ゴボウの栽培

Ⅰ.ゴボウの概要

1.ゴボウの導入

(1) 栽培面での特徴
・ゴボウは2年生作物で営利栽培では、1年目の栄養生長のみとなる。
・ゴボウの栽培期間は180日程度と長いが、この間は栄養生長だけである。
・播種後10~15日で発芽、初期生育は緩慢だが、播種後70日目ころより生育旺盛に、100日前後で最大となり、130日前後で収穫期に達する。
・栽培面でのポイントは、トレンチャー耕をできるだけ丁寧に行い地下1mまで土質が均一になるようにすることと、5年程度の休作を設けることである。
(2) 経営面での特徴
・栽培期間は長いが労力をあまり必要としない作物で、労働時間の大半は収穫・調製が占める。
・比較的機械投資が少なくてすみ、大規模栽培が可能な品目である。
・栽培コストが比較的低いために価格弾力性が高く、収量さえ確保できれば相場がかなり低下しても経営的に赤字になりにくい。

2.来歴

・ゴボウの原産地はユーラシア大陸北部といわれていて、ヨーロッパからシベリア、中国東北部にかけての広範囲に野生種が分布している。
・中国では古くから野生のゴボウを薬用として使っていたようである。
・日本には自生種がないので、日本起源とは言えないが、福井県三方湖畔の縄文前期遺蹟(5500年前)の鳥浜貝塚の調査でリョクトウ、シソ、エゴマとともにゴボウが存在していたことが認められており、かなり古くから、中国と同様、薬用として用いられていたと考えられている。
・平安時代後期には、食用にも利用されていたようで、平安時代の書物「本草和名(918年)」や「和名抄(923年)」には、かたい根を意味する「岐多伊須」および「岐太伊須」の名前で登場し、平安時代の終わり頃には宮廷の献立の1つにもなっている。
・江戸時代になると全国に広く普及し、品種も改良されていった。
・なお、現在、中国でも栽培されているが、食用ではなく薬用としての利用が主で、野菜として重用されているのは日本だけである。

3.分類と形態的特性

(1) 分類
・キク科ゴボウ属の多年草である。
(2) 根
・根部の生育は最初直根の伸長が行われ、は種後70日ころより本格的に上部から肥大が始まり、は種後130日前後で収穫期に達する。
・根の伸長部分に、未熟堆肥や肥料の固まりがあると岐根の原因となる。
・発芽とともに根部は急速に伸長し、70日前後で約1mに達する(根部伸長期)。
・出葉転換期を境として播種後110日頃から根部肥大期に入る。
・岐根は土塊が多い場合、下層に硬い層がある場合、砕土性が悪く土壌と肥料の混和が不良な場合、未熟な堆肥を施用した場合などに発生しやすい。
(3) 葉
・播種後60~110日の間は、地上部が急激に繁茂する時期である。
・基肥施用の影響は第1本葉展開時からみられ、葉が大きく葉色も濃くなる。
・8月末頃までは夏の丸型の葉で、その後小型で直立した秋の葉に変わる。
・本葉3葉が展開すると根部伸長が盛んとなる。
・本葉7葉期を過ぎると葉が畑全面を覆うようになる。
(4) 花芽分化と抽苔
・グリーンバーナリ型で、基本栄養生長相を過ぎてから所要の低温遭遇後、長日・高温で抽苔に至る。
・根部の太さ1cm以上に達した苗を0~2℃の低温で60日間生育させると花芽が分化し、その後の高温・長日(日長12.5時間以上)で抽苔する。
・品種的には早生種ほど感応しやすいが、現在の品種は晩抽性になっている。

4.生育上の外的条件

(1) 温度
・発芽最低温度10℃、最適温度20~25℃、15℃以下や30℃以上では発芽率が低下する。
・北方起源であるが、生育適温は20~25℃と比較的高温性である。
・地上部枯死温度は3℃くらいで軽い降霜には耐えるが発芽直後の霜には弱く、晩霜によって被害を受けることがある。
・根部の耐寒性は幼苗期は弱いがその後は極めて強く、-20℃くらいの低温にも耐え寒地の露地でも越冬できる。
(2) 水分
・土壌水分20%までの乾燥には比較的強いが、2日以上の冠水で根が腐敗する。
(3) 土壌
・長根作物なので、1m以内の土層が均一で排水良好で通気性がよく、肥沃な砂壌土~壌土が望ましい。
・土質とごぼうの品質については一般的に砂土系では姿形が良く、粘質土系では肉質が良いと言われている。

