バナナの栽培(暖地)

Ⅰ.導入に当たっての基礎データ

1.全体の概要

・苗を植付後、15か月程度経過してから収穫が可能となる。
・収量は、植付後2年目、3年目が最も高く、5年目には半減してしまうとされている。
・バナナは、土壌条件、気象条件が適切であれば、放任栽培でも果実が成る強い作物であるが、営利栽培で収量・品質を求める場合、手間のかかる作物である。
・バナナは、平均気温で最低21℃、月間降水量が100mm以上必要なことから、本州(例えば鹿児島)で栽培する場合、ハウスで11~4月に暖房機で保温し、あわせてかん水する必要がある。

2.反収および単価

・収量は、地力や肥培管理によって大きく異なるが、北蕉種及び仙人種の場合、10a当たり収量は1,500kg程度と思われる。
・トカラの島バナナビジネス(三尺バナナ)では、次のように収益性を見込んでいる。
①生産収量 2,500kg/10a、出荷率75%
②出荷量  青果用:1,875kg/10a、加工向:625kg/10a
③売上高
青果用:1,875kg/10a×350円/kg=656,000円/10a
加工向:625kg/10a×300円/kg=187,000円
苗販売:250本/10a×1000円/本=250,000円
合 計:656,000円+187,000円+250,000円=1,093,000円/10a

3.労働時間

・肥培管理によって大きく異なることから、10a当たり労働時間は不明であるが、1970年代の台湾高雄地区のデータでは300時間程度との記述がある。

4.必要な苗木の量と価格

・栽植密度2.5m×3mで、10a当たりおよそ133本程度植え付ける。
・苗の価格は、1本1,000円程度のようである。

Ⅱ.栽培技術

1.適地

・土壌は、土層が60cm以上、地下水位が1m以上の砂壌土がよく、pHは5.5~6.5が良い。
・かなりの高温・多湿を好み、台風に対する抵抗性が極端に弱いことから、鹿児島では露地栽培は現実的でなく、ハウス栽培とするべきである。

2.種苗と繁殖

(1) 吸芽苗
・繁殖は主として吸芽(仔苗)でなされるが、吸芽は筍状の根本の太い、長さ60~150cm程度の充実した苗で、葉は細くわずかに開張している程度のものが良い。
・豊産性、強健の2年生(または3年生)の園から採苗する。
・11~12月頃出た吸芽で冬を越したものが良い。
(2) 塊茎苗
・直径15cm以上の吸芽を地下15cmから掘り取り、地上部を切り捨てて発芽させ5~6か月成長させた苗。活着率が高く、生育は揃うが1年目の収量がやや低い。
・5~6か月経過した新苗の茎(仮茎)を切って、塊茎だけを深く植える方法もある。
(3) 苗の早期繁殖法
・植えた苗が半年以上経過した時に、幹を地上30cmくらいの所で切断すると、しばらくするうちにその周りから5~20茎の吸芽が出てくる。
・バナナの球茎は、ジャガイモに似ていて、その周りから5~6個以上の芽が出るので、それらを1芽ずつ芋のまま丁寧に切り分けて殖やすこともできる。
・これらの方法で得られた苗は、優良な種苗とは言い難い。

3.植え付け

(1) 植え付け時期
・バナナの活着後の生育は、気温に大きく影響を受けることから、3~10月が植え付け時期の幅と考えられるが、できれば気温の上がり目に向かって新植するのが良く、作物的には4~6月頃が最も適していると思われる。
・吸芽の出地後約10か月で花芽分化し、約2か月で出穂開花し、その3か月後には収穫期に達する。吸芽を新植して栽培する場合には、苗の傷み期間0.5か月を加算する。この理屈からすると、例えば5月に収穫したい場合、2年目以降の株であればその15か月前の苗、つまり2月に出地した苗を育てればよく、新植の場合は、それより0.5か月前(1月中旬に出た苗)を長さ60~90cmになってから切り取って植え付ければ、希望する時期に収穫できることになる。
(2) 植え穴
・栽植密度は2.5m×3m程度で、10a当たりおよそ133本程度植え付ける。
・植え穴は、なるべく大きく深く掘るのが良い(直径70~90cm、深さ60cm)。掘り上げた土は10日間以上、太陽と空気にさらし、良い土をなるべく中心部に集めて、有機物と基肥と混ぜながら埋め戻す。
・地下水位が60cm程度と浅い場合には、畦(45~60cm)を立てて植える。この場合、2畦ごとに幅30cm以上、深さ60cm以上の排水溝を設ける。
(3) 植え付け方法
・苗は採苗直後に植えるか、あるいは球茎の切り口の大きいものは5~6日間陰干しして傷口が乾いてから植える。
・大苗を植え付ける場合は、葉を剪除して水分の蒸散を少なくする。
・植え付けの深さは、苗の球茎が隠れる程度の浅植えとし、盛り土をして周りの土を足で押さえておく。
・植え付け後に苗の先端が枯れあがる場合は、先端を切除すると葉の抽出が容易になる。

