パプリカ(促成)の栽培(暖地)

1.はじめに

・果実色が緑色以外のピーマンを総称して、カラーピーマンと呼ぶ(三村、2002)。この中で、果重が130~250g程度の大果系タイプがパプリカである。
・果実の色は概ね7色あり、赤、黄、橙、茶は熟果で、黒や白、紫は未熟果である。熟果は、糖度が8度程度と甘く、ピーマン特有の癖もないのでサラダ等の生食にも向いている。加えて、栄養価や抗酸化能もピーマンより高いのが特徴である(柚木崎ら、2003)。

2.品種の選定

・日本の市場では、Mサイズ(145~175g、5kg箱30個詰め)の需要が高い。
・エンザ社(オランダ)のスペシャル(赤色)、フェアウェイ(黄色)は、Mサイズに揃いやすく、日本での試験事例も多い品種である。

3.育苗

(1) 播種時期
・宮崎農試の深田らの試験結果によると、慣行のピーマン促成栽培よりも早めである7月25日に播種すると、それより10、20日遅れて播種した場合に比べて、収穫期間が長くなるうえ、栽培前半の生育が旺盛で着果数も増加することから、約10%増収するようである。

(2) 播種と育苗
1) 播種
・定植数が3,125~3,703株/10aなので、播種粒数は15%増しの3,600~4,250粒、準備する。
・播種後は、5mmほど覆土したのちに、たっぷりと灌水する。なお、気温の高い時期なので、播種箱は、育苗ベンチより地床に置いた方がよい。
2) 温度管理
・盛夏なので、温度については基本的に成り行きだが、日射が強いので寒冷紗や湿らせた新聞を被覆して、床土が乾燥しないように注意する。
3) 鉢上げ
・播種後8~10日で子葉が展開するので、鉢上げを行う。高温期なので、苗が大きくなると移植後の萎れが生じやすいので、子葉展開後早めに鉢上げをする。
・鉢上げには12㎝以上の黒色ポリポットを使用する。鉢土は軽く粗な感じに詰める。鉢上げ前日までにたっぷり灌水して、鉢土をむらなく湿らせておく。
・鉢上げ時の注意点としては、できるだけ根を切らないようにすることと、根をなるべく伸ばした状態で植え付けることである。
4) 鉢上げから定植まで
・基本は、朝灌水して、夕方表土が少し乾いた状態になる程度に灌水することであるが、鉢床の乾き具合を見て灌水し、くれぐれも萎れさせないようにすることが重要である。
・床土の肥料成分がなくなってきたら、OK-F-1を500倍に薄めて、週1回くらいを目安に施用する。
・生長にあわせて、株と株の葉が重なり合わないように鉢ずらしを行う。育苗後半は、受光条件が悪いとすぐに徒長するので、鉢ずらしは遅れないように注意し、がっちりした苗に仕上げる。
5) 苗の診断
・良い苗の条件は、①葉が大きく横方向に広がっていること、②節間が短めで茎が太くしっかりしていること、③子葉がしっかりとついていること、④病害虫が発生していないこと、⑤ポットの底から見える根が白色で根毛が十分発生していることである。
・1番花の蕾が確認出来たら定植する。

4.ほ場の準備と施肥

(1) 土壌消毒
・特に、国外のパプリカ品種は、国内のグリーンピーマン品種に比べて格段に土壌病害に弱いので、土壌消毒は必須である。
(2) ほ場、施設の準備
・パプリカは、過湿や乾燥に弱いので、暗渠設置や耕盤破砕を行って、ほ場の排水を良好にしておく。
・冬の栽培は、日射量が5%減れば、収量も5%減ると言われている。ハウスのビニールやカーテンはできるだけ新しいものを使用する。また、換気効率も問題となるので、天窓や換気扇といった設備にも注意を払う必要がある。
(3) 栽植密度と畦立て
・栽植密度は、畦幅160cm×株間20cmまたは、畦幅180cm×株間15cmの主枝2本仕立てとする。
・120㎝幅のベッドを作成(通路幅は50cmくらいとる)し、1.7m以上の支柱を立て、誘引ひもを吊り上げるため、畦肩の真上に畦と平行して誘引用のワイヤーを配置する。
・灌水チューブは、株元に1畦2本づつ配置する。
(4) 施肥
・定植1か月以上前に、土壌分析値に基づき、堆肥や土壌改良資材を施用しておく。
・定植の1週間以上前に、スーパーIBS222のような肥効の長い肥料で、10a当たり窒素、リン酸、加里をそれぞれ20~30kg施用する。

