メロンの栽培

Ⅰ.メロンの概要

1.メロンの導入

(1) 栽培面での特徴
・定植~収穫までが90~100日程度と短く、生育速度が早い。
・栽培面でのポイントは、栄養生長と生殖生長のバランスを取り、ネットの形成に合わせた温度とかん水の管理を行うことである。
(2) 経営面での特徴
・全国的には、作付面積、収穫量とも減少傾向にある野菜である。

2.来歴

・メロンの原産地には諸説あるが、アフリカ西部のニジェール河沿岸地帯に自生していた野生種を起源とする説が最有力である。
・そこからエジプト、中央アジア、旧ソ連の南部などの各地に伝わり、その後、ヨーロッパ地域へ伝播したものが「メロン」となり、中国へ伝播したものから「マクワウリ」が生まれたといわれている。
・栽培は、古代エジプトや古代ギリシャ時代から知られており、11~13世紀にはイタリアやソ連、15~16世紀にはヨ-ロッパで盛んに栽培されていた。
・日本へは、縄文時代晩期にマクワウリとシロウリが伝えられ、古くから利用されていた。
・これらウリ類は江戸時代まで栽培されていたが、現在日本で栽培されているメロンは、明治26年、農学博士であり園芸家でもあった福羽逸人がフランスより温室メロンを導入・試作したのが始まりである。
その後、徐々に栽培が広まり、大正7年頃から市場に出荷されるようになった。
・大正14年には、イギリスのワード農園長によって改良・育成された「アールス・フェボリット」が導入され、この頃から日本におけるマスクメロンの地位は確固たるものとなった。
・ただし、ごく最近までメロンは一般庶民にはとても手が出せない高級果実であった。
・昭和37年に日本のマクワウリの中では最もおいしい「プリンスメロン」が登場し一世を風靡したが、本物のメロンの味が求められ、品種改良の力で栽培し易くなった洋種メロンが次々と市場に現れるようになった。

3.分類と形態的特性

(1) 分類
・ウリ科キュウリ属の一年草である。
(2) 根
・根の伸長における最適温度は34℃くらいで、毛根発生の最低温度は14℃とされている。
・メロンの根は他のウリ科作物より細く浅く分布することから、乾燥や過湿、地温の変動などのストレスに敏感に反応する。
・メロンの根は浅根性で、数本の太根から多数の細根が深さ10~15cmのところに張る。
(3) 花芽分化
・メロンの雌花は側枝の第1節に、雄花は主枝に着生する。
・花芽分化のタイミングは、最も上の展開葉の6~7節上の側枝の第1節の雌花が分化する。

4.生育上の外的条件

(1) 温度
・メロンは高温性の作物で発芽適温は28~30℃、生育適温は22~30℃(最適25~28℃)で、13℃以下では生育は抑制される。
・適地温は系統・品種によって異なるが、最低15~16℃以上は必要である。
(2) 光
・メロンの光飽和点は5.5万ルクス程度である。
・メロンは多日照、低湿度で、温度較差が大きい生育環境が望ましい。
(3) 土壌
・土壌は水はけの良い砂壌土~壌土が適しており、土壌pHは6.0~6.5程度がよい。
・メロンは果菜類の中でも根の酸素要求度が高い作物で、床土や畑土は通気性と排水性がよいものでなければならない。

