ファレノプシスウィルス病

農薬に関する記述については執筆当時のものであり、農薬を使用する場合は、必ずラベルの記載事項を確認し、適正に使用すること。

1.概要

2.被害のようす

(1) 発生動向
各地で発生しているが、軽症のものが多い。
(2) 病徴と被害
CymMVによるウイルス病には、激しいえそ症状を示すえそ斑病とモザイク症状を示すものがある。
1) えそタイプ
・えそタイプのものでは,葉に褐色のえそ斑点,えそ斑紋,えそ条斑などが現われ,その部分の細胞が崩壊してへこむ。
・えそを生じるタイプのウイルス病は被害が激しい。葉に褐色のえそ斑点やえそ斑紋、あるいはえそ条斑を生じ、その部分の細胞が崩壊し,株の生育が著しく阻害される。
2) モザイクタイプ
・モザイクタイプのものでは、葉脈に沿って退緑または淡黄色の条斑が現われる。この条斑は幅の狭いものから広いものまでみられるが、不明瞭なことがあるので、注意しないと見落としてしまう。あり一定しない。特に葉が老化してくると症状が不明瞭になるようである。これらの病株の花に異常は認められない。

3.病原菌の生態と発生しやすい条件

(1) 病原菌の生態
・CymMVはランに発生するウイルスのなかで、ラン科植物での宿主範囲の最も広いウイルスである。38属のラン科植物に感染することが知られているが、シンビジウムのほかにカトレヤ、エビネなどでの発生が特に多い。発生は全世界にわたっている。
・汁液接種により、ハブソウ、ツルナ、Chenopodium amaranticolorなどに局部病斑を生じる。ウイルスは汁液により容易に伝染するが、アブラムシなどによる虫媒伝染はしない。
(2) 発生しやすい条件
・株分けにより繁殖する場合は、親株がウイルスに感染していると、その子孫はすべてウイルスを引き継いでしまう。
・株分けや植替えなどの作業の際に、病株を取り扱った手指やハサミなどで、そのまま健全株に触れて作業を続けていると、ウイルスが次々と伝染してしまう。
・上段の棚に病株が並んでいる場合には、灌水の際に鉢底の穴から流れ落ちる水にはウイルスが含まれていると考えられるので,下段の棚にラン科植物を並べておくと感染のおそれがある。

4.防除のポイント

(1) 耕種的防除
① 資材等の消毒
・重要な伝染方法は汁液伝染であるから、植替えや切り花などの際に使うハサミやナイフなどの刃物は必ず消毒したものを使う。
・刃物の消毒には、火炎消毒(5秒)、リン酸3ナトリウム(第三リン酸ソーダ)浸漬(10倍液に3~5分)などの方法がある。
・第三リン酸ソーダの場合、安定のよい広口ビンなどに消毒液をつくっておき、これに数本の刃物を漬けておき、使用のつど消毒液に戻しておけば、手順よく作業ができる。第三リン酸ソーダは刃物を傷めることがないので安心である。
② 病株の除去
・病株の早期発見、早期除去も重要である。病株に気がつかないでいると、接触伝染で周囲の株に伝染させてしまうことになる。特に植替えなどの作業の前には、病株の発見に努める。
(2) 農薬による防除
農薬による防除法はない。