ニラの栽培

Ⅰ.ニラの概要

1.ニラの導入

(1) 栽培面での特徴
・ニラは、あちこちに雑草化していることからわかるように、とても丈夫で育てやすい野菜である。
・一度植えれば、毎年2~3回の収穫が可能である。
・ただし、良品を生産するには、3~4年ごとに株分けやタネまきなどで、株を更新することが必要である。
・栽培面でのポイントは、過湿に弱く干ばつにも弱い作物なので、pHの矯正をし、堆肥を十分施すなど土づくりに留意することと、肥効調節型肥料の利用や適切な追肥など作物生理に合わせた施肥管理を行うことである。
(2) 経営面での特徴
・全国的には、作付面積、収穫量とも変動があまりない野菜である。

2.来歴

・ニラはユリ科ネギ属の多年草で、中国西部から東アジアにかけての地域が原産とされ、モンゴルやインド、東南アジア、日本など広範囲で古くから栽培されてきたといわれている。
・中国では詩経(前1046年~前770年)に記載され、歴史的には3000年以上前から利用されていることになる。
・ニラは、アジア以外では中国系住民を除いてはほとんど利用されていない。
・わが国へは弥生時代に中国から伝来したといわれ、最初の記載としては古事記(712年)に「加美良」という名前で登場する。
・平安時代には、薬物辞典である本草和名(918年)には「古美良」という名前で出てくるなど、わが国でも古くから重要な野菜であったと考えられる。
・また、フタモジともよばれ、農業全集および本朝食鑑(1697年)に栽培法や効用が詳しく書かれている。
・ただし、ニラは長らく薬用として食べられていて、野菜として栽培されるようになったのは明治時代からで、戦後に中華料理が普及したことで一般的に利用されるようになった。

3.分類と形態的特性

(1) 分類
・ユリ科ネギ属の多年草である。
(2) 根
・浅根性であるため酸素を多く必要とする。
(3) 葉
・ニラは抽苔しても、側芽から発達する分けつにより増殖するので、2~3年間栽培を続けることができる。
・ニラの繁殖法には、種子と株分けの2つの方法があり、いずれも一度植え付けると4~5年は同じ場所で収穫が可能となる。
(4) 花芽分化と抽苔
・花芽分化は、主として長日によって誘起され、温度は12~15℃で高温ほど花房分化と発育が促進される。
・定植後1年目にはほとんど抽苔せず、一度冬を越した2年目の夏からそろって抽苔することから、グリーンバーナリ型植物であると推定される。

4.生育上の外的条件

(1) 温度
・高温および低温に対する耐性があり、かなり幅のある環境に適応する。
・種子の発芽最適温度は20℃前後であり、25℃以上および10℃以下ではほとんど発芽しない。
・茎葉の生育適温は16~23℃で、5℃以下では生育は停止する。
・25℃以上では葉は徒長し細くなり、30℃以上では生育は緩慢になり、40℃以上の高温になると葉先がわん曲し、白色や黄色の葉ヤケを起こす。
・また、5℃以下の低温では生育が衰え、冬になると地上部はやがて生育を停止し枯れてしまう。
・分げつは16~23℃の温度下で最も旺盛であり、新葉の出方や伸長も早くなる。
(2) 土壌
・土壌に対する適応性は広い方が、浅根性であるため酸素を多く必要とする。
・排水不良地では湿害を受けやすく、逆に夏期の高温時に干ばつ害を受けやすい性質をもつ。
・最適pHは6.0~6.7で、酸性土壌では生育抑制によって発育不良となったり、葉先が枯れこむ。

5.品種

・北海道で作られているニラの主な品種は次のとおりである。
(1) パワフルグリーンベルト(武蔵野)
・北海道において8割以上の作付け面積を占める品種である。
・草勢は強く、草姿は立性で収穫調製がし易い。
・分げつ数が少ないので、定植本数は6~7本とする。
・吸肥力が強いので追肥はやや控え、倒伏を防止する。
・耐寒性、耐病性はやや低く、香りはやや劣る。
・休眠が深いため、10~3月に収穫する栽培には不向きで、4~9月に収穫する作型で利用する。
・葉色は従来品種よりも特に濃く、葉肉厚く市場性が高い。
・春先に発生する「株腐細菌病」の発生が少ない。
(2) たいりょう(渡辺採種)
・「ジャンボニラ」とも呼ばれていて、葉はやや淡緑で幅は広く1.5cmにもなる。
・寒冷地の促成栽培に向いている。
(3) ミラクルグリーンベルト(武蔵野)
・休眠がなく、低温伸長性が強く、周年栽培が可能な品種。
・草姿は立性で葉鞘部は長く、収穫調製が容易である。
・分げつがやや少ないので、定植時の植付本数は4~5本位とやや多くする。
・露地栽培ではトロケ、傷みが生じやすいので、夏秋期は雨よけ栽培とする。
・葉色が濃く、葉幅が広く、葉肉が厚く、品質は良好である。