5.品種

(1) メロンの系統
・メロンには、温室メロン、アールス系メロン、ネット系ハウスメロン、ノーネット系メロンなど多くの系統がある。
(2) 主要品種
・北海道で作られているメロンの主な品種は次のとおりである。
1) ルピアレッド(みかど協和)
・つるぼけしにくく、雌花着生、着果が良く、作り易い普及型の赤肉ネットメロン。
・節間はやや長く強勢でスタミナがあり、果実の肥大が早く安定して多収である。
・ネットの発現は密で安定しており、果肉は濃いオレンジ色で、 糖度は15度内外で食味が良い。
・開花後55日以内で適熟となり、比較的果肉がしっかりとしているため日持ちする。
・うどんこ病とつる割れ病に抵抗性で、通常接ぎ木の必要はない。
・夏ボケ果の発生は特に少ない。
2) 夕張キング(JA夕張市)
・北海道の夕張市で、雄「スパイシー・カンタロープ」×雌「アールス・フェボリット」の交配により昭和36年(1961年)に生まれたメロンである。
3) レッド113U(大学農園)
・レッド113より早まき可能で、肥大性も良いので7月中旬頃からの収穫に向く。
・葉は大きくつる勢は並で、着果肥大は良い。
4) レッド113(大学農園)
・抑制栽培に好適の品種で、交配着果が6月中旬からの栽培に向く。
・肥大性も良好で扱いやすく、ネット乱れや変形果は出にくく、収穫期における果実の熟度の判定は容易である。
・果実は1.5~2.5kgの正円型、果皮肌色は濃い緑でネットは細めで密に発現、商品性は良好。
・果肉は厚く色が濃いサーモン色で、種子室が小さく可食部が多く、果肉の日持ち性は安定しており食味は良好である。

6.作型

・北海道での主な作型は次のとおりである。
(1) 加温半促成
・3月上旬~3月中旬は種、4月上旬~4月中旬定植、7月上旬~7月中旬収穫
(2) 無加温半促成
・3月中旬~5月上旬は種、4月中旬~5月上旬定植、7月中旬~7月下旬収穫
(3) トンネル早熟
・4月中旬~4月下旬は種、5月中旬~5月下旬定植、8月上旬~8月中旬収穫
(4) ハウス抑制
・5月下旬~6月下旬は種、6月下旬~7月中旬定植、9月下旬~10月下旬収穫

Ⅱ.メロンの栽培技術

1.育苗

(1) 種まき
・は種前日、35~40℃のぬるま湯に半日浸漬する。
・夜、ぬれタオルに包み、電気毛布かコタツで保温し、朝種子の一端が軽く開く程度で播種すると出芽が揃う。
(2) 発芽
1) 温度管理
・地温は30℃が適温で、42℃以上では高温障害が発生し、16℃以下では出芽遅延や不揃いとなる。
・夜間に出芽が始まると胚軸の長い苗となりやすいので、その場合は、被覆を取ったり、サーモスタットの設定温度を下げて出芽を遅らせる。
・夜が明けたら30℃くらいに温度を上げ、出芽を促す。
(3) 移植までの管理
・発芽後は、茎が伸びすぎないように地温20℃に下げる。
・気温は、日中28~30℃、夜間15℃の変温管理とする。
・かん水量が多すぎると、茎が伸びすぎてひ弱な苗になるので、夕方には表面が乾く程度とする。
(4) 移植(鉢上げ)
・鉢上げ予定の3~5日前に床土に十分かん水し、その上にマルチをして電熱を入れ、地温を30℃くらいに上げておく。
・鉢上げは、は種後7日ころ(子葉展開時)に行う。
・鉢上げ後、寒冷しゃなどで被覆し、軽く遮光して苗のしおれを防止する。
(5) 定植までの管理
・苗に直接風を当てるとしおれたり生育が遅れたりするので、ハウスは肩換気とし、裾をあける場合はトンネルを風よけにする。
(6) 定植前の状況
・育苗日数は自根苗で30日、接ぎ木苗は30~35日とし、老化苗は避ける。
・定植前に本葉3枚を残して摘芯する。

2.畑の準備

(1) pHの矯正と土壌改良
・土壌pHが6.0~6.5になるように、あらかじめ矯正しておく。
(2) 堆肥の施用
・有機物の施用は、土壌水分の安定とカリウムなどの陽イオンの供給に主眼を置き、堆肥は十分完熟させて養分供給能を低下させたものを10a当たり1~2t施用する。