5.定植~活着期の管理

(1) 定植
・定植の目安は、根鉢ができて、第1分枝の花蕾が見える頃である。
・植付けは、うねの方向に対して分枝方向が直角になるようにする。深さは鉢土の表面が見えるくらいにし、極端な深植えや浅植えにはしない。
・定植の時間帯は、晴天の日中を避け、曇天や夕方とする。
・夏場の定植では、敷わらをして地温の上昇を防ぐ。
(2) 活着期までの管理
・定植して7~10日で活着させる。
・苗が活着するまでの期間は、遮光資材を使用し、直射日光を遮って萎れないようにする。
定植してから10日くらいまでは毎日、株当たり1㍑くらいを手灌水する。この時期は残暑がきびしく、気温が高い時期であるので、スムーズに活着させることを最優先に、萎れが生じないように水管理に十分注意し、がっちりとした草姿に仕上げるように導く。
・定植後の活着は、生長点を観察して判断する。定植直後はショックのためしばらく生長が止まるので、生長点の緑色の濃さが中位の葉と同じ程度となる。発根がすすんで土壌の養水分を吸い始めると再び生長がさかんとなって、生長点の緑色はやや淡くなるので活着が確認できる。

6.活着後~果実肥大始めの管理

(1) 着果調節
・定植後も夜温の高い状態が続くこの作型では、落花が多くなり、初期着果に失敗することがある。そこで半促成栽培のような3番花までの摘花を行なわず、1~7番花の間に着果した果実のなかから主枝1本当たり2果を残して摘果する方が安全である。落果が多く果実が確保できない場合は、側枝の第1節に着果させてもよい。着果した果実が変形やしり腐れなど下果になっても、必ず2果残して高温期の徒長を抑えるようにする。

7.温度管理

・午前中は28℃を最高にして、午後24℃まで勾配を付けるように下げ、夜間は17℃(黄色果実品種)~19℃(赤色果実品種)以下にならないように加温する。なお、夜温が25℃以上になると、花粉が障害を起こし着果できなくなるので注意する。
・加温と換気設備用のサーモセンサーは、直射日光や熱の放射により不正確になりやすいので、小さなファンを取り付けたボックスの中に入れるのがもっともよい。また、測定する高さによって温度差が大きいので、現在開花している高さに合わせて設置するのがよい。

8.灌水管理

・定植から収穫始めまでは株が小さいので、マルチが敷いてあれば、それほど土が乾くこともなく、灌水量が少なくてすむ。この時期の灌水の目安は、株元やマルチのすそからマルチ内の土を見て表面が乾かない程度でよい。
・収穫開始後は、地中20cmのpF値を目安に行う。かん水開始点をpF1.7とし、12月、1月は5.0㍑/㎡、それ以外の時期は7.5㍑/㎡程度かん水する。

9.追肥管理

・最初に着果させた果実が膨らんだら、追肥をスタートする。液肥(eトミー046)なら窒素成分で10a当たり1kgを目安に1週間に1度の割合で灌水にあわせて施用する。
・追肥管理は、花の咲く位置や花の状態で草勢判断し、常に樹勢の維持を図るようにする。特に12月までは、初期の着果負担の増加と日照時間の短縮に伴い草勢が低下する傾向があるので、場合によっては、複合要素配合の葉面散布なども含めて、常に肥料切れにならないように管理する。