4.施肥

(1) 施肥の効果
・バナナは、他の作物に比べて施肥の影響が顕著に現れ、肥料不足は花芽分化期、出穂、開花、収穫期を遅らすばかりでなく、果段数、果指数、収量を減少し、次年度の吸芽の出地期や花芽分化期、分化数量にも影響する。
(2) 施肥量
・施肥量は、土壌の肥沃度や品種、栽培方法によって異なるが、バナナ1株当たり窒素100~200g、リン酸80~160g、加里400~800g程度である。
(3) 施肥時期
・年3回、4月に20~30%、6月に20~40%、9月に40~50%に分けて行う。
(4) 施肥方法
・株から30cmくらい離れたところから、バナナの葉の広がりの下全体に均一に施し、生育の初期では軽く中耕する。

5.かん水

・バナナの根は柔らかく、わずかの停滞水でも腐りやすいので、排水が良いことが大前提である。しかし、バナナは大きな草本植物でその90%以上が水分であることから、土には絶えず適当な湿り気(含水量65%)が必要である。
・バナナの生長量の多い夏はもちろんのこと、11~1月の冬期間も適切なかん水を行う。

6.開花後の管理

(1) 雄花苞の除去
・下段の果指の肥大を良くし、上下段揃った果実にするために、雌花が開花し始めて1週間後、最下段の果実がやや上向きになった時期に、果軸の先端を一握り残して雄花苞を切除する。
・作業は、切り口の乾きが早く樹液漏出の少ない晴天日の午後に行う。
(2) 支柱立て
・バナナの幹が垂直でなく、少し斜めになっている場合は、バナナの太い果軸が幹から出ている部分を下から受けるように支柱を立てる。
(3) 全房の整形
・幹が傾いていたり、実の数が少ないと全房が斜めに出たまま太ることがある。そのままにしておくと、形の悪い小房となり品質が極端に低下する。この場合、果軸の先端に縄を結び、何日かかけて少しずつ全房を垂直に引き寄せる。
・第1段目の房は特に大きくなりがち(鬼房と呼ばれる)で、バナナの並びも悪いので、開花して間もなく実の極小さい時に一段目だけを切り取ることも行わ
れている。

7.培土

・各世代へ15cm程度の培土を行うと、根茎の発育が促され、浮き上がりおよび老化を防ぎ、経済年数の延長につながる。

8.後継芽の選択と除芽

(1) 後継芽の選び方
・親株が開花結実する頃には、その基部に4~5本の吸芽(仔苗)が生じている。収穫前にこの中から最も良い後継芽を1本残し、他は剪除する。
・母株から少し離れた所から出た吸芽で、その球茎が土の深い所にあって良く肥えた大きいもので、地上の茎の高さが90~150cmになっても幅の狭い先のとがった葉を出す大きな筍のような形のものが良い。
(2) 除芽
・除芽は、母株を傷つけないように注意しながら、不要な吸芽の地上部を切り倒し、生長点を刃の先でつぶして行う。

9.収穫

(1) 収穫時期
・バナナは、同じ大きさの吸芽を同時に植え付けると、初回の開花結実および収穫は短期間に集中する。また、初回の収穫時期は、栽培条件とくに植え付け時期によって決定される。
・バナナは、開花期が株ごとに異なり、開花から収穫までの所要日数も時期によって違う。春から夏に出蕾して年内に収穫される果実は70~100日で短く、秋から冬に出蕾して11~3月の生育適温以下の気温に遭遇する果実は100~160日で長い。
(2) 熟度
・収穫時の熟度は、輸・移出用は夏7分熟、冬8.5分熟を超えないようにし、地場消費は8.5~9分熟とする。
・熟度の判定は、青バナナの果皮の稜角の鋭鈍、肥大や緑色の程度によって行う。
(3) 収穫方法
・腐敗と品質低下を防ぐため、収穫は午前10時までに行う。
・果房は傷口からすぐ黒変して品質を低下させるため、収穫、切断、運搬に当たっては、取り扱いを丁寧にする。

10.収穫後の作業

(1) 幹の処理
・バナナの実を収穫した後の大きな幹はなるべく早く、地上30cm位の部分から切り取ってしまう。
・切り倒した幹や葉は、生々しい間になるべく細かく細断してバナナ園にばらまいて敷草とする。
(2) 古株の掘り取り
・跡継ぎの吸芽が150~180cmに伸びたら、切り残した古株の地中の球茎を、跡継ぎ吸芽の球茎や根をできるだけ傷めないように注意しながらスコップなどで掘り取る。