6.作型

・北海道での主な作型は次のとおりである。
(1) ハウス促成
・3月下旬は種、6月下旬~7月上旬定植、1月中旬~4月上旬収穫
(2) ハウス半促成
・4月上旬~5月中旬は種、7月上旬~9月上旬定植、1月下旬~5月上旬収穫
(3) トンネル早熟
・4月下旬~5月中旬は種、8月中旬~9月中旬定植、4月中旬~6月上旬収穫
(4) 露地
・4月下旬~5月中旬は種、8月中旬~9月中旬定植、5月上旬~6月下旬収穫

Ⅱ.ニラの栽培技術

1.育苗

(1) 苗床の準備
・苗床予定地は酸度をpH6.5前後に矯正し、完熟堆肥を十分施しておく。
・本畑10aに対して1aの苗床が必要で、は種量は1.2㍑となる。
・施肥量は1a当たり成分量で窒素2.4kgリン酸3.0kg、カリ2.1kg程度とする。
(2) 種まき
・タネは発芽しにくいので、まく前に一晩水に漬けておく。
・10cm間隔の条播とし、1~1.5cm間隔で種をまき、6~8mm覆土して軽く鎮圧する。
・種子の発芽最適温度は20℃前後、最高25℃、最低10℃と発芽温度の範囲が狭い。
(3) 定植までの管理
・は種後は直ちに乾燥防止のため敷ワラなどで覆い、その後十分かん水し出芽まで乾燥させないよう注意する。
・発芽までは15日前後かかり、発芽してきたら早めにワラを除去し徒長を防ぐ。
・本葉2~3葉期に混み合っている部分を間引きし、苗立ちを揃える。
・生育が不揃いの場合は追肥などで調節する。

2.畑の準備

(1) 適土壌と基盤の整備
・過湿に弱く夏の高温、干ばつにも弱いので、水はけのよいところに堆肥を多用して栽培する。
(2) pHの矯正と土壌改良
・酸性土壌では生育不良で葉先が枯れこむので、pH6.5くらいに酸性矯正を行う。
(3) 堆肥の施用
・堆肥は5t前後までは効果が高く現れる。
(4) 輪作
・連作障害はでにくいが、一度栽培したところでは、少なくとも2年は栽培しないようにする。

3.施肥

(1) 肥料の吸収特性
1) 総論
・ニラは土壌から吸収する養分量が最も多い作物の一つである。
・窒素とカリの吸収量が極めて多いが、石灰の比率は低い特徴がある。
・平均気温が15℃以上になると十分な肥効が現れる。
(2) 施肥設計
1) 考え方
・土壌の肥料濃度は塩基飽和度80%以上、石灰飽和度50%以上、硝酸態窒素50mg以下、EC0.3~0.5mS/cmが高収量をあげる条件といわれている。
・定植から収穫までの期間が長いため、基肥よりも追肥に重点を置いた施肥とする。
・基肥は緩効性肥料を主体にほ場全面に施用し、できるだけ深く耕起する。
・日本一のニラ生産地である栃木県では、肥効調節型窒素肥料180日タイプを60%含有しているニラ専用の肥料を窒素成分で10a当たり20kg施用している。
・ハウス栽培の場合、定植年は10a当たり窒素26(うち基肥10)kg、リン酸40kg、カリ20(うち基肥12)kgを、2年目以降は10a当たり窒素26(うち基肥8)kg、リン酸16kg、カリ16(うち基肥4)kgを標準とする。
・露地栽培の場合、定植年は10a当たり窒素16(うち基肥8)kg、リン酸16kg、カリ12(うち基肥4)kgを、2年目以降は10a当たり窒素20(うち基肥5)kg、リン酸10kg、カリ16(うち基肥4)kgを標準とする。
2) 施肥設計(例)
ハウス(定植年)

 区分 肥料名 施用量
(kg/10a)
窒素 リン酸 カリ 苦土 備考
基肥 DdS509 70 10.5 14.0 6.3 1.1 ・追肥は、定植後25日後と50日後に分けて行う
追肥 S444 100 14.0 4.0 14.0
合計 170 24.5 18.0 20.3 1.1