10.誘引方法

・パプリカは主枝節または側枝の下位節に着果させると果実の肥大や品質が優れる。このため限られた施設空間の中に、いかにして主枝の節数を確保するかが多収栽培の鍵になる。
(1) 仮誘引
・定植して活着したのち(定植後10日目ぐらい)に、うね中央の高さ30cmぐらいに張ったバインダー線に、テープナー等を使用して第1分枝下で固定し、株が倒れないようにする。
(2) 主枝が誘引線の上端部に到達するまでの誘引(1月くらいまで)
・主枝2本仕立てで誘引する。主枝が誘引線の上端部に到達するまではできるだけ主枝を立てるように誘引する。特に果実が肥大してくると草勢が低下してくるので、少しでも草勢を維持するために枝を立てた状態にする。もし、樹が強くなり過ぎる場合は、主枝をやや弛ませるように誘引糸で調整する。
(3) 主枝が誘引線の上端部に到達後の誘引(2~5月くらいまで)
・主枝が誘引線の上端部に到達したら、それまで主枝に巻き付けていた誘引糸の結びを解き,うねの方向に主枝を斜めに倒しながら誘引をしていく。
・具体的には、作物荷重の高さに張った誘引ワイヤーに、スライド移動できる専用フック(トップフック)を設置し、そのフックから誘引糸(直径1mmのタコ糸、長さ約2m)をたらし、専用クリップ(くきたっち)2個で主枝と誘引糸を固定する。あとは主枝の伸長に合わせて誘引ワイヤーのトップフックをスライド移動したり、くきたっちをずらしたりして、畦の方向に斜めに誘引する。誘引作業は収穫を終える2か月前まで行なう。
・なお、斜め吊り下げ誘引すると、主枝にバラツキが生じやすいので、主枝の生育に応じて適宜、主枝の配置や誘引角度を変えて草勢を調節する必要がある。

11.整枝・摘葉管理

(1) 側枝の管理
・パプリカの場合、主に主枝節付近に着果させるため、側枝節は着果部位としての役割は低く、葉数を確保する意義の方が大きい。
・茎葉の混み具合を見ながら3節または4節で摘心し、直近の主枝果の収穫を目安に1節に切り返すのが基本である。省力的な方法として、栽培期間を通して1~2節で機械的に摘芯し、直近の主枝果の収穫を目安に1節に切り返す方法もある。
・なお、栽培後半は、下位節から新梢の発生が見られるが、放っておくと徒長して繁茂するので、2節で摘心して1果程度着果させる。ただし、新梢の果実はやや扁平な奇形果になることがあるので、それらは摘除する。
(2) 下葉の整理
・つる下げ誘引仕立てにおける下葉の整理は、着果節位から15節残して、主枝葉および側枝を摘除する。

12.収穫・出荷

・収穫する果実の着色の目安は、時期や品種によって異なるが、90%程度着色したものを採るようにする。冬場なら週2回、夏場は週3回の収穫サイクルで、これが可能である。なお、黄色やオレンジ色の果実については、半分程度の着色でも容易に追熟する。追熟にはポリエチレンの袋に入れて、袋の口を締め切らずに隙間を開けて、常温で保存する。
・収穫は、ハサミよりも、よく研いだ専用のナイフを使った方がよい。ピーマンと違って、パプリカは長いへたをつけたまま店頭に並ぶが、これが長い店持ちの秘訣で、ハサミでの収穫は、へたの切り口が汚くなり、店持ちが短くなりがちである。
・パプリカは出荷前に果実の汚れを拭き取る必要があり、これが意外と労力を要する。

