ショウガ青枯病について

農薬に関する記述については執筆当時のものであり、農薬を使用する場合は、必ずラベルの記載事項を確認し、適正に使用すること。

1.ショウガ青枯病の概要

(1) 病原菌
・病原菌は、細菌の一種であるRalstonia solanacearum レース4
・病原菌の死滅温度は、52℃、10分である。
(2) 症状
・地上部では、はじめ下位葉が黄化して萎凋する。黄化・萎凋はすみやかに上位葉に進み、やがて株全体が萎凋して枯死する。茎の地際部は水浸状に軟化し、茎を引き抜くと容易に抜けることが多い。また、茎は早期に倒伏する。これらの症状は、根茎腐敗病に類似している。
・塊茎では、表面がごくわずかに水浸状に変色する。また、塊茎を切断すると、内部が黄褐色に変色している場合がある。
・発病株の茎や塊茎を切断して水を入れた容器などに浸すと、白色の細菌液が糸を引くように流出する。
(3) 発生条件
・保菌した種ショウガは重要な伝染源で、病原菌は土壌中で生存し、次の伝染源となる。
・病原菌は水によって運ばれ、地下部の傷口から植物体に侵入する。侵入後は植物体内で増殖し、株を萎れさせるとともに、次の伝染源となる。
・ショウガ青枯病は伝染力が強く、大雨などでほ場が浸冠水すると水とともに運ばれた病原菌が広範囲に感染し、急激に発病が広がる場合がある。
・高温条件で発病しやすく、病勢の進展も早い。

2.対策

(1) 研究の歴史
・1997年に、わが国で初めて高知県で発生が確認され、1999年にショウガ青枯病と命名された。その後、農業環境技術研究所、高知大学、高知県農業技術センターなどで研究が行われているが、病原菌系統の判定など病理学的な基礎研究がほとんどで、現場の対策に利用できるような知見は、ほとんど見出されていない。
(2) 青枯病発生の歴史的経緯
・オーストラリアのショウガ青枯病は、1954年に中国から輸入した種ショウガが伝染源となって発生したと考えられており(Pegg and Moffett,1971)、日本で発生、分離されたⅡ型の菌株についても、同様に中国経由でショウガを通じて侵入したと推測されている(土屋,2008)。
(3) 対処法
1) 健全な種苗の確保
・種ショウガによる伝染を防ぐため、健全な種ショウガによる種子更新を行う。歴史的な発生経過から見て、中国産の種ショウガを利用する場合は、採種栽培の管理状況などの情報を入手する必要がある。
2) 化学的対処
・センチュウ類が多発すると発病を助長するので、土壌消毒によるセンチュウ類防除を  行う。
・高知県では、クロルピクリンくん蒸剤はショウガ青枯病に効果が期待できるとされている。
3) 耕種的防除法
・既発生ほ場の土壌を未発生ほ場に持ち込まない。
・病原菌は水によって伝搬されるので、ほ場の排水対策を徹底する。
・発病株は感染源となるため、見つけ次第ほ場外に持ち出して堆肥化するなど適切に処分する。
・連作ほ場で発生しやすいので、イネ科作物などを導入した輪作を行う。