エダマメの栽培

Ⅰ.エダマメの概要

1.エダマメの導入

(1) 栽培面での特徴
・高温性の作物で、開花時期の天候が着莢に大きな影響を与える。
・栽培面でのポイントは、初期生育を促進し根粒菌を最大限に活用することである。
(2) 経営面での特徴
・単価的に安いこと、鮮度技術や加工技術の向上により冷凍ものの輸入エダマメが増加していることから、国内のエダマメ生産量は年々僅かずつ減少している。
・国内のエダマメ産地においては産地間競争が厳しく、市場でのブランドの違いによる単価差が大きな品目になっている。
・ブランド志向の強い野菜で食味、鮮度の良いものが求められることから、市場の評価を得るためには品種の選定~出荷流通までのトータルの取り組みが必要である。

2.来歴

・エダマメ(大豆)の原産地は中国の東北部と考えられており、およそ5000年前には栽培され始めていたとされている。
・日本へは縄文時代末期から弥生時代にかけて、稲作とともに大陸から渡来したものとみられている。
・『古事記』や『日本書紀』に神話の中の穀物として登場し、煮豆、煎り豆として食べられていたようである。
・奈良時代に入って、醤(味噌、醤油の原形)などの加工品として利用されるようになり、平安時代の文献『延喜式』(927年)には、大豆と醤が稲の代わりの租税として貢納されたという記録がある。
・鎌倉時代以降、全国的に広く栽培されるようになった。
・未熟な大豆をエダマメとして食べ始めたのがいつ頃なのかは不明で、最も古い記録としては、『延喜式』に「生大豆」という記録があるが、今のようなエダマメとはっきり分かるのは、江戸時代の『和漢三才図会』(1712年)に記載されている例だとされている。

3.分類と形態的特性

(1) 分類
・マメ科ダイズ属の1年草である。
(2) 根
・エダマメの根は主根と側根から成り、主根は直根である。
・主根は条件がよいと1.5mくらい伸び、側根は水平方向に35cm程度伸びる。
・通常、主根の基部10~15cmから出た2次根が根の大部分を占め、深さ60cmくらいまで伸びる。
・開花期ころには根系は地下25cmまで密に分布し、開花後2~3次根の伸長により根系は深くなり、密な部分が30cmくらいまでなる。
・土寄せすると子葉上部の茎から不定根が発生し、場合によっては全根量の3分の1に達することもある。
(3) 根粒
・発芽後、本葉の1枚展開始めころ根に根粒が着生する。
・根粒菌は播種後20~30日頃から空中窒素の固定を始め、根粒が崩壊するまで続く。
・エダマメ作付けの前歴がないほ場にエダマメを作付けするときは、根粒菌を接種する必要がある。
(4) 茎
・エダマメの茎は、主茎と分枝に分けられる。
・主茎の本葉5枚目が伸長する頃、本葉1枚目の葉腋から分枝の葉が現れ、その後同じ規則性でn葉と(n-4)葉節の分枝が同時に発生する。
・伸長期~開花期にかけて日照が不足すると主茎が徒長する。
(5) 葉
・エダマメは子葉が地上に現れ、それと直角に初生葉が対生する。
・主茎の中部節に着く本葉の中央の小葉の長さが幅の2.2倍以上のものを長葉、1.8倍以下のものを円葉と区別している。
・出葉速度は本葉5枚目頃までは5~6日の周期で、その後は約3日の周期で出葉する。
(6) 花
・雌ずいは1本でその基部に子房があり、1~5個の胚珠を内蔵している。
・大部分の花は午前中(6時~10時)に咲く。
・落花などは開花期後期に咲く花で特に多くなる。
(7) 莢と子実
・開花後に着莢するのは総開花数のおよそ30%である。
・莢は開花後20日頃に最大に達する。
・子実は莢の伸長が止まった頃から急激に肥大を開始する。

