スイカの栽培

Ⅰ.スイカの概要

1.スイカの導入

(1) 栽培面での特徴
・栽培面でのポイントは、予定した節位付近に確実に着果させること、着果させた果実を大きくて品質の良いもの仕上げることである。具体的には、「定植から雌花着生まではしっかりとした茎葉を作って順調なつるの伸長を図り」、「開花・着果期には土壌水分と肥効を抑えて確実に着果させ」、「着果後はできるだけ早く追肥とかん水を行って果実の肥大を図る」ことである。
(2) 経営面での特徴
・スイカの栽培は、果菜類のなかでは比較的労力・費用とも少ない。
・トンネル早熟栽培の労働時間は10a当たり約250時間で、最も労力が集中する収穫作業もほかの果菜より少ない労力ですむ。
・半促成栽培では約700時間の労力を要し、温度管理、人工受粉などに労力が集中する。

2.来歴

・スイカの原産地は熱帯アフリカ南部、現在のボツワナ共和国~カラハリ砂漠周辺とされている。
・スイカの誕生は約2500万年前~3000万年前とされていて、当時のスイカは中が白くて苦いものだったようである。
・栽培の歴史は、原産地に近いエジプトでは4000年以前の壁画によりスイカが栽培されていたことが確認されており、ギリシャには西暦紀元初期に伝わり、その後、中央アジア、中近東などの内陸乾燥地帯を中心に発達してきた。
・中国へは11世紀頃ウイグルから伝来してきたと言われている。
・日本への伝来については、諸説があるが鳥羽僧正(1053~1140)の『鳥獣戯画』にウサギが持っている果物の中に縞皮スイカらしい絵が描かれていることから、中国にスイカが入って間もなく、唐文化と交流の盛んであった平安時代の日本に渡来したことになる。
・僧義堂の『空華集』(1359)に西瓜の詩が見られることから、いずれにしても、かなり古くから日本に根付いていたものと思われる。
・江戸時代のスイカについては、『農業全書』(1696)に品種らしきものがあった記述があり、元禄15年(1702)に著された『摂津名所図会』のなかに地方的な品種の紹介があるなどスイカが換金作物として栽培され、品種意識もかなり進んでいたようである。
・明治時代に入ると、数多くの品種がアメリカから導入され、昭和初期には奈良県を中心とした大和スイカと、関東を中心とした都スイカの二つの品種が確立され、縞のあるスイカが作られるようになった。
・現在ある様々な品種のスイカは、この二つのスイカの流れを組んだものである。

3.分類と形態的特性

(1) 分類
・ウリ科スイカ属のつる性一年草である。
(2) 種子
・スイカの種子はキュウリと同じ無胚乳種子である。
(3) 根
・スイカの根は生育初期に横方向に、その後は土中深く伸びるので、乾燥には強いが多湿には弱い。
(4) 茎葉
・葉は切込みが深く、丸みを帯びていて、葉身は25cm程度である。
・茎葉の生長は開花期の少し前から急激に増加し、果実の肥大最盛期になると落ち着く。
(5) 果実
・果実の肥大は着果後1週間くらいは緩やかだが、その後急激な増加を示す。

4.生育上の外的条件

(1) 温度
・発芽適温は25~30℃、生育適温は日中25~28℃、夜間15~20℃で13℃以下では生育が抑制される。
(2) 水分
・土壌水分が高いと、窒素の施用量が少なくても開花期の過繁茂が起こる。
(3) 光
・ウリ科野菜の中では最も強い光を好み、光補償点4万ルクス、光飽和点8万ルクスである。
(4) 土壌
・適pHは6.0~6.5であるが、5.5程度でも十分生育できる。
・砂質土、火山灰土では肥効も現れやすいが肥切れも早く、粘質土では初期の生育がゆっくり進み充実した茎葉が作りやすいが排水性が悪いと二次肥大など障害も出やすい。

5.品種

・北海道で作られているスイカの主な品種は次のとおりである。
(1) 祭ばやし777(萩原農場)
・萩原農場が育成した品種で、果皮は薄いが濃緑色で黒色の縞模様があり、豊円型大玉で果肉色は鮮紅、糖度が高い。
・日本で一番多く栽培されている品種で、北海道では主に6月中旬~8月下旬に出荷されている。
(2) マイティー21(萩原農場)
・萩原農場が育成した品種で、果皮は薄いが硬くカット売りに適している。
・豊円型大玉で果肉色は緑色で鮮紅、糖度が高い。
・中晩生種で、北海道では主に9月上旬~10月中旬に出荷されている。
(3) 必勝(大和農園)
・大和農園が育成した品種で果皮が薄く、鮮緑色の果皮に濃いすっきりとして縞が入り、豊円型大玉で果肉色は鮮桃紅色、糖度が高く玉揃いもよい。
(4) 夏のだんらん(萩原農場)
・萩原農場が育成した品種で、耐暑性に優れトンネルや露地栽培に適している。
・果皮色が濃く縞柄が鮮明で、果肉色は帯桃鮮紅で鮮やかさがあり糖度が高くカット売りに適している。
(5) スイートキッズ(萩原農場)
・萩原農場が育成した品種で、果皮が薄く緑色で黒色の縞模様があり、小玉の赤肉種で糖度が非常に高い。
・北海道では主に6月中旬~10月上旬に出荷されている。
(6) マダーボール(みかど協和)
・みかど協和が育成した品種で、皮目が薄く鮮明な細縞をつけた楕円形小玉種、果肉は濃紅桃色である。
・糖度が高く食味がよい。
・熟期は早生系で、北海道では主に6月中旬~8月下旬に出荷されている。

6.作型

・北海道での主な作型は次のとおりである。
(1) 半促成
・2月下旬~3月上旬は種、4月中旬~5月上旬定植、7月上旬~7月中旬収穫
(2) トンネル早熟
・4月上旬~4月中旬は種、5月中旬~5月下旬定植、8月上旬~8月中旬収穫

Ⅱ.スイカの栽培技術

1.育苗

(1) 播種
・芽がでにくいので、水温20℃で約10時間浸漬を行う。
・育苗箱に条間5~9cm、株間2cmほどの間隔で条まきする。
・覆土は5~6mmくらいとする。
(2) 出芽
・出芽まで日中25~30℃、夜温20℃程度に管理する。
・15℃以下または40℃以上では発芽不良となる。
(3) 移植までの管理
・出芽始めから日中25~28℃で夜温は徐々に下げ、換気に注意して苗の徒長を防ぐ。
・出芽