レタスの栽培

 Ⅰ.レタスの概要

1.レタスの導入

(1) 栽培面での特徴
・高温期の栽培は、結球と抽苔の関係で、特に品種選定に注意が必要である。
・栽培面でのポイントは、作型に合わせた品種選定、育苗時の温度管理、有機物の投入による土づくりなどである。
(2) 経営面での特徴
・全国的には、栽培面積、収穫量ともやや増加傾向にある野菜である。

2.来歴

・レタスの原産地は、地中海沿岸から西アジアにかけての地帯といわれている。
・野生種の利用は非常に古くから行われており、紀元前4500年頃の壁画にレタスが描かれている。
・これらの野生種をもとに、地中海地域で改良され栽培されるようになったらしく、紀元前1500年頃の古代エジプトではすでに栽培されていたと考えられている。
・また中国でも古くから栽培が行われており、ヨーロッパで発達したレタスのグループと中国などで発達したチシャと呼ばれてきたグループがある。
・これらは、いずれも結球しないタイプで、結球する玉レタスが生まれたのは16世紀頃のことである。
・日本には、長屋王邸跡で発掘された木簡に「知佐」という記述が見られることから、712年にはすでに中国から伝わっていたと考えられ、下葉から順次かきとって葉を利用するカキ(掻)チシャとして栽培されていたようである。
・現在のような丸い結球レタスは、幕末に一部導入されたが、実質的な栽培が始まったのは明治時代以降のことで、本格的に普及したのは進駐軍の特需野菜として導入された第二次世界大戦以降のことである。

3.分類と形態的特性

(1) 分類
・キク科アキノノゲシ属の一年草または二年草である。
(2) 根
・有効根群域は40cmで、浅根性である。
・25cm以内に硬盤がある作土では生育が悪い。
・酸素要求量が多いため、排水性や通気性の確保が重要である。
・根重は結球開始期から増加し、それに伴い地上部も充実する。(
(3) 葉
・本葉5~6枚を越えるころから、花芽分化の高温感応が高まる。
(4) 花芽分化
・レタスの花芽分化には低温の遭遇は不要で、逆に、高温ほど起きやすく、長日・高温で花成が促進される。
・ただし、短日・低温でもゆっくりではあるものの花成は進み、ある程度齢が進めばいずれは抽苔する植物である。
・花芽は茎径0.5mm以上になったときから分化しやすく、5℃以上の有効積算温度が1500~1700℃くらいで行われると言われている。
・ただし花芽分化後でも、15℃以下の条件下では抽苔せずに結球する。
・実際の栽培では結球に十分な葉数が発達し、収穫時までに花序が肉眼でわかるほど発達していなければよいので、茎葉の発達・結球と抽苔との競争になる。

4.生育上の外的条件

(1) 温度
・発芽の最適温度は15~20℃で、4℃以下では発芽せず、30℃以上では発芽障害を起こす。
・外葉の生育適温は20℃前後とされ、根の生育適温はやや低く約15℃である。
・結球の生育適温は17~20℃で、夜間の最低気温がやや低い方が品質は安定する。
・以上から、レタスは冷涼な気候を好み、生育適温は15~20℃程度といえる。
(2) 水分
・土壌、空気とも多湿を嫌う。

5.品種

・北海道で作られているレタスの主な品種は次のとおりである。
(1) シルル(住化)
・晩抽性・耐暑性・耐病性に優れる「サリナス×エンパイヤ系」の早生品種。
・温度感受性が鈍く、安定した結球性・包合性・尻張りを示し、幅広い作型に使える。
・外葉は比較的コンパクトで、分球・異常結 球などの発生が少ない。
・球形は豊円~やや扁平で、葉色は濃緑色でテリがある。
(2) 春P(シンジェンタ)
・従来のカルマー系品種より約5~7日早く収穫でき、低温肥大性・形状安定性に優れた春どりに最適な極早生品種。
・耐寒性、耐病性(べと病耐病性)に優れ、タケノコ球、腰高球、大玉軟球の発生が少なく作り易い。
・球はやや扁平で結球性、抱合性に優れ、球尻の形状も美しい。
・球色は、ツヤのある濃緑色で見栄えが良い。
・極早生種で玉揃いが非常に良い品種なので、8分結球のやや若どり収穫を心掛ける。
(3) コロラド(渡辺採種)
・濃緑種でテリがある極早生種。
・球は600~650gの中玉で揃い良く、タケノコ球、フウセン球の発生が少なく、収量の安定性に優れる。
・地力の低い圃場で栽培しても、小玉になることが少ない。
・球内葉も鮮緑色を呈し果肉が厚く、輸送性に富み日持ちが良い。
(3) Vレタス(カネコ)
・結球の安定性に優れたサリナスタイプ系の早生種。
・変形球が少なく、腐敗病に強いので作りやすく、多収である。
・球色は濃緑色で球形は扁円球となり、中球で良く揃う。
・高冷地の7~8月と9月下旬~10月上旬どりに適する。

