アボカドの栽培(暖地)

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Ⅰ.導入に当たっての基礎データ

1.全体の概要

・傾斜地で、カンキツ栽培が困難になった場合に、あまり手のかからないアボカドに転作することが考えられる。
・植付後3年目(4年目)から収穫を開始し、経済樹齢は約30年と言われている。
・アボカドの結果率は、1万花に1果程度と極めて低い上に、着果した後も新梢との養水分の競合で鶏卵大になるまでは、多くの生理落果が見られる。
・開花型にAタイプとBタイプがあり、受粉率を高めるためAタイプとBタイプの品種を混植する
・アボカドは、なるべく剪定を行わず、摘心で樹体管理を行う。
・果実生産量が多かった翌年には生産量が減少する、隔年結果性を示す。隔年結果を少なくするためには、施肥やかん水をこまめに行うことが大事である。

2.反収および単価

・品種は、ベーコン、フェルテが良いようであが、隔年結果性が強いので、10a当たり収量は500kg程度と思われる。
・単価は、1kg当たり1,000円程度を見込むようである。

3.労働時間

・10a当たり労働時間は不明であるが、かなり省力的と思われる。

4.必要な苗木の量と価格

・開張性品種の場合、栽植密度5m×5mで10a当たりおよそ40本、直立性品種では3m×3mで110本程度植え付ける。
・苗の価格は、1鉢5,000円程度のようである。

Ⅱ.栽培技術

1.開園の準備

(1) 品種の選定
・アボカドの花は、両性花だが、雌ずいと雄ずいの成熟期間が異なる雌雄異熟花である。午前中に開花して受精態勢となり、午後には花弁を閉じて翌日の午後に再び開花して花粉を放出するものをAタイプ、午後に開花して受精態勢となり、夕方には花弁を閉じて翌朝に再び開花して花粉を放出するものをBタイプと呼び、AタイプとBタイプの品種を混植すると受粉率が高くなる。
・ベーコンは、開花型はBタイプ、耐寒性が高くマイナス4.4℃まで耐える。フェルテに比べ、気温の低い地域でも結実性が高い。甘味が強い。樹は直立性で炭疽病に弱い。果実が老化すると果頂部が裂果しやすくなる。
・フェルテは、開花型はBタイプ、気温の低い地域での収量は低いが、マイナス4℃近くまで耐える。食味は濃厚であるが、収穫後の店持ち期間は短い。樹は開張性で低樹高栽培に向く。炭疽病に弱い。
・ピンカートンは、開花型はAタイプ、耐寒性は弱くマイナス2℃程度である。食味は濃厚で大玉になりやすい。炭疽病には比較的強い。樹形は開張性である。
(2) 適地
・アボカドの根は酸素を大量に要求するので、滞水の恐れがない、水はけが良く通気性の良い傾斜地が適する。
(3) 植え付け
・接木苗の植え付けは遅霜の危険がなくなった4~5月に行う。
・定植は、80cm四方の穴を掘り、バーク堆肥20kg、苦土炭カル5kg、BMようりん3kgを施用し、よく混ぜる。苗は、地面から30cm程度高くなるように定植し、植付後に支柱とかん水、敷わらを行う。
・開張性品種では5m×5m、直立性品種では3m×3m程度で定植しておき、混みあってきたら間伐する。

2.幼園における管理

(1) 枝の管理
・剪定は基本的に行わず、枯れ枝を見つけ次第切り取る。
(2) 施肥
・少量の肥料を多回数に分けて施用する。窒素施用量は、1年生樹で10a当たり5kg、2年生樹で7kg程度である。
・地表0~20cmの細根の活動を良くするため、幼木時には敷草などの有機マルチで土壌を覆うようにする。
(3) 寒さ対策
・初年目と2年目の冬はコモがけで寒風対策をする。
・防霜対策として、防風林の裾枝を除去したり、雑草を刈るなどして気流が停滞しないようにする。

3.成園における管理

(1) 枝の管理
・倒伏を防ぐためには、とにかく新梢の摘芯と主枝の誘引により低樹高整枝を心がけることである。
・5~6月の春枝摘芯作業(枝の数を増やす)、7~9月の夏枝の摘芯作業(樹冠を横方向へ拡大させる)を行う。
(2) ミツバチ放飼
・受粉は虫媒で行われるので、ミツバチを放飼すると受粉率が高くなる。ただし、ミツバチはアボカドの花よりカンキツの花を好むので開花時期が重なるとそちらの方へ行ってしまう。
(3) 防風対策
・強風に会うと果実が落果してしまうので、防風対策が必要である。
(4) 施肥
・4月上旬に、春肥を施す。複合化成肥料を10a当たり50kg(窒素5kg)程度とする。
・6~7月にかけて、新梢を早めに摘芯し、生理落果防止のため液肥の葉面散布を頻繁に行う。
・収穫が始まってからは、液肥の葉面散布を10日間隔で数回行う。
・10月に秋肥として、複合化成肥料を10a当たり50kg(窒素5kg)程度施用する。
(5) かん水
・梅雨明けからお盆過ぎまでの灌水(夏期間に650mm程度または4年生樹で1日100㍑)が収穫量を左右する。
(6) 病害虫
・病害では、フィトフィトラ菌による根腐病と炭疽病、害虫では、幼木時のコウモリガの幼虫と、幼果期のカメムシには注意が必要である。
・ただし、登録のある農薬がなく、基本的には、樹勢をしっかりコントロールすれば、農薬を散布しなくても栽培が可能である。
(7) 収穫
・油分8%(乾物率21%)以上になれば収穫適期である。10月頃から収穫できるようになる。
・果実の収穫は、長い柄の先に袋が着いた収穫用ハサミで行う。