料は効果の発現も早く、作物の生育の良否に直結する肥料です。
  • 速効性窒素肥料は施肥量が多すぎると濃度障害が発生したり、長期間適正濃度を保つためには施肥作業を何回も行わなければならないなどの問題点があります。
  • 工業的に製造されている窒素化学肥料のうち、速効的に効果の発現するものを表にまとめました。
表 速効性窒素肥料とその特徴

肥料名 窒素の性質 内容
 硫安  アンモニア性 ・保障成分はアンモニア態窒素20.5%以上。
・水溶液は微酸性で副成分として多量の硫酸根を含む。
・即効性で元肥、追肥いずれにも適する。
・硫酸根により他の窒素肥料より葉色が濃くなるが、アンモニア吸収後土壌中に残り、カルシウム、マグネシウムの流亡を助長して土を酸性化する。
 塩安 アンモニア性 ・保障成分はアンモニア態窒素25%以上。
・水溶液は微酸性で生理的酸性肥料である。
・硫安よりも水に溶けやすく、窒素の施用効果は極めて即効的ではあるが、雨による窒素の流亡も速い。
・多量施肥した場合、濃度障害を作物に及ぼしやすいので、分施体系の中で使用するのが望ましい。
硝酸石灰 硝酸性 ・保証成分は硝酸態窒素10%以上、石灰分を25%程度含有し、苦土、マンガン、ホウ素なども少量ずつ含む。
・水に極めてよく溶ける速効性の肥料である。
・窒素の施用と同時に石灰も施用されるので土壌を酸性化しない。
硝安 アンモニア性/硝酸性 ・保証成分はアンモニア態窒素16%以上、硝酸態窒素16%以上。
・水に大変溶けやすく、ぬれた葉に付着すると害がある。
・排水性の悪いほ場では根を痛めやすく、特に有機質肥料と混ぜて施用するとその傾向が強くなる。
尿素 尿素性 ・保証成分は窒素全量で43%以上。
・中性の無硫酸根肥料であり、施用してもすぐ土のコロイドには保持されない(特に低温下でその傾向が強い)。
・炭酸アンモニウムに変化するまでに、夏季の場合2日程度、冬季では1週間程度の期間を要する。・炭酸アンモニウムに変化する前に大雨に会うと、流亡してしまう。
・土壌吸着されないでいるために土壌溶液の濃度が上がってしまい、発芽障害を起こすことがある。
・尿素は葉面吸収を良く行い、市販の葉面散布剤の窒素成分はほとんど尿素態である。
石灰窒素 シアナミド性 ・保証成分は窒素全量で19%以上。窒素形態はシアナミド態で、副成分として石灰、ケイ酸、鉄などを含む。
・石灰はアルカリ分50%の保証で、酸性矯正力は消石灰と同等である。
・肥効は硫安と同等と考えられるが、肥効の発現は夏季で1週間、冬季では2~3週間程度かかる。
・畑作物に対しては、施用量が50kg/10a以下であれば、全層施肥した後7~10日してから播種・定植できるが、土壌が著しく乾燥している場合は、このような対策を講じても発芽障害を起こす危険性がある。
・シアナミドは毒性を有するので、散布作業はマスクをする、24時間以内の飲酒を行わないなどの注意が必要。