6.作型

・北海道での主な作型は次のとおりである。
(1) 初冬まきハウス
・11月中旬~12月中旬は種、12月下旬~1月中旬定植、3月下旬~4月上旬収穫
(2) 冬まきハウス
・1月上旬~2月上旬は種、2月中旬~3月中旬定植、4月下旬~5月中旬収穫
(3) 春まきトンネル
・2月中旬~3月中旬は種、3月下旬~4月中旬定植、5月中旬~6月下旬収穫
(4) 露地普通(春まき~夏まき)
・4月中旬~7月下旬は種、5月上旬~8月中旬定植、7月上旬~10月上旬収穫

Ⅱ.レタスの栽培技術

1.育苗

(1) 施設・資材の準備
・トレイは必ずエアープルーニング方式の設置とし、トレイを載せる架台(ベンチ)は水平に設置し、かん水が均一になるようにする。
(2) 育苗土
・用土は、専用培土を使用する。
(3) 育苗容器
・育苗方法は、移植作業の機械化に伴いセル成型育苗が主体となっており、200穴セルトレイの利用が多い。
(4) 種まき
・レタスは好光性種子であるが、ペレット種子には覆土が必要である。
・サニー、リーフは特に光を好むので、覆土を浅くする。
(5) 発芽
・発芽適温は15~20℃で、25~28℃以上になると休眠に入って発芽しにくくなり、30℃以上では著しい発芽不良となる。
・は種後24時間程度の温度条件が大きく影響するため、特に高温期の育苗では遮光資材や白色トレイの利用、夕方に播種するなどの配慮が必要である。
・一斉収穫する場合は、発芽揃いが特に重要となる。
・レタスの発芽は、吸水後短時間で進行するため、播種後のかん水管理は重要である。
・かん水の目安としては、トレイの下から水が少し落ちる程度とし、コート内にある種子が吸水するのに十分な水分を補給する。
・発芽後、子葉が完全に離れるまでは乾燥させないようする。
・苗の徒長を防ぐため、芽が見えはじめたら直ちに被覆資材を取り外し、日光に十分当たるようにする。
(6) 温度管理
・温度管理は日中20℃前後、夜間15℃を目安に行い、25℃以上にならないように管理する。
・定植5~7日前から夜間の寒気の強い日を除き、昼夜ともハウスを開放して、苗を外気温に馴らしていく。
(7) かん水管理
・かん水は、特に外縁部に注意し、できるだけ均一に行う。
・かん水は、ハウス内に溜置きした水を朝かけることが原則である。
・ただし、乾燥が激しい場合は夕方までに地表面が乾く程度に、途中軽くかん水することもある。
・レタスは特に過湿に弱く、根傷みや徒長になりやすいので、過かん水にならないよう十分注意する。
(8) 定植までの管理
・200穴トレイの場合で25日程度の育苗とする。
・苗質は草丈4~6cm、葉数(本葉)3~4枚を目安とする。
(9) 追肥
・セル育苗では、培土量が少なく肥切れになりやすいので、育苗期間中に追肥を行う。
・葉色(特に子葉)が薄かったり、葉が細長い場合は、肥料が不足している可能性が高いので液肥で追肥を行う。

2.畑の準備

(1) 適土壌と基盤の整備
・排水不良のほ場では、湿害や病気を誘発するだけでなく、フウセン球など異常結球の原因となるので、暗きょや心土破砕を実施するとともに高畦栽培を行って、排水対策を万全にする。
(2) pHの矯正と土壌改良
・レタスは特に石灰を好み、好適pHは6.0~6.5とされている。
・夏どり作型では干ばつの恐れがあるので、pHを6.5まで矯正する方がよい。
・塩類濃度には比較的弱い(EC:0.4~0.5ms/cm)。
(3) 堆肥の施用
・レタスは、有機物の施用効果が高い作物である。
・保肥力や保水力を高めるためにも、良質な堆肥を10a当たり2~3t程度投入する。
・レタスは、地力窒素が生育に与える影響が大きく、地力のある畑でないと品質の良いレタスが作りづらい。

