ハゼノキの栽培(暖地)

1.ハゼノキの概要

(1) 作目的特徴
・ハゼはウルシ科に属する6~9mの落葉高木で中国、台湾などに分布する。
・奇数羽状の複葉には通常9~15枚の小葉が着生し、5~6月に円錐花序で黄緑色の小花を開き、雌雄異株である。
・緑色の果実は次第に成熟し、黄白色となり、11月頃から採取される。
・果実は楕円形で、果実の核と表皮の間にある中果皮に蝋分を含んでいる。
・果実の蝋分は16~40%で、中果皮では50~55%である。
・果実1kgから約0.2kgの生蝋が得られるが、隔年結果で豊凶性があるとされている。
・樹液は白色を帯び、時間が経過するに従い暗褐色となり、皮膚につくとかぶれることがある。
(2) 経営的特徴
・ハゼノキの栽培は、剪定や施肥以外にそれほど手間がかからず、10a当たり20万円程度の売り上げが得られることから、副収入を得るのに向いた作物といえる。
・また、比較的疎植することから、間作を有効に利用すれば農家の増収につながる可能性がある。
・防除や選別等の手間があまりかからないため、生産しやすい作目である。
・ハゼはわが国だけの特産品であり、木蝋のほか高級化粧品やOA機器の潤滑油、医薬品のカプセルなどにも利用されており、需要が旺盛である。

2.栽培の適地

・ハゼの適地は関東以西の温暖な地方で、ミカンの栽培範囲と似ており、冬季の寒さの厳しいところは不適である。
・陽樹であるため日陰を避けて、日当たりの良い南面に植栽する。

3.品種の特徴と選定

(1) 品種の概要
・ハゼノキの優良個体の選抜は江戸時代半ばより始まったとされ、各地に存在する品種の数は100に及ぶともいわれている。
・この中で、主要なのは、昭和福(有明2号)、伊吉(中原2号)、葡萄(八女1号)、王(丹原3号)、上(高田1号)、利太治(利太治)、松山(甘木4号)の7品種である。
・RAPDマーカーによる品種識別の結果、ハゼノキの品種間の遺伝距離は非常に大きく、品種間での遺伝変異がかなり大きいことが明らかとなった。
・主要品種の原産地は、伊吉と松山が福岡県、昭和福は長崎県、王と利太治は愛媛県、葡萄は和歌山県である。なお、上は福岡県高田町のみ現存する品種であるが、その原産地は四国地方である可能性が高い。
(2) 品種の特性
一般に次のように言われている。
・昭和福は樹高が高く、含蝋分は多いが豊凶性が著しい。
・葡萄は豊凶性が少ない。
・伊吉は含蝋分が少なく豊凶性がやや著しいという説と実の粒が大きく豊凶性が少なく、枝が良くしなり実が採取しやすいという説がある。
・松山は実は果肉が多く蝋分も多いが隔年結果の傾向がある。
(3) 品種の選定
・表1は、接木苗を植栽した場合の活着率と含蝋率を掛けたものを高い順に並べたものである。

・表2は、2001年〜2006年の5年間の調査結果で、果実収量が大きく、年次変動が小さく、含蝋率が高いことを指標として順位付けしたものである。

4.収量性および単価

(1) 収量性
・ハゼの実は、接木苗で2~3年目から、実生苗で6~7年目位から結実し始める。
・樹齢別の結実量は、品種、立地、保育管理、豊凶年などによって異なるが、接木苗の場合表3に示す通りである。

・ハゼは寿命が長く、100年位の老木でもかなり結実している。
・30年生の成木林で一本当たり50kg掛ける20本として1トンの収量が可能である。
(2) 単価
・ハゼの実は品種により多少価格差はあるものの、工場渡しで1kg当たり210~220円で取引されている(1989年)。
・ハゼの実は1kg当たり250~300円で買い取られ、製品(白蝋)は1kg当たり約3,000円で取引されている(1998年)。
・2003年~2004年の塩田町はぜ紅葉会の取り引きでは、1kg当たり150~180円であった。

5.栽培技術

(1) 接木とその管理
・さし木の活着率は極めて低く、一方接木(腹接、切接)で約80%の活着率を見た。
・ハゼは実生苗も可能であるが、優良系統の苗を作るためには接木による苗木作りが有利である。
・台木はヤマハゼを山取りするか、実生苗の二年生を使い、接穂は5~10年生の優良な母樹から接木の一週間前に、20cm程度に取り貯蔵する。
・接木の適期は、3月下旬~4月中旬で、台木を地上15~20cmの所で切り、枯下りをみこして切口より6cm位下方に接ぐ。
・7~8cmの穂を切り返しをつけ、台木3cmを切り下げ穂を挿し込み、密着させてビニールテープでしばりつける。
・1989年現在、ハゼの苗木は、長崎県の島原で委託生産されており、昭和福ハゼが1本600円前後の高値で取引されている。
(2) 適土壌
・土壌は腐植土の多い肥沃地や砂質壌土がよく、乾燥しやすい砂壌土、過湿にたりやすい粘質土は不適である。
・陽樹であるため日陰を避けて、日当たりの良い南面に植栽する。
(3) 施肥の方法
・10a当たり施肥量は、窒素10kg程度とする。
(4) 植栽方法
・ハゼの植付けは3月中~下旬が適期である。
・ハゼは浅根性で横に広がるため、やや深植えがよい。
・10a当たり20本植栽が普通で、この本数だと成木になっても適当な間隔である。
・昭和福ハゼの接木苗を10a当たり30本栽植したところ、3生長期を経過した時点で樹高2.5~3.0m、根元径約6cmに達し、ほとんどの植栽木に結実が見られた。
・佐賀県塩田町はぜ紅葉会では、伊吉ハゼを10a当たり30~40本植栽している。
・植栽初年目の梅雨期に過湿状態が続くと、根腐れにより枯死することがある。
(5) 主な病害虫と障害
・1~2月頃になると鳥害を受けやすいので注意が必要である。
・とうそう病は含蝋率を低下させる原因となる。

6.収穫

(1) 収穫適期
・ハゼの実は11月初旬にはほぼ完熟するが、採取は11月~2月頃にかけて行われる。
(2) 収穫方法
・ハゼ実はほとんどが「立木売り」で、採取は各地の採取人が行っている(1989年)。
・採取は長い竹ばしごをかけ、枝をたぐり寄せて手でもぎ取る。
・1人1日当たりの採取量は50~100kg程度である。
・ハゼの木の老木化と採取人の高齢化が進み、ハゼの実の採取率は60~70%となっており、完全採取ができていないのが実情である。
(3) 収穫物の保管
・収穫物の保管は容易で、雨よけがあればよいとされている。4年以上の貯蔵も可能との説もある。