GAPであなたの農業経営を変えてみませんか?
Ⅰ.導入に当たっての基礎データ
1.作型
・暖地では9~10月に播種し、1~3月に収穫するハウス作型が一般的である。
2.反収および単価
・反収は、10a当たり800~1,200kg程度である。
・単価は、1kg当たり700円~880円、平均で820円である。
3.労働時間
・10a当たり300時間程度である。
4.必要な種子量
・10a当たりの播種量は、育苗する場合40~60ml、直播の場合1dl程度である。
・種子代は、20ml当たり1,300円程度(種類によって極端に異なる)である。
Ⅱ.栽培技術
・和種ナバナのうち、抽だい後に伸長した花茎、奮および若葉を利用する花蕾タイプの栽培技術を記載する。
1.育苗
・ナバナの発芽適温および生育適温は、20℃前後であり、比較的冷涼な気候を好むが、適応する温度条件の幅は広い。
・ナバナの耐寒性・耐雪性はつけな類の中でも強い方であるが、品種間差が大きい。
・25℃を越えると徒長して葉色が淡くなり、葉柄が細くなり損傷しやすくなる。
・移植栽培では育苗中の防除を徹底して行い、本ぽへ病害虫を持ち込まないようにすることが大切である。
・播種量は10a当たり40~60ml、200穴セルトレイに播種する。10a当たりセルトレイは23~27枚程度、育苗培土は120㍑程度準備する。育苗期間は20日程度である。
・なお、直播栽培の場合は、播種量は10a当たり1dl程度で、条間30cmに条播または株間30cmの点播とする。点播の場合は1か所に3〜5粒播種する。
2.畑の準備
・耕土が深く、排水のよい有機質に富んだ弱酸性の土壌が最適である。ただし、適応範囲が広く、湿田でも排水対策と高畝づくりをすれば栽培は可能である。
・一般的に和種ナバナは洋種ナバナよりも耐湿性が強く、逆に干害には弱いとされ、安定した水分供給が必要であり、乾燥すると著しく生育が阻害される。ただし、過湿で根に障害を受けると、黄化や萎縮等の生理障害を生じて栄養生長が阻害され、品質が著しく低下する。
・ほ場は、根こぶ病の発病歴のない場所を選定し、完熟堆肥を10a当たり2t施用し、播種または定植の2週間前には土壌とよく混和しておく。土壌pHは6.5~6.8を目標に矯正する。
・土壌表面の乾燥防止、地温上昇、雑草抑制を目的にグリーンマルチを張る。マルチの下にかん水チューブを配置する。
3.施肥
・標準施肥量は10a当たり窒素15kg、リン酸20kg、加里15kg程度である。
・ハウスでは前作の残存肥料が集積し、生育初期に過繁茂となる場合がある。したがって、施肥前に必ず土壌診断を行い、診断結果に基づいた施肥設計をする。
4.定植
・播種後20日前後、本葉2.5~3.5枚で定植する。
・栽植密度は露地栽培では、ベッド幅60cm、2条千鳥植え、条間30cm、株間30~35cm、通路60cmとする。10a当たり栽植本数は4,500~5,400株となる。
・ハウス栽培では間口3間の場合、ベッド幅120cm、畝高15cm、株間30~35cm、条間30cm 4条千鳥植えとする。通路は45cmを確保する。株数は6,400~7,900株/10aとなる。
5.管理作業
(1) 間引き(露地栽培)
・直播(点播)では、本葉2~3枚のときに2株残し、本葉6~7枚で一本立ちにする。条播の場合は、最終的に栽植密度に応じた株間となるように順次間引いていく。1回で間引き を終える場合は、本葉3~4枚までに作業を終える。
(2) 中耕・土寄せ(露地栽培)
・直播の場合、播種後25日ごろ(追肥1回目の時期)から、雑草対策のため間引きのつど、畝間や条間を軽く中耕する。中耕は2~3回行い、株元に十分土寄せしておく。
・移植栽培でマルチを敷設しない場合、定植後10日ごろ(追肥1回目ごろ)から2~3回行う。
・本葉5枚以上に生育してからは、根をいためるので、中耕しない。
(3) 換気・保温操作(ハウス栽培)
・12月初め頃までは、ハウスを開放しておく。以降、日中15~20℃で管理し、夕方は早めに閉める。
・12月中旬より、5℃以下にならないように、トンネルやカーテンで保温する。被覆物は曇天時でも朝は徐覆し、午前中の光合成を促進する。厳寒期でも晴天時のハウス内温度の上昇に注意し、随時換気する。
・換気が不十分だと、べと病などの病害の発生が多くなったり、冬期に寒害を受けやすくなる等の悪影響がある。
(4) 水分管理(ハウス栽培)
・定植直後は、根が張っていないため各株ごとにかん水し、活着後にかん水チューブによるかん水を行う。
・出蕾期に乾燥すると、品質や株の肥大に影響するので、かん水する。
(5) 摘葉
・過繁茂や老化、黄変した葉を摘葉し、側枝へ十分に光を与えて発生・伸長を促進させる。
・マルチ面が全く見えない状態になってきたら、中・下位葉のうち特に大きな葉や老化葉を2~3業ずつ順次適葉し、マルチ面が少し見えるようにし、地温の上昇をよくするとともに、側枝へ充分光線が当たるようにする。上位業では、隣株の親茎部に多いかばさるような葉を摘葉する。
(6) 追肥
・1回目は、直播栽培の場合は播種後20日ごろ、移植栽培の場合は活着後に行う。
・2回目は主枝、第1分枝の収穫後に行い、3回目以降は草勢、花蕾の色を見て、適時行う。
・追肥は条間や畝の肩の部分に施し、10a当たり窒素成分で3~4 kgを数回に分けて施用する。
6.主な病害虫と生理障害
・ナバナ類の登録農薬は少ないので、排水のよいほ場の選定と必要に応じて高畝栽培をすること、多肥栽培・連作を避けること、周辺雑草をこまめに刈り取り、害虫の発生源を少なくすることなど、耕種的防除に努めることが重要である。
・注意を要する病害虫は、根こぶ病、コナガ、アブラムシ類などである
7.収穫
・主枝は早めに収穫し、側枝の生長を促す。側枝は、花茎が伸長し、葉の間から花蕾が見え始めたころが収穫適期である。
・葉は中へ折り込み、濃緑色の蕾を揃えて長さ12cm程度に切り取る。収穫後の開花を避けるため、収穫の遅れと温度の上がりすぎに注意する。
・出荷の調製は、帯紙を巻いて輪ゴムをかけ、角束にするが、束ねるのに手間がかかり、慣れた人でも1束3~5分かかる。1人が1日で調製できる出荷量は限られるので、播種期をずらしながら収穫最盛期が重ならないように調整する。