3.施肥

(1) 肥料の吸収特性
1) 総論
・10a当たり1tの生産量を得るために必要な養分の吸収量は、窒素 1.6kg、リン酸0.9kg、カリ4.0kg、石灰0.8kg、苦土1.5kgとされている。
・収量性と各養分吸収との相関は、窒素0.67、燐酸0.87、加里0.91とされ、窒素に対してリン酸、カリが収量構成要因として強くはたらく傾向が認められる。
・レタスは外葉形成初期の生育が緩慢で、発芽後20日前後までは地下部の生長も小さいため養分吸収量も小さい。
・レタスは外葉形成後期から球肥大期にかけて急激な養分吸収の増大が認められる。
・レタスはハクサイ、キャベツと比較して濃度障害が発生しやすい作物であり、肥料の多少に敏感に反応する作物である。
・窒素では過不足の影響が生育に強く現れ、リン酸や石灰では欠乏による生育停滞や生理障害が発生しやすい。
2) 窒素
・レタスは、根におけるアンモニア態窒素の同化能力が高い好アンモニア態窒素の作物で、好硝酸態窒素の多い畑作双子葉作物のなかでは特徴的な吸収特性が見られる。
・窒素の過剰施用は過大軟球の発生、葉の凸凹、葉肉が厚く玉締まりが悪くなるなどの障害が発生する。
・生育中期以降の窒素過剰の大きな特徴は、結球開始期が遅れることである。
・窒素欠乏の反応特性は、株全体の生育不良、葉が小さく黄化するなど多くはチャボ玉と呼称される小球になる。
・窒素欠乏は他の養分と異なり供給による回復も早く、葉面散布による効果が期待できる。
・播種後結球開始期までの日数を把握することにより、窒素の肥効をある程度推定することができ、追肥の判断に使える。
・窒素施肥量の少ない品種と多い品種では2倍以上の違いがある。
・品種による窒素の吸肥力はタイプによって異なり、カルマータイプ>サリナスタイプ>エンパイヤタイプ>マックタイプの順で、施肥量の多さはこの逆となる。
・マックタイプの品種は窒素施肥反応が鈍いため、畑の肥沃さが不均一でも生育が揃いやすい。
・エンパイヤタイプ、サリナスタイプは施肥窒素の利用率が低い傾向がある。
・施肥窒素の利用率は、最も高い品種の夏どり作型で32%程度、最も低い品種の秋どり作型で7%程度で、他の野菜と比較して低い特徴がある。
3) リン酸
・リン酸の吸収量は一般の野菜と大きな差はなく、生育初期に不足すると生育が遅れる。
・リン酸量によっても、活着や生育状況に影響が見られる。
4) カリ
・レタスは、窒素に比べてカリの吸収量が多く、特に結球期以降に吸収量が増え、球の肥大充実に影響する。
・ただし、水溶性カリの多施用は、カリのぜいたく吸収を促進し、拮抗作用により石灰、苦土の吸収が阻害され品質低下に結びつく。
5) その他の要素
・レタスは、ホウ素欠乏が起きやすいので、FTEなどの微量要素肥料も基肥として施用する。
・レタスは石灰の吸収量が多いが、窒素やカリの吸収の増大に伴い石灰の吸収が抑制され、乾燥状態が続くとチップバーンや芯腐れなどの生理障害が発生する。
(2) 施肥設計
1) 考え方
・10a当たり窒素15kg、りん酸18kg、加里20kgを基準量とし、作期や地力に応じて、施肥量の増減を図る。
・施肥は、全量基肥とし、硝酸態窒素入りの化成肥料と、緩効性肥料や有機質肥料を組み合わせて施用する。
・本畑の施肥は、濃度障害回避のため定植7~10日前までに行う。
・夏どり作型では、地力窒素の影響を受けやすいので2割程度減肥する。
・春どり作型、秋どり作型では基肥の比率を高め、特に秋どり作型では追肥の効果がしだいに小さくなるためこの傾向を強めるべきである。
・低温期ほど養分吸収が緩慢で、生育期間が長くなるため多肥栽培とする。
2) 施肥設計(例)

 区分 肥料名 施用量
(kg/10a)
窒素 リン酸 カリ 苦土 備考
基肥 S555 60 9.0 9.0 9.0 1.8 ・即効性肥料と緩効性肥料を組み合わせる
S009E 60 6.0 12.0 5.4 1.8
合計 120 15.0 21.0 14.4 3.6

 

4.定植準備

(1) 畝立て、マルチ
・気温の低い時期の作型では、黒マルチ・透明マルチ・銀ネズマルチ等の被覆により、地温を確保し、生育促進や球の肥大・充実を促すことができる。
・白黒ダブルマルチの被覆は、高温障害を受けやすい夏期の栽培に特に効果が高く、地温の上昇を抑えることができる。
・被覆は土とマルチが密着するように行い、植え穴は定植時にあける。
・マルチの効果は生育促進や球の肥大、充実に大きく関与し、低温期ほどこの傾向が顕著である。
・マルチは高温期でも、乾燥に対する対策として有効で、生育促進とともに品質向上にも効果が大きい。
・マルチ栽培では土壌養分の吸収促進効果が働くため、通常の露地栽培に比べ2~3割減肥する。
・ブームスプレーヤで防除する場合、必ず防除用通路を設置する。
(2) 栽植密度
・栽植密度は畝幅45~50cm、株間25~30cm、10a当たり6,666~8,888株を目安とする。
・株間の決定は栽培時期と品種選定、目標出荷サイズを考慮し、結球前に外葉が触れあうような間隔とする。
・大玉を狙うなら、株間を35cm程度に広げる。

