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Ⅰ.ゴーヤの概要
1.ゴーヤの導入
(1) 栽培面での特徴
・強健で高温乾燥に強く、日当たりと風通しがよければよく育つ。
2.来歴
・ゴーヤの原産地は、東インドや東南アジアで、15~16世紀に南方から中国へ伝わり、華南、華中、華北へと北上しながら広まっていったとされている。
・日本へは16世紀末頃に、中国から伝わったと考えられている。
・当初は食用より、観賞用や日陰をつくるための遮光植物として育てられることが多かったようである。
・独自に中国と交易をしていた沖縄(琉球)へはその過程で伝播したか、あるいは南方から別のルートで直接伝わったと考えられている。
・沖縄では独自のゴーヤの食文化が育まれた。
・かつては沖縄県や九州の南の地域で食べられていたが、1993年に沖縄県の果物や野菜が県外に出荷されるようになり、全国に普及した。
・なお、この野菜の植物名は、ツルレイシ(蔓茘枝)で、ゴーヤーは沖縄本島の呼び方、ゴーヤは八重山地方の呼び方、ニガウリは九州での一般の呼び方で、地方により形状など品種の系統も異なり、食べ方にも違いが見られる。
3.分類と形態的特性
(1) 分類
・ウリ科ツルレイシ属の野菜である。
(2) 根
・ウリ科作物であることから、根は広く浅く張るため、土壌の乾燥および過湿の影響を受けやすくなる。
4.生育上の外的条件
(1) 温度
・ゴーヤは高温性の作物で、低温に弱いので極端な早まきは禁物である。
・種まき期は、畑に定植するころの最低気温を15℃以上確保出来る時期から逆算して行う。
・発芽に必要な地温は25~30℃である。
5.品種
(1) 分類
・果実のサイズに応じ、果長35cm程度の大長品種、20~25cm長品種、15cm程度の短紡錘形品種などに分類される。
(2) 主な品種
・北海道で作られているゴーヤの主な品種は次のとおりである。
1) 島さんご(タキイ)
・強勢(分枝が旺盛、つるがよく発生、葉は大き目)で耐暑性があり、つるもちがよいため長期間の栽培が可能である。
・雌花の発生はやや遅いので収穫の始まりはあまり早くないが、茎葉が茂ってくれば安定して着生し着果する。
・果実のサイズは20~25㎝、果皮は濃緑でボリューム感のある短太果によく揃う。
・果肉はかためで、食感は歯ごたえがある。
6.作型
・北海道での主な作型は次のとおりである。
(1) ハウス雨よけ
・5月上旬~5月中旬は種、6月上旬~6月中旬定植、7月上旬~9月下旬収穫
Ⅱ.栽培技術
1.育苗
(1) 播種~発芽
・高温性のため、露地で発芽させると収穫時期がおそくなることから、できるだけ保温や加温して、早めに育苗することがポイントである。
・ゴーヤの種は、硬実(種子表面にクチクラ層という膜があり、給水を妨げる種子)で、発芽力が弱いので、まく前に種子をペンチで挟み、種皮に傷をつけて、水に2時間程度浸すと発芽ぞろいがよくなる。
・このとき、水に浮く種子は発芽しないので除去する。
・3号(9cm)ポットに種子を3粒まき、1cmくらい覆土し十分に水を与える。
・発芽適温は、25~30℃と高い。発芽までの地温は、28~30℃に保つ。順調に温度を保つことができれば、4~5日で発芽する。
・水分はポットの土が半分くらい湿る程度に与え、発芽までは土の表面が乾かないよう注意する。
・本葉が出たら間引きをして1本立ちにする。
(2) 定植までの管理
1) 温度管理
・発芽後は茎の伸びすぎを防ぐため、夜間の地温を20℃くらいに下げて管理する。
・気温は日中28~30℃、夜間18℃とする。
・定植の1週間ほど前から最低気温15℃、地温18℃を目安に徐々に温度を下げ、ならしを行う。
・最低気温は12℃以下にならないよう、定植まで管理する。
2) かん水管理
・晴れた日の午前中に、土の表面が乾いていたらポットの土3分の1が湿る程度に株元へ与える。
・水を与えすぎると、茎が伸びすぎてひ弱な苗になってしまう。
・定植の前日の夕方、苗床に十分に水やりをして、植え付け時に根鉢が崩れるのを防ぐ。
3) 追肥
・週に1回500倍の液肥を水やりを兼ねて施し、肥切れを起こさないようにする。
4) 鉢広げ
・本葉が2.5枚くらいになったら、鉢広げを行う。
・ポットの間を握りこぶし1つ分程度空けるのがよい。
5) 定植適期と苗質
・節間が詰まってがっちりしている、葉色が濃く病害虫がない、双葉がしっかりついている、根鉢がしっかりできている、本葉3.5枚程度の苗が、定植適期の理想的な苗である。