4.生育上の外的条件

(1) 温度
・発芽適温は25~30℃である。
・発芽最低温度は6℃であるが、15℃以下の低温下では発芽までの日数が長くなる。
・このため、露地栽培では平均地温が15℃以上になった頃からが播種適期となる。
・生育適温は25℃前後でやや温暖な気象を好む。
・10℃以下では生育が停滞し、開花時に15℃以下の低温にあうと着莢が悪くなる。
・昼夜の温度格差は大きい方が適し、昼夜を通じて高温であると茎葉の徒長や若莢率の低下が起こる。
・地温は18~23℃が適温とされており、15℃以下では生育が劣り、13℃以下ではきわめて不良となる。
・地温25℃以上では茎が軟弱・徒長し、株の老化が早く、生育期間が短くなる。
・開花期間中の温度は日中30℃、夜間20℃必要で、10℃以下、35℃以上になると花粉の稔性がほとんどなくなり、落花、落莢、不稔莢、くず莢が多発し、特に開花初期の7~10日間の気温が重要である。
(2) 水分
・エダマメは他のマメ科作物と同様、多量の水分を必要とし、特に開花始めからの吸水が多い。
・土壌水分が不足すると生育初期では茎長や総節数が抑えられ、花芽分化期~開花期では落花が多く結実率が低下する。
・過湿の影響は乾燥より大きく、特に初生葉の展開直後と花芽分化期で著しい影響を受ける。
(3) 光
・エダマメ(ダイズ)の光飽和点は2万~2.5万ルクス程度である。
・生育には十分な日照が必要で、日照が不足すると分枝節数が減少し、莢が付かない無効分枝が多くなって減収する。
・早生種(夏ダイズ型品種)は日長の影響を受けにくく、中生種(中間型品種)は若干影響を受ける。
(4) 土壌
・最適pHは6.0~6.5であるが酸性にやや強く、pH5~7の範囲では生育や収量に大きな差が出ないことから、土壌適応性の幅は広いといえる。

5.品種

・北海道で作られているエダマメの主な品種は次のとおりである。
(1) サッポロミドリ(雪印)
・白毛の極早生品種。
・莢は濃緑、大莢で甘味が強く食味に優れる。
・葉は濃緑色で茎が太く、草丈がやや低く、分枝は少ない。
・早生種としては草勢がやや強く、多肥栽培では過繁茂になりやすい。
・低温下ではやや着莢が不安定になることから、ハウス、トンネル等では十分な温度確保が重要となる。
(2) 莢音(雪印)
・開花・収穫ともにサッポロミドリ並の白毛の極早生品種。
・濃緑色の大莢で秀品率が高い。
・直播栽培での枝付出荷が可能で、莢もぎ出荷にも適している。
・小葉で草勢がおとなしくコンパクトにまとまる。
・移植すると草勢がさらに弱くなりやすいので、定植が遅れないようにする。
・過繁茂の心配がないのでやや草勢を強めに作った方がよい。
・莢色が極濃緑色で退色黄化しにくく、過熟収穫になりやすいので適期収穫を厳守する。
(3) サヤムスメ(雪印)
・白毛の中早生種。
・さやは極濃緑色の極大莢で外観に優れ、枝付き産地、さやもぎ産地ともに幅広く利用されている。
・葉はやや小さく極濃緑で、草姿は比較的コンパ クトにまとまる。
・退色が遅いので収穫遅れにならないよう注意する。
・着莢を安定させ収量を確保するためやや多肥栽培として、草勢が弱まらないよう注意する。
(4) 大袖の舞(十勝農協連)
・成熟期は「音更大袖」と同じ中生。
・へそ色が黄の青大豆で、粒大は「音更大袖」より劣るが、「早生緑」より優る。
・耐冷性は「音更大袖」より劣るが、収量性は優れている。
・主茎長は「音更大袖」よりやや短かく、耐倒伏性に優れる。
・収穫期が遅れると種皮色が淡くなるので、成熟後は速やかに収穫することが大切。
・病害虫抵抗性ではセンチュウ抵抗性は「強」、茎疫病も一部レース(レースⅠ群)に対して抵抗性であるが、わい化病に対して抵抗性は「弱」である。
(5) ユキムスメ(雪印)
・白毛の食味良好な中早生品種。
・主にさやもぎ産地を中心に古くから使われ、サッポロミドリ同様根強い人気がある。
・比較的草勢が旺盛で着莢も安定して多く、中早生種の中では多収である。
・さやはやや濃緑でよく膨らみ、食味についても市場評価は高い。
・草勢が強くなり着莢数が多くなりすぎると、条件によっては莢割れの発生が多くなるので、サヤムスメとは対照的にやや草勢を抑えた肥培管理が必要である。
・莢の退色がやや早いので、適期収穫を心がける。

6.作型

・北海道での主な作型は次のとおりである。
(1) トンネル早熟
・4月中旬は種、7月下旬~8月上旬収穫
(2) 露地
・5月中旬~6月上旬は種、8月中旬~9月中旬収穫