ハウス(2年目以降)

 区分 肥料名 施用量
(kg/10a)
窒素 リン酸 カリ 苦土 備考
基肥 DdS509 60 9.0 12.0 5.4 0.9 ・追肥は、収穫終了後、7月、8月の3回に分けて行う
追肥 S444 120 16.8 4.8 16.8
合計 180 25.8 16.8 22.2 0.9

4.定植準備

1) 畦立て、マルチ
・畝幅は畑の場合90cmの平畝か平高畝にし、水田の場合は140~150cm幅の高畝とする。
(2) 栽植密度
・ハウスでは条間35cm、株間20cm、10a当たり11,000株程度、露地では条間35cm、株間20~30cm、10a当たり6,600~10,000株程度とする。

5.定植

(1) 苗の状態
・草丈30~35cm、葉の幅5~6mm、葉数5~6枚で、2~3本に分けつしている苗を定植する。
(2) 定植の方法
・植付け時の葉の長さは、15㎝程度に切りそろえて植える。
・植える深さ6cmくらいとし、1か所に5~6本ずつまとめて植えつける。

6.管理作業

(1) 追肥
・追肥の時期や量を適正に行い、初期はじっくり育て、後半生育を旺盛にする形が理想である。
・新葉が黄緑色となって展開し始めたら、速やかに追肥を中止する。
・追肥は一度に多量に施用するより、少量ずつ回数を多くする方が効果的である。
・ハウス促成栽培では9月から10月にかけて3~4回追肥して株養成し、捨て刈り後保温を開始し1~4月にかけて収穫し、その後は2年間で8~10回収穫して株を終わらせる。
・ただし、9月から10月にかけての追肥を省略しても収量低下はあまり見られず、葉中の硝酸イオン濃度を大幅に低下させることができるので、内部品質を重視する場合は追肥を行わない方がよい。
・気温の関係から肥効が認められるようになるのは3月下旬頃からで、この点を考慮に入れると追肥は2月下旬~3月上旬から始めればよい。
・ハウス栽培の場合、定植年は、定植後25日目と50日目の2回、それぞれ10a当たり窒素8kg、カリ4kgを、2年目以降は、収穫終了後と7月、8月の3回、それぞれ10a当たり窒素8kg、カリ4kgを施用する。
・露地栽培の場合、定植年は、8月、9月の2回、それぞれ10a当たり窒素4kg、カリ4kgを、2年目以降は、収穫終了後と8月、9月の3回、それぞれ10a当たり窒素5kg、カリ4kgを施用する。
(2) 土寄せ
・20~30日おきに、分葉点に土をかけないように、茎の白い部分のみに土を寄せる。
・年々株が上がってくるので、それにしたがって土寄せする。
(3) 花茎処理
・長日、高温条件で7月中旬から抽苔するので、早めに摘み取って株が弱らないようにする。
・一斉に抽苔してこないので、3回程度に分けて実施する。
(4) 茎葉の処理
・冬季に枯れた茎葉は放置せず、全部集めて処分し、病気を翌年に残さないようにする。
(5) 草勢
・肥料不足では葉が黄緑色となり、分げつや茎葉の伸長が抑制される。
・肥料濃度が濃すぎると根の伸長が止まって生育が停滞し、葉先枯れが生じることもあり、草姿が立性とならずに生育初期から外葉が下垂するようになる。
・多肥条件下では生育は旺盛で葉は濃緑色を呈するが、新葉が黄緑~黄色となって展開するようになる。
・収量・品質は定植から越冬までの生育状況に大きく影響を受ける。
(6) 作物中の硝酸イオン濃度
・作物中の硝酸イオン濃度を低くするためには、生育温度を低くすること、遮光をしないことが有効である。
・春の追肥に肥効調節型肥料(70日タイプ)を利用すると、速効性肥料の分施に比べ省力的で収量も高く、葉中硝酸態窒素濃度の低下も大きい。

7.主な病害虫と生理障害

(1) 病害
・北海道において注意を要する主な病害は、褐色葉枯病、乾腐病、軟腐病、白色疫病、白斑葉枯病、べと病などである。
(2) 害虫
・北海道において注意を要する主な害虫は、タマネギバエ、ネギアブラムシ、ネダニなどである。
(3) 生理障害
・主な生理障害は、葉先枯れ症などがある。

8.収穫

(1) 収穫方法
・ハウス栽培では、3~4回、露地栽培では、2~3回刈り取る。
・草丈が45cm程度(たいりょうの場合35cm程度)で、太さ、長さを揃えて収穫する。