ダイコン(秋まき)の栽培(暖地)

1.作型の特徴

・播種が10月上旬~12月中旬、収穫が2月中旬~4月中旬で、11月中旬以降はトンネルを敷設する作型となる。
・11月中旬播種までは空洞症とそれによる内部腐敗に、11月下旬以降の播種では抽苔に注意が必要である。
・抽根が多い品種では肩こけや表皮の剥離,さらにはその腐敗なども生じる。
・年間を通じてもっとも抽台しやすいのは12~1月まきである。

2.品種と作型

・この作型に向く品種は、寒害が出にくく、低温伸長性・肥大性があり、抽台が少ない晩抽性品種である。
・YR春の浦(カネコ種苗):10月上~10下旬播種(マルチ)、2月中~3月下旬収穫
・春宴(雪印種苗):10月上~10下旬播種(マルチ)、3月上~3月下旬収穫
・ともしび(渡辺農事):10月上~10下旬播種(マルチ)、2月上~3月下旬収穫
・早生ながはる(中原採種場):10月中~10下旬播種(マルチ)、3月~4月収穫
・早生ながはる(中原採種場):11月中~12中旬播種(マルチ、トンネル)、3月中旬~4月中旬収穫
・初神楽(タキイ種苗):11月下旬~12月中旬播種(マルチ、トンネル)、3月下旬~4月中旬収穫

3.畑の準備

(1) 適土壌と基盤の整備
・なるべく深く耕起(できれば30cm以上)し、砕土・整地を十分に行い、岐根、曲がり、寸づまりにならないようにする。
(2) pHの矯正と土壌改良
・ダイコンは苦土やホウ素の欠乏による生育障害を受けやすいので、土壌分析に基づいた改良を行う。
・ダイコンは酸性土壌にはやや強くpH5.3以上であれば問題ないが、pH6.0を目標に矯正する。
・有効態リン酸15~30mg/乾土100gを目標に土壌改良を行う。
(3) 土壌消毒
・センチュウ被害が予想される畑では、D-D油剤やディトラペックス油剤などで土壌消毒を行う。
・通常は、土壌線虫防除だけで十分であるが、萎黄病や根腐病などの土壌病害が発生する懸念がある場合は、クロルピクリンくん蒸剤などで土壌消毒をする。
(4) 堆肥の施用
・完熟堆肥を播種の1か月前に2t程度全面施用し、耕起する。
(5) 輪作
・アブラナ科の連作を避けるため、共通病害虫のないマメ類やイネ科の野生種エン麦や未成熟トウモロコシとの輪作を行う。
(6) 畝立て
・マルチ栽培では、幅80cm、高さ10~15cmのベッドを形成し、条間45㎝の2条植えとし、通路幅は60㎝とする(平均畦幅70cm)。
・トンネル栽培では、幅90cm、高さ10~15cmのベッドを形成し、条間40㎝の2条植えとし、通路幅は60㎝とする(平均畦幅75cm)。
・うね方向は、生育を揃えるためにはうね方向を南北にした方が良い。東西うねの場合は、中央から南半分と北半分とで地温差が生じるので、それを防ぐために、マルチ表面をなるべくフラットにする。
(7) マルチ
・保温性を高めるために透明マルチを用いることで、寒害の程度も小さくできる。
・水は比熱が高く一度太陽光で温められると冷めにくいことから、地温を高く維持するためにマルチの敷設は降雨後で土壌が乾かない時期に行なう。
・マルチの植え穴の孔径(穴径)も小さいほどマルチ内の温度が逃げにくく、根部の肥大促進や空洞症の発生防止につながる。孔径は4cm程度とする。

4.施肥

(1) 肥料の吸収特性
1) 養分吸収量
・10a当たり養分吸収量は、窒素12~30kg、リン酸4~10kg、カリ14~26kg、カルシウム6~12kg、マグネシウム1~3kgと多量であるが、ダイコンの吸肥力は強く、根を2mの深さまで伸ばして土壌養分を吸収することから、作型や土壌によっては、吸収量よりはるかに少ない施肥量が適正施肥量となる。
2) 窒素
・ダイコンの生育に最も大きな影響を及ぼすのが窒素である。
・窒素が多すぎると茎葉が徒長して直根の肥大が不良になり、少なすぎると直根の肥大が劣るばかりでなく、茎葉の耐寒性が低下したり、ス入りの発生を助長する。
・生育初期に窒素が不足すると茎葉部・根部ともに生育が遅れ、その後に窒素を十分に与えても遅れを取り戻すことができない。
3) ホウ素
・ホウ素が欠乏すると茎葉は粗剛になり、多数の側芽が発生するようになり、根部には表皮の黄化、肌がざらつくサメ肌症状、縦横の亀裂、赤心などの症状が現われる。
・生育初期から中期にかけてホウ素が不足すると根部肥大が不良になり、肉食がアメ色になる。
4) マグネシウム
・マグネシウムが欠乏すると下葉の葉脈間が黄化し、しだいに上位葉に及び、その後落葉する。
・欠乏症状は、厳寒期に根部の肥大盛期をむかえる作型で発生しやすい。
(2) 施肥
・施肥位置に根群が集まる性質があるので、元肥は畝全体に混合しておくと側根は水平に広く分布し、主根の生長も良好になる。
・基肥は、播種7日前に全面施用し、深耕しておく。
・マルチ栽培なので全量基肥とするが、栽培期間が長いので緩効性肥料を主体にし、窒素、リン酸、加里を成分量で10a当たりそれぞれ14~18kg(播種時期が遅くなるほど増施する)施用する。
・ダイコンはホウ素欠乏による赤芯症や肌あれ、亀裂が出やすいので、上記の施肥に併せてFTEを4kg/10a(ホウ素として0.2~0.3kg以内)施用する。ホウ素資材とともに過リン酸石灰を施用するのもよい。