3.施肥

(1) 肥料の吸収特性
1) 総論
・メロンはカリウム、カルシウム、マグネシウムなど陽イオンの要求量が多い。
2) 窒素
・ネット肥大期に吸収された窒素は、細胞の肥大に寄与することから、この時期に窒素の供給が不足するとカルスの発達が抑制され、ネットの盛り上がりが欠けることになる。
・果実成熟期(ネット形成完了後)に吸収される窒素は、その同化に光合成産物を消費するため、過剰な窒素吸収は果実糖度の上昇に悪影響を与える。
・収穫前2週間程度の期間は、窒素の供給を抑えるため水切りなどの操作を行う。
・メロンの場合、交配から果実肥大期にかけて窒素吸収量が最も多くなる。
・地力窒素の発現はメロンの生育ステージと合致する必要があり、高すぎる地力窒素の発現は品質低下を招くことがある。
・メロンは好硝酸性作物で、堆肥の多量連用や土壌消毒によって硝酸化成作用が阻害されるとアンモニア態窒素の供給が多くなり、葉の硬化や湾曲・萎凋、根の発達不良や木質化などのアンモニア障害が発生しやすくなる。
(2) 施肥設計
1) 考え方
・ノーネット系メロンはネット系メロンに比べると養分要求量が少なく、多肥栽培すると果形のみだれ、果皮の色抜け、裂果などが発生しやすいので、施肥量、堆肥の施用量とも少なくする。
2) 施肥設計(例)

 区分 肥料名 施用量
(kg/10a)
窒素 リン酸 カリ 苦土 備考
基肥 S15号E 120 6.0 6.0 6.0 2.4 ・有機態窒素の比率を高める
S009E 60 6.0 12.0 5.4 1.8
合計 180 12.0 18.0 11.4 4.2

 

4.定植

(1) 畝立て、マルチ
・定植予定の3~5日前に十分かん水し、その後地温(20~25℃)を確保するようにつとめる。
・メロンの適地温は20~28℃で、定植時の地温管理がその後の生育を大きく左右する。
・霜害予防と保温のため二重トンネルを設置する。
・場合によってはさらに小トンネルを設け、ベタガケ資材などで被覆する。
・マルチングの際、かん水チューブを設置する。
(2) 栽植密度
・栽植密度は株間70cm、10アール400株程度とする。
(3) 定植の方法
・定植は、晴天日の午前中に行う。