5.定植

(1) 苗の状態
・活着までの養水分確保のため、定植当日早朝までeトミー600倍等の液肥でドブ漬けし、セル培土に十分吸水させておく。
(2) 定植の方法
・セル成型苗の定植に当たっては、砕土整地を丁寧に行い、土壌水分が十分あるときに定植する。
・定植時の植付けは、セルが地上部に出ないように注意する。
・芯ズレは、定植姿勢が悪い場合や大苗定植、強風地帯で発生が多い。
・定植芯は大切で、深植えでV字となり、浅植えでは後に倒れる。

6.管理作業

(1) かん水管理
・レタスは、比較的土壌水分の多い方が球の充実肥大がよく、乾燥すると葉の生育が抑制される。
・かん水の効果は結球始期頃までで、球が肥大してからのかん水はマイナス要因となることが多く、水分過剰によるタケノコ球やフウセン球などの原因となる。
(2) べたがけ栽培
・低温期の活着や初期生育の促進に効果があり、収穫も早まるため4月中~下旬定植の露地作型では、べたがけ栽培を原則とする。
・ただし被覆期間を長くすると、変形球や病害の発生を助長するので、おおむね10日程度の被覆とする。
・べたがけ資材と直接触れている葉身部分は、強い降霜に会うと凍害を受けることがあるので、強い降霜が予想される地帯や作型においては、べたがけ資材を用いたトンネルによる浮きがけとするのが望ましい。
・秋作においては、最低気温が12℃以下になる頃から被覆を行うことで、温度下降期の結球の充実が期待できる。
(3) 中耕・除草
・カルチは、作型にもよるが1~2回実施し、除草剤の使用をなるべく控える。
・低地土等で降雨後にクラストが生じた場合は、速やかにカルチ掛けを行う。
・雑草が繁茂していると、害虫が寄りやすくなるとともに風通しが悪くなり、病害も発生しやすくなる。
・また、薬剤もレタスに充分かかりづらくなるので、除草を徹底する。
・結球期以降に外葉が伸びてからほ場に入ると、外葉を傷つけてタコ足球の発生原因となるため、手取り除草は外葉が伸びて畦がふさがる前に行う。

7.主な病害虫と生理障害

(1) 病害
・北海道において注意を要する主な病害は、菌核病、さび病、すそ枯病、軟腐病、灰色かび病、腐敗病、べと病、モザイク病などである。
(2) 害虫
・北海道において注意を要する主な害虫は、アザミウマ類、アシグロハモグリバエ、アブラムシ、ウワバ類、ナモグリバエ、ネキリムシ類、ヨトウガなどである。
(3) 生理障害
・主な生理障害は、芯腐れ症、タケノコ球、タコ足球、チップバーン、チャボ玉、フウセン球、不結球、分球、ホウ素欠乏などである。

8.収穫

(1) 収穫適期
・レタスは収穫期の判定が難しく、また高温期には収穫適期の幅が短くなるので、必ず試し取りを行い適期収穫につとめる。
・過熟になると収穫後の鮮度の低下が早いため、8分結球で収穫する。
(2) 収穫方法
・収穫後の品質低下を防ぐため収穫は朝どりを基本とし、外葉を4枚程度つけて収穫し、出荷時に1~2枚に調製して出荷する。
・収穫に使用する刃物は、切り口の酸化防止のため鉄製のものは避けステンレス製のものを使用し、切断面をしっかり乾かしてから箱詰めする。
・切断した切り口から白色の汁液がにじみ出て時間が経つと酸化して赤褐変するので、切断直後に切り口を上向きにして置き、噴霧器などで切り口を水で洗い流すとよい。
・レタスは、輸送中の振動によって葉の折れやスレなどで損傷しやすいので、箱詰めは容器に中仕切りして、球の重心が下にくるように切り口を下に向けて詰める。
・収穫調製後は、速やかに予冷施設に搬入し、品温の低下に努める。
・収穫終了後の残渣は、できるだけ圃場の外に出す。
・特に病害の発生している株をすき込んでしまうと病原菌の密度が高まり、翌年、病害が出やすくなってしまうので注意が必要である。