5.品種

・北海道で作られているゴボウの主な品種は次のとおりである。
(1) 柳川理想(柳川)
・北海道で栽培されているゴボウのおよそ6割を占める、白肌で肉の柔らかな市場性の高い品種である。
・根径は3cm程度、根長は75cm内外で首の締まりが良く、尻部まで肉付が良く、ひげ根が少なく、白肌で柔らかである。
・滝野川種よりやや早生で、掘り取り時期が多少遅れても肌のヒビ割れが少なく、ス入りが遅い。
・葉数は6~7枚が中心で、立性のため株間をつめても欠株が少なく、よく揃う。
・抽苔が少ない。
(2) 滝まさり(みかど協和)
・根の伸びがよく、良質多収の滝野川系改良の晩生品種。
・首部がよく締まり、尻部まで肉つきが良い。
・ひげ根は少なく、肌質も良い。
・滝野川系ではやや小葉の赤茎で、葉数は少なめで、立性、草勢は強い。
(3) 常豊(柳川)
・優れた品質・多収豊産性。
・根部の太り、揃いが良く、根長は80cm位で草勢は中、草姿は立性で抽苔性は安定している。
・根は白肌でキメ細かく柔かい。
・側根少なく、ヒビ割れもなく、ス入りが遅い早生ごぼう。
・特にトンネル栽培、マルチ栽培で多収豊産性の特長を発揮する。

6.作型

・北海道での主な作型は次のとおりである。
(1) 春まき
・4月下旬は種、8月中旬~9月上旬収穫
(2) 晩春まき
・5月中旬~6月上は種、9月中旬~11月中旬収穫
(3) 越年春どり
・6月中旬は種、3月下旬~4月下旬収穫.

Ⅱ.ゴボウの栽培技術

1.畑の準備

(1) 適土壌と基盤の整備
・トレンチャー耕はできるだけ丁寧に行い、地下1mまで土質が均一になるようにする。
・また、雨水が溝の中にたまらないように、排水性を考慮しながら作業を行う必要がある。
(2) pHの矯正と土壌改良
・最適pHは6.5前後である。
・有効態リン酸は、トレンチャー溝全体で10mg/100g以上を改良目標とする。
・有機質肥料、完熟堆肥、石灰などの土壌改良資材は、前年のうちに畑全体に十分に施用しておく。
(3) 堆肥の施用
・有機物の施用はコガネムシの発生を助長するので注意する。
(4) 輪作
・連作するとセンチュウの被害が増加するとともにヤケ症の発生につながるので、5年程度の休作が必要である。
・トウモロコシなどのイネ科作物を前作にするとヤケ症の発生が少なくなる。
(5) 畦立て、マルチ
・70 ㎝以上深く耕したあと、掘った溝を埋め戻して畝を立てる。
・埋め戻す土に有機物を混ぜると土壌微生物が活性化され、ゴボウの肌が荒れたり、土壌病害が発生するので、絶対に行わない。
・やわらかい土を埋め戻してそのまま畝を立ててしまうと、降雨によってその部分だけが陥没し、根の生育が阻害されてしまうので、地表から20cmの深さまで土を埋め戻したら土をよく踏み固めておく。
・十分踏み固めた後に、残りの土を戻して畝を立てる。