5.は種

(1) は種方法
・マルチ栽培における株間は27㎝(条間45㎝)、トンネル栽培では30㎝(条間40㎝)程度とする。
・ダイコンは多粒まきした方が発芽率が向上し、根を土中に深く伸ばすことができ、その後の生育もよくなるので、1穴当たり3粒は種し、間引きを行う。
・は種深度は1.5cm~2.0cmを目安とし、は種後に軽く鎮圧する。

6.管理作業

(1) 除草
・植え穴付近の除草は間引き時に手取りで行い、通路部分は生育中期にホー除草を1回行うことで収穫までの雑草繁茂を防げる。
・除草処理は、は種後約30日ころまでに終わらせ細根を傷めないようする。
(2 間引き
・晩抽性品種は一般に異形株の発生率が高いが、4葉期以前では異形株が判別しにくいので、
間引きは、本葉5~6枚時の1回ですます。
・間引きでは、生育不良株、子葉の奇形、病害虫による被害株、葉色の濃い株、生育が特に旺盛な株を取り除く。
(3) 保温の方法
・保温の効果を低い順に並べると、べたがけ<トンネル<べたがけ2重被覆≦トンネル+べたがけとなる。
(4) べたがけ資材による保温
・10月下旬まき以降の作型では、不織布のべたがけを行なう。
・抽苔しやすい12~1月まきでは、トンネル被覆に加えてべたがけの2重被覆とする。
・抽根が始まってから-5℃になると寒害が発生するので、べたがけを行って寒害を回避する。
・マルチ内の蓄熱性を高めるため、トンネル被覆するまでの間に降雨がある場合には、べたがけをめくるなどして積極的に雨水を植え穴に浸透させる。
・べたがけを行なう際には、葉や抽根部が露出しないよう、うね幅の倍程度の幅の資材を用いる。生育の初期にはだぶついてしまうので、マルチ表面が陰にならないよう、余分な部分はベッドの片側(東西うねなら北側)に寄せておく。
・べたがけ資材の被覆は、保温効果がある反面、長期間の被覆は遮光による茎葉の軟弱徒長と直根の肥大不良をまねく。寒害や花芽分化の危険がなくなれば、ただちに除去する
(5) トンネル被覆による保温
・トンネルは全体を覆うよう、ベッド幅が90cmの場合、幅240cm、厚さ0.01mmのフィルムを用いる。
1) すそ換気を行う場合
・保温性の高いトンネル資材である無孔の農ビフィルムを使用する。
・生育初期は30~35℃、中期は25℃、後期には20℃を目標に開閉作業を行なう。
・は種直後からトンネルを敷設する作型で、最初に換気する場合、東西畦なら南端、南北畦なら東端を5m間隔くらいすそをまくり、夕方冷えてきたら閉めて冷気を入れないようにする。ダイコンの生育が進むにつれて、すそまくりを多くし、換気率を高めていく。
・は種直後から低温による花芽分化が発生しやすい時期では、保温により花芽分化の回避に努めるが、生育中期(抽根開始期)以降は蒸しこみすぎると葉勝ちになり、根の肥大が遅れるため、換気が遅れないよう注意する。
・すそ換気を行う場合は、被覆資材は2年使用できる(古い被覆資材を使用すると光線透過率・昇温効果が低いためにダイコンの生育が遅れたり、早期抽台する場合があるので注意が必要である)。
2) すそ換気を行わない場合
・開孔率1.5%の農ポリフィルム(ユーラックカンキ2号など)を利用することで、すそ換気を省略する。
・穴あきのフィルムを使うと夜間の冷込みが強く、生育相が1週間くらい遅れる上、被覆資材も1年で廃棄する必要がある。

7.主な病害虫と生理障害

・この作型で問題になる害虫はアブラムシである。収穫間際まで被覆が続けられるため、アブラムシが一度侵入すると発見が遅れ、著しく繁殖するので十分に注意し、必要に応じて薬剤防除する。また、コナガの発生にも留意する。
・オンコル粒剤を施用すると、キスジノミハムシ,タネバエ,コガネムシ,ゴミムシ類などの土壌害虫のほかに、アブラムシやコナガの防除もできる。
・この作型ではべと病、わっか症、黒斑細菌病などの発生に留意する。
・11月中旬播種までは、空洞と内部腐敗の発生に留意する必要がある。また、11月下旬以降の播種では、抽苔の発生に注意する。
・注意を要する生理障害は、亀裂褐変症、空洞症、ス入りなどである。

8.収穫

(1) 収穫期の管理
・被覆の除去時期は、早すぎると寒害を受け、遅すぎると花芽分化後の花茎の伸長を早めてしまう。
・抽根部や葉の痛みを防ぐため、一度にべたがけとトンネルの両方を除去せず、外部環境に慣らしながら行なうようにする。
・気象条件にも配慮しながら、べたがけは3月上旬、トンネルは3月下旬までには除去する。
・トンネル除去を行なう場合は、1週間前ころから日中は完全にビニールを取り、寒さが厳しい夜は再びかける作業を3~4日行なって馴化するとよい。
(2) 収穫適期
・根部肥大の緩慢な2~3月どりでは肥大の早いものから収穫する。
・収穫期は根重で1~1.2kgのころであるが、品薄の端境期であれば、800g程度から収穫を始めてもよい。
・収穫前後に、必ず肉質調査を行い、肥大、品質状況を確認しながら適期収穫につとめる。
(3) 収穫方法
・ダイコンの肌は、打撲やこすり摩擦を与えると品質が低下するので注意する。
・洗浄後、時間がたつと鮮度が落ちるので冷蔵貯蔵する。