13.病害虫防除

(1) 病害
1) うどんこ病
・定植してから晩秋にかけて初発が見られ、特にこの時期に着果負担などで草勢が低下していると発病しやすい。ある程度病状が進んでしまうと、薬剤散布をしてもなかなか抑えることができず,非常にやっかいな病害である。
・対策は栽培初期の樹づくりをしっかりと行なったうえで、晩秋までは予防的な防除を定期的に行なうことである。
2) 灰色かび病、菌核病
・ハウス内が多湿環境になる11月頃から春雨の時期にかけて発生がみられる。花弁や葉などにも発生するが、問題なのは収穫後の切り口に発生する場合や果実に発生する場合である。収穫時の切り口がいつまでも乾かないと、そこから菌が侵入し茎に黒褐色の病斑を生じて、茎葉が萎ちょうする(菌核病、灰色かび病)。また、果実のヘタ部に罹病花弁が落ちて付着したり、水が溜まったりすると発病し、腐敗して落果する場合がある(灰色かび病)。
・対策は、低温期以降の定期的な防除のほか、日中の換気を怠らないことや、茎葉が混み合わないような整枝管理、ハウス内を清潔に保つことなどが挙げられる。
3) ウイルス病
・ピーマン類で発生が多いのはPMMoV(トウガラシマイルドモットルウイルス)による被害である。発病株を見つけたらできるだけ早く、しかも可能なかぎり根部も含めて圃場外に持ち出して処分する。また,人の手や剪定ハサミを介して感染が広がるので、感染が疑われる株にふれたハサミなどは,第三リン酸ソーダ液などに浸漬消毒する。
(2) 害虫
1) アザミウマ類
・主に開花期から幼果期に加害された傷跡によって品位が落ちる。生長点付近の若い葉が加害されると、葉が萎縮して生育が劣る。
・この作型での対策は、秋季までと、春季以降に徹底して防除を行なうことである。厳寒期に入るまでは、ハウスの換気のために換気部が開いている時間帯が長く、夕を中心にハウス内に侵入してくる。この時期にしっかりと発生を抑えておけば、厳寒期は外気温も低く、ハウスの換気時間も短いので実害のない密度下に維持することができる。その後、3月以降は気温の上昇とともに、再び発生や侵入がふえてくるので定期的に防除していく。なお、加害された商品価値のない果実は早めに摘除する。
2) ダニ類
・ハダニ類やホコリダニ類が発生する。いずれも初発を早期に発見して防除すれば、大きな問題にはならないが、発見が遅れると増殖スピードが速いのでやっかいである。特にチャノホコリダニによって生長点付近が加害されると、心止まりになり、生育が著しく遅れる。チャノホコリダニは秋季に発生が多いので、この時期に予防的な防除しておくとよい。
3) アブラムシ類、コナジラミ類
・秋季までと春先以降に発生がみられる。パプリカで特に問題なのは、排泄物によって果実表面にススが付いて、商品価値がなくなることである。
・初発を早期に確認するなり、発生する時期をみはからって防除を行なう。
4) ヨトウムシ類
・この作型では育苗期から秋季にかけて発生がみられる。この時期に薬剤散布や捕殺によって防除しておけば大きな問題にはならない。防除を怠ると葉が劇的に食害されるケースもある。

14.生理障害対策

(1) 裂皮果
・裂皮はパプリカで最も重大な生理障害である。果皮表面に細かいヒビが生じる場合や果肉部まで大きく割れる場合がある。発生する主なケースは、①ハウス内の湿度が高くて葉からの蒸散が少ない場合、②結露で果実表面が濡れている場合、③強い日射が果実に当たる時期や土壌水分の乾湿によって果実肥大の日変化が大きい場合、などが挙げられる。
・対策は裂皮果のでにくい品種を選定すること、土壌水分が極端な乾湿条件にならないようにこまめな灌水を行なうこと、一度に大量の整枝・摘葉をしないことである。
(2) しり腐れ果
・土壌水分の不足や高温乾燥による水分ストレスによって、果実中のカルシウム含量が低下して生じる。春先以降は、気温の上昇に伴いある程度は発生するが、灌水不足にさえしなければ激発することはない。
(3) 日焼け果
・日射量が増大してくる3月以降に発生がみられる。強い日射によって果肉部の水分が蒸発して生じる。
・対策として、3月以降に40%程度の遮光を行ない、直接日射が果実に当たらないようする。また、上位節の果実周辺の側枝葉を適当に残して日よけにするのも有効である。
(4) ピッティング果
・果肉の一部が斑点状に壊死する症状である。裂皮果と同様に品種間差が大きく、橙色品種に発生しやすい。夕方、急に冷え込む晩秋および早春の頃に発生する傾向がある。夕方にハウス内の気温が急に低下すると、それに伴い葉からの蒸散も減少する。ただし、蒸散量は減少しても、地温が高い時間帯なので、根圧によって引き続き吸水が続く。この状況で吸水された水分は果実に流入し、果肉内の細胞がしだいに膨張して破裂する。
・対策としては、発生しにくい品種を選ぶこと、夕方に急にハウス内の気温が低下しないような温度管理を行なうことである。
(5) ス入り果
・果肉の水分が抜けてスが入った状態になり、果実表面にクレーター状の凹凸が生じる。高温と乾燥によって引き起こされ、5月以降に換気しても日中のハウス内の気温が35℃を超すような時期になると発生し始める。
・対策は、遮光などによってハウス内の気温をできるだけ下げることである。