5.管理作業

(1) 温度管理
・着果から縦ネット形成始めまでの時期に、低温に遭うと小玉傾向になるので、特に温度確保に注意する。
(2) かん水管理
・活着を促進するために、定植直後の3~4日間は手かん水を行い、十分な土壌水分を確保する。
・定植後、主茎の第4~5葉が第2~3葉より大きくなったら、活着が完了したとみる。
・活着後は、かん水を控えて土壌水分を少なめとし、夜間温度を15~18℃に下げて樹勢を安定させる。
・着果を確認したら、縦ネット形成始めまで十分にかん水する。
(3) 結果枝の選定
1) 結果枝の選定時期
・主茎の12~15節の側枝が3~4cmに伸長した頃、結果枝の選定を行う。
2) 結果枝の選定基準
・側枝第1節についた葉の先より、雌花の先端の方が先に出ている側枝を選ぶ。
3) 結果枝の管理
・結果枝の選定後は、1度多めにかん水し2~3日夜温を高めにして、結果枝の伸長を促進する。
・ただし、時期が早すぎたり、かん水量や高夜温の継続時間が過度になると、結果枝が徒長し、雌花の子房が小さくなるので注意する。
(4) 交配
・交配後の幼果の肥大やネット発現時期の肥培管理を均一に行うため、交配作業は2~3日間の短期間で終了させる。
・そのためには、交配日を揃える作業管理が重要となる。
1) 雌花の形状
・開花前日の雌花は、子房が肥大し、縦長で美しいものがよい。
2) 交配の方法
・ミツバチによる虫媒受粉または人工授粉を行う。
3) 人工授粉の時間
・メロンの開花・開葯適温は23~25℃で、午前中に交配を終えれば着果に影響はないとされている。
4) 人工授粉の方法
・交配する結果枝節位から2~4節上の雄花で受粉すると、良好な結果が得られる。
5) かん水
・交配直後にはたっぷりかん水し、受粉後の細胞肥大を促進させる。
6) 交配時の草姿
・交配する側枝(結果枝)の節位付近の葉が最も大きい状態が良い。
・そうでない場合は、交配を少し遅らせ、着果節位をやや上位節にする。
7) 摘芯とわき芽の除去
・栄養生長から生殖生長への急激な転換を避けるため、摘芯は着果を確認してから行う。
・摘芯後の結果枝以外の側枝、わき芽などの除去は、2~3回に分けて行う。
(5) 果実肥大期の管理(硬化期:交配後10日から13~15日くらいの間)
1) 摘果
・摘果は、受粉後7~10日目の果実が鶏卵大に発育した頃に行う。
・摘果時期は草勢によって、強い場合は遅らせ、弱い場合は早めるなど調整する。
・摘果は、幼果の形状や結果枝の太さを目安に行う。
2) かん水と夜温管理
・果実肥大期には、上位葉の生育と果実の肥大が同時に起こるため、最も旺盛な養分吸収が行われる。
・この期間に窒素を効かせるため、土壌水分を比較的高く管理し、養分の移行を促進させる。
・幼果の状態により、かん水と夜温管理を調整する。
・幼果が硬化しすぎの場合は、夜間の温度を高めに保ち、温室内は多湿条件とする。
・幼果がゆるみすぎの場合は、夜間の温度を低めに保ち、温室内は乾燥条件とする。
・このような管理を2~3日続け、様子を見て通常管理に戻す。
3) 縦ネットの形成
・最初の玉の硬化期から縦ネット発生期までは、少なめのかん水とし、草勢を強めにし夜間温度を低下(16~18℃)させて玉の硬化を促進させる。
4) 横ネットの形成
・夜間温度は縦ネット発生期より2~3℃高めにし、かん水を多めにする。
・午前中の換気はやや遅くし、施設内の空中湿度を高めて、葉面からの蒸散を抑制するとネットの張りが良くなる。
5) むだ芽の利用
・ネット形成期に、主茎の摘芯節位や地際部節位付近から、不定芽の「むだ芽」が出ている状態がよく、摘除しないで収穫まで残して利用すると大果となる。
(6) 整枝
・整技は切り口が速やかに乾燥するよう、晴天日に行う。
・生育の良い子づる2本を伸ばす。
・5節までの孫づるは取り除き、6~7節の孫づるは葉1枚をつけて摘芯する。
・着果節位の孫づるは1節目に雌花がつくので、葉を2枚残して摘芯する。
・孫づるが細すぎる場合は、葉を3枚残す。
・着果節位以降の孫づるは1~2葉残して摘芯し、混み合わないように整理する。
・着果予定節位のつるが細い場合は着果しないことがあるので、着果しない場合はさらに高位の節位に着果させる。
(7) 着果と摘果
・メロンは着果節位と果実肥大に相関があり、下位節に着果させると小果実になるので、樹勢の強い品種で8節中心に、キングメルティ系では10節を中心につける。
・着果節位はできれば連続着果が望ましいが、やや長玉で形が良く花落ちが小さく大きさの揃ったものを優先に1株4個、樹勢の強い品種では5~6個残す。
(8) 糖度上昇期
・収穫15日前頃から、果実内の糖度が急激に上昇する。
・この時期は、かん水量を次第に減らしていくが、最も株に障害が出やすい時期なのでストレスを掛けないように十分注意する。

6.主な病害虫と生理障害

(1) 病害
・北海道において注意を要する主な病害は、うどんこ病、えそ斑点病、黒星病、菌核病、炭そ病、つる枯れ病、つる割れ病、軟腐病、灰色かび病、半身萎凋病、斑点細菌病、べと病、モザイク病などである。
(2) 害虫
・北海道において注意を要する主な害虫は、アブラムシ類、アマヒトリ、オオゾウムシ、オオタバコガ、コナダニ類、ハダニ類、ハモグリバエ類、ワタヘリクロノメイガなどである。
(3) 生理障害
・主な生理障害は、汚斑点、肩こけ果、葉枯れ黄化症、発酵果、みくずれ果、裂果などである。

7.収穫

(1) 収穫適期
・着果節位の枯葉が進む、果梗がロウ色に変色する、離層が発現する、尻部に弾力性が認められる、ネットの間に2次ネットが入る、などの徴候が現れたら、試し切りをして  糖度を測定し、収穫を開始する。