Ⅱ.エダマメの栽培技術

1 畑の準備

(1) 適土壌と基盤の整備
・土壌適応性の幅は、比較的広い。
・エダマメの生育や収量は、ほ場の排水性により大きく影響される。
・排水条件を改善するために、ほ場の周囲に明渠(排水路)を掘ったり、暗渠を施工したり、高畦とする。
・また、堆肥の施用や深耕によって土壌の保水性、透水性、通気性を改善し、積極的な土づくりを行う。
(2) pHの矯正と土壌改良
・酸性に比較的強い作物であるが、根粒菌の有効利用を図るためpH6.0~6.5を目標に矯正を行う。
(3) 畦立て、マルチ
・極早生品種を利用して低温期から播種する場合、播種から発芽、初期生育の期間が長くかかり特にクラストの影響を受けやすいのでマルチを敷設し、地温の上昇と土壌水分の安定化を図る。

2.施肥

(1) 肥料の吸収特性
1) 総論
・各要素の吸収量は窒素が最も多く、石灰、カリがそれに次ぎ、リン酸、マグネシウムは少ない。
・各要素の吸収は開花前後から増大し、莢伸長~子実肥大期に最大となる。
2) 窒素
・早生種ほど窒素肥料の効果が高いことから、基肥量は早生種>中生種>晩生種の順に多い。
・根粒菌が固定した空中窒素を利用し始めるのは発芽後4週目ころからで、子葉内貯蔵窒素は2週目(第1本葉展開期)には切れてくることから、基肥窒素が必要となる。
・エダマメは実とり栽培に比べ栽植密度が高く、低温期に栽培することも多いことから、やや多肥とする。
3) リン酸
・開花期~子実肥大期に吸収されるリン酸は、子実生産に大きく影響する。
4) カリ
・エダマメはカリの吸肥力が弱く、カリ欠乏は生育に最も大きな影響が表れる。
5) その他の要素
・石灰の吸収量は多く、ほとんどが開花始め以前に吸収される。
(2) 施肥設計(例)

 区分 肥料名 施用量
(kg/10a)
窒素 リン酸  カリ 苦土 備考
基肥 S353 80 2.4 20.0 10.4 4.0 ・根粒菌の活用に配慮する
合計 80 2.4 20.0 10.4 4.0

3.播種

(1) 時期
・エダマメは寒さに弱いので、晩霜は播種期を決める重要な要素となる。
・直播きは地温がおおむね平均15℃が確保できる時期から行う。
(2) 播種方法
・1穴2粒播きとし、覆土は2cm程度が適当である。
・早出しや欠株を少なくするため、移植する方法もある。
(3) 栽植密度
・畝幅60cm、株間20cm(10a当たり8,300株)程度とする。

4.管理作業

(1) かん水
・開花期の水分不足は着英数を減少させる原因となるので、乾燥時にはかん水が必要になる。
・高温乾燥が続く時期に開花を迎えるような場合には、畝間かん水等が有効である。
(2) 中耕・培土
・中耕・培土は酸素の供給等による根の活性化の維持、倒伏の防止、雑草対策のために2回程度実施する。
・時期の目安として1回目は本葉2~3枚の頃、2回目は本葉5~7枚の頃に行う。
・降雨等でクラストが発生した場合は、時期に関係なく速やかに中耕を行う。
・開花時期以降の中耕・培土は根をいため、着莢率低下の原因となるので厳禁である。
(3) 追肥
・エダマメは生育期間が比較的短いため、基本的には基肥主体の施肥を行う。
・ただし、開花期から子実肥大期に肥切れすると子実の肥大不良、莢色の低下などが発生するので、開花直前の生育状況や葉色などを見極めて、不足する場合は速効性肥料を10a当たり窒素成分で2~3kg程度施用する。
・中晩生品種は早生種に比べて蔓化しやすいので、液肥の葉面散布で対応する。

5.主な病害虫

(1) 病害
・北海道において注意を要する病害は、菌核病、茎疫病、黒根病、黒根腐病、紫斑病、斑点病、べと病、苗立枯病、モザイク病(ダイズモザイクウィルス)、わい化病などである。
(2) 害虫
・北海道において注意を要する害虫は、アブラムシ類、カメムシ類、キタバコガ、ダイズクキタマバエ、ダイズシストセンチュウ、タネバエ、ハスモンヨトウ、ヒメコガネ、マメシンクイガなどである。

6.収穫

(1) 収穫適期
・収穫の遅れは莢の黄化、品質劣化を引き起こして食味が低下するので、収穫適期を逃さないように十分注意する。
・特に、高温の盛夏期に収穫を迎える作型では成熟の進み方が早く、収穫適期が短くなるので、計画的に収穫作業を進める必要がある。
(2) 収穫方法
・エダマメは糖やアミノ酸が収穫後速やかに呼吸基質として使われたり、他の貯蔵物質へと変化し食味は急激に低下していく。
・品温の低い早朝に収穫し、できるだけ早く予冷庫に搬入し鮮度保持に努める。