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1.スベリヒユとは
・スベリヒユは、スベリヒユ科の一年生広葉雑草で、北海道~沖縄まで日本全国に分布し、種子で繁殖する。草丈は15~30cmになる。
2.出芽に影響する環境要因
(1) 休眠性
・スベリヒユの種子は本質的に休眠がなく、いつも比較的高い発芽率を示す。しかし、湛水下では発芽率が低く、10月から4月までの湛水によって死滅する種子がある。(1977年、九州農試)
・スベリヒユは光要求量が極めて強く、暗条件では全く発芽しない。採種後間もなく高い発芽率を示し、休眠覚醒が進んでおり2次休眠は認められなかった。(1981年、九州農試)
(2) 種子としての寿命
・スベリヒユは2年半後までは10%以上の出芽率を示したが、4年半後では大部分が出芽力を失った。(1977年、農事試験場)
・25年間地中30cmに埋土した場合のスベリヒユの発芽率は2%で土中での寿命は長い。30cmに埋土したスベリヒユの翌年の出芽率は30%で低い部類に位置づけられた。(1994年、秋田県農試)
(3) 出芽に及ぼす環境の影響
・スベリヒユの最大出芽深度は2cmであった。(1979年、農事試験場)
・スベリヒユの最低発芽温度は12〜13℃で、発芽および生育の適温は20℃以上である。(1983年、千葉県農試)
・いずれの時期に発生したものも早期に登熟した種子が発芽率が高い。また、生育日数が長い親株から生産された種子が発生割合が高いことは、雑草防除の面から検討すべき特徴である。(1983年、千葉県農試)
3.生育に影響する環境要因
(1) 生理
・4℃以上の積算気温が827℃程度で播種から登熟まで達することから、年間2~3回世代交代している。(1975年、農事試験場)
・播種後の生殖成長開始は、スベリヒユでは播種時期に関わらず認められた。(2009年、東京農大)
・スベリヒユでは播種時期が遅いほど最高草丈が低い傾向にあった。(2009年、東京農大)
・中日性のスベリヒユは短日条件により開花が促進される傾向が認められた。(1991年、京都大)
・スベリヒユは16時間日長で分枝が顕著に増加し他の草種とは異なる反応を示した。(1991年、京都大)
・スベリヒユが作物に対し雑草害として影響を与えるのは葉齢で4〜5葉、草丈は5〜6cm以上とみられる。スベリヒユがこの生育段階に達するのは4月上旬に耕起された場合は約60日後、5月上旬に耕起された場合は約30日後、6月上旬では15〜20日後である。(1983年、千葉県農試)
(2) 土壌水分
・スベリヒユは乾生植物的特徴を持ち、耐寒性に優れた雑草である。(1990年、玉川大)
・スベリヒユはヒデリグサとも呼ばれるように、乾燥条件下で強い生育を示すものと一般に考えられている。実験の結果、スベリヒユは過湿条件で生長が大きく抑制された。(1981年、日本大)
・スベリヒユの生育は高温ほど優れ、土壌の乾燥条件に対して極めて強い耐性を持っている。(1975年、農事試験場)
(3) 温度
・スベリヒユは雑草の中では中間的な生育を示し、生育初期はそれほど競合力は強くないが、高温条件での生育が優れ、約25℃以上の条件では播種後30日の主茎長がラッカセイに、同じく地上部乾物重は陸稲に優った。したがって、初期除草が重要であるが、高温条件ほどその必要性が高い。(1978年、農事試験場)
(4) 肥料
・スベリヒユの生育は施肥量の多少に強く影響され(1975年、農事試験場)、高い窒素レベルで最高の生長量を示した(1980年、日本大)。
・スベリヒユは未耕地にはみられず、耕地にのみみられることから、肥料依存度の高い植物である。スベリヒユの生育は、条施区では畦内、全層施肥区では畦間と、肥料養分が多い条件で優り、全層施肥区の畦間で最も優れた。(1978年、農事試験場)
(5) 密度
・スベリヒユは高密度条件下で、いわゆる間引き現象による個体数の減少がみられるが、生存した個体の高い種子生産力によって単位面積当たりほぼ一定の生産を維持しているのが認められた。(1981年、日本大)
(6) 遮光
・スベリヒユでは遮光度の増加にしたがい栄養生長量は抑制されるが、種子生産量およびその構成要素は60%区で最高値を示し、さらに遮光度が増加すると(40、25%区)種子生産量は急激に減少した。(1981年、日本大)
・スベリヒユは主茎長が短く、遮光に対して抵抗性が弱い。(1975年、農事試験場)
4.機械的障害に対する抵抗性
(1) 刈取り
・再生率は、地際から3 cmの高さで刈取りを行った区ではすべて再生し100%であったが、刈取り前と比べて生育は劣った。再成長のすべては地上茎の節からの再生であった。一方、地際から刈り取った区では、スベリヒユでは再生しなかった。(2009年、東京農大)
・茎頂分裂組織が全て地上部で、その位置が生育の進行に伴い高くなるスベリヒユは、刈取りによってそれが除去されると全く再生できず、残ったとしても地下貯蔵器官がないため再生力は多年生植物に比べかなり劣るものと考えられた。(2009年、東京農大)
(2) 埋没
・スベリヒユは引き抜いたり、地際から切断しても再生する個体が見られるが、埋没処理には弱い。(1975年、農事試験場)
・スベリヒユは埋土直後の発生が高土壌水分ほど多い。(1977年、九州農試)
・埋没深6cmでは再生が起こらなかった。スベリヒユでは引抜きの有無にかかわらず、3 葉期に比べ5葉期で再生率が向上し、生育の進行に伴い再生個体が増加していた。(2009年、東京農大)
・スベリヒユは茎の節間伸長に伴い草丈が増大していく植物である。したがって浅い埋没であれば、茎の伸長により地上部へより突出しやすいものと考えられる。(2009年、東京農大)
5.防除対策
・以上の研究成果から、スベリヒユの防除対策は、次のように考えられる。
① 世代交代があり多産性であるので、必ず種子を落とす前に防除する。
② 除草剤の利用によって防除しやすい雑草なので土壌処理剤を効果的に使用する。
③ 機械除草はロータリカルチによる埋没処理とする。
④ 発生の多い畑では、被覆作用の大きいダイズやトウモロコシを作付する(輪作による防除)。
⑤ 発生の多い畑では、施肥方法を全層施肥から作条施肥に変更する。
⑥ プラウ耕で反転埋土し、出芽率を低下させる。