2.施肥

(1) 肥料の吸収特性
1) 総論
・尻こけは生育途中で肥切れしたり、初期生育が旺盛で秋落ちしたものがなりやすい。
2) 窒素
・ゴボウは高濃度には弱く、窒素の施肥量が多すぎると生育は抑制され、根が直接肥料に触れると岐根になる。
・9月以降の肥大を促進することが良質多収の面で重要である。
・良質、多収を目指す場合、秋以降の生育を促すような窒素施肥法が重要となる。
(2) 施肥設計
1) 考え方
・ゴボウは根が土中深くまで入り吸肥力が強いため、肥料不足には強い。
・生育前半に速効性の窒素とリン酸を効かせて初期生育を確保し、生育後半には50cm以下の下層の活力旺盛な吸収根に緩効性肥料を効かせて根の下部の肥大充実をはかる必要がある。
・この条件を満たすためには、速効性肥料と緩効性肥料を組み合わせた全量トレンチャー溝への作条施用が基本となる。
・施肥は元肥3分の2、追肥3分の1とし、追肥は2回に分けて施す。
・追肥の目安時期は、1回目が本葉3~4葉期、2回目は8~9葉期に行う。
・ただし、ロング肥料を使用している場合は追肥は必要ない。
・早出しの場合は70日タイプ、普通出荷の場合は100日タイプのロング肥料を施用する。
2) 施肥設計(例)

 区分  肥料名 施用量
(kg/10a)
窒素 リン酸 カリ 苦土 備考
 基肥 S839E  50 4.0 6.5 4.5 ・S839Eは全層施肥とする
・エコロング413は溝施用とする
・追肥は生育の様子を見て、3~4葉期または8~9葉期に行う
エコロング413(100日) 70 9.8 7.7 9.1
 追肥 S444 30 4,2 1.2 4.2 1.5
合計 150 18.0 15.4 17.8 1.5

 

3.播種

(1) 時期
・発芽最低温度は10℃、最適温度は20~25℃で、15℃以下や30℃以上では発芽率が低下する。
・は種時期は地温10℃以上を目安とし、早出しではベタガケなどの保温対策を講ずる。
・なお、貯蔵向けのゴボウはやや遅まき密植栽培として太りすぎを抑え、ス入りの発生を少なくする。
(2) は種方法
・トレンチャー耕後、土壌水分のあるうちには種を行う。
・覆土は2~3cm程度に薄くし、は種後鎮圧する。
・好光発芽性があり、は種後10~15日で発芽する。
・は種方法はシードテープ1粒まきが多く、種子量は1~1.5kg/10a程度必要で、テープの長さは畝幅72cmの場合、約1,400m/10aである。
・北海道では、施肥・深耕・は種を同時に行う作業機の使用事例が多い。
(3) 栽植密度
・畝幅は66~72cm、株間は6~10cm程度で、株間は早出しの場合は広くし、遅出しの場合は狭くする。
・また、肥沃な土壌では株間をやや狭くする。

4.管理作業

(1) 間引き
・1株当たり複数播種した場合は、本葉が1枚のころによい株を2株残して間引き、さらに本葉3枚のころに1本立ちにする。
・地上部から見た時、葉が横に倒れている株は根も曲がっている傾向があるので、間引きの際は葉が真上に伸びている株を残すようにする。
(2) 被覆
・ベタガケを行う場合は、は種後できるだけ早く行う。
(3) 中耕・除草
・トラクタの踏圧で直根を切断することがないように、トラクタによる中耕除草作業は注意して行う。

5.主な病害虫と生理障害

(1) 病害
・北海道において注意を要する主な病害は、うどんこ病、角斑病、黒あざ病、黒斑病、黒条病、黒斑細菌病、モザイク病などである。
(2) 虫害
・北海道において注意を要する主な害虫は、キタネグサレセンチュウ、キタネコブセンチュウ、ゴボウヒゲナガアブラムシ、シラフヒョウタンゾウムシなどである。
(3) 生理障害
・主な生理障害は、抽苔、ヤケ症などである。

6.収穫

(1) 収穫適期
・試し掘りを行い、出荷規格に達したものから順次収穫する。
・収穫が遅れると、スが入りやすくなるので注意が必要である。
(2) 収穫方法
・収穫作業はストローチョッパなどで葉を切断し、数日して葉が枯れてからゴボウリフターなどで掘り上げて行う。
・掘り取り後は、根の先端が乾燥しやすいので速やかに施設内に搬入し、乾燥を防ぐ。
・貯蔵する場合は葉柄を付けたままポリ袋で包装し、-2~0℃で保管する。