・育苗日数はおよそ30日で、本葉3~4枚のころに定植する。
2.畑の準備
(1) 適土壌と基盤の整備
・土壌の適応性は広いが、水はけがよく保水力のよい場所が適地となる。
(2) pHの矯正と土壌改良
・適pHは6.0~7.0で酸性に弱いので、酸性土壌ではかならず石灰を施しよく耕してから栽培にとりかかる。
3.施肥
(1) 施肥設計
1) 考え方
・ゴーヤは栽培期間が長いので、緩効性肥料を利用することにより草勢維持が期待できる。
2) 実際の施肥設計
例1
区分 | 肥料名 | 施用量 (kg/10a) |
窒素 | リン酸 | カリ | 苦土 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
基肥 | S121 | 90 | 9.0 | 18.0 | 9.0 | 2.7 | ・追肥分をあらかじめロング肥料で施用しておく ・実際の追肥は草勢を見ながら液肥で補う |
エコロング413(40日) | 20 | 2.8 | 2.2 | 2.6 | |||
エコロング413(100日) | 20 | 2.8 | 2.2 | 2.6 | |||
合計 | 130 | 14.6 | 22.4 | 14.2 | 2.7 |
例2
区分 | 肥料名 | 施用量(kg/10a) | 窒素 | リン酸 | カリ | 苦土 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
基肥 | S080E | 150 | 15.5 | 27.0 | 15.0 | 3.0 | ・追肥は草勢を見ながら液肥で補う |
合計 | 150 | 15.0 | 27.0 | 15.0 | 3,0 |
4.定植
(1) 畦立て、マルチ
・10a当たり堆肥を2~3tと苦土石灰を施してpHを調整したのち、基肥を全層に施し、1.2m幅の畝を立て、マルチをして地温を上げる。
(2) 栽植密度
・株間1m、10a当たり800株程度とする。
(3) 定植
1) 苗の状態
・根鉢がしっかりできている本葉3.5枚程度の苗を定植する。
2) 定植の方法
・早植えの場合は、小型トンネルなどで保温、活着促進を図る。
・定植は晴れた日の午前中に行い、深植えにならないように注意して苗を植え付け、株元を軽く押さえる。
・定植したら、株元にたっぷりとかん水する。
5.管理作業
(1) 温度管理
・栽培期間中の温度が低いと、着果不良や奇形果の発生が起こりやすくなるため、20~30℃付近で生育できるよう温度管理する。
(2) かん水管理
・乾燥には強いが、過湿や過乾燥になると根傷みを起こし、樹勢低下を招く。
・乾燥しすぎると尻すぼみとなり、果実の先が曲がってしまう。
・かん水をする場合は朝方に行う。
(3) 支柱立てと誘引
・初期生育は緩慢だが気温の上昇とともに細いつるがよく伸びるので、支柱は早めに立てキュウリネットを利用して、これに蔓が一面に広がるよう誘引する。
(4) 摘芯
・本葉が6~7枚で親蔓を摘心する。
・子蔓は元気の良いものを3~4本程度残して、扇型に誘引する。
・子蔓は2mくらい伸びたら摘心して孫蔓を伸ばす。
(5) 交配
・ニガウリは、受粉しないと着果しない。
・気温が低い時やビニールハウス内などでは、ミツバチの訪花が期待できないので、人工交配が必要である。
・朝の早いうちに受粉を行い、着果させる。
(6) 追肥
・親蔓が50cmくらいに伸びた頃、10a当たり窒素で5kg程度追肥する。
・次に、1番果の収穫開始期頃から10日~2週間に一度、化成肥料を少量、株元に施用する。
6.主な病害虫
ニガウリは、暑さに強く、病害もほとんど発生しないので栽培しやすい品目である。一応、病害ではべと病、疫病など、虫害ではアブラムシ、ヨトウムシなどに注意を払う。
7.収穫
(1) 収穫適期
・夏は開花後15~16日、盛夏には12~13日、秋には25~30日ぐらいで収穫適期になる。
・取り遅れると品質を大きく損ねるので、果実の先端にある、花おち部の黄変が始まらないうちに収穫することが大切である。
(2) 収穫方法
・緑色種は果実が緑色に色づき、白色種は表面のこぶが十分に膨らんできたころを目安にし、長果種では20~30cm、短果種では10~20cmになったころ、未熟果を採取する。
・収穫が遅れると果実は黄~橙色に変色し、果皮が裂け、種子が出てくる。
・長く収穫を続けるためにも、とり遅れには十分注意する。
・なお、果梗は硬いので、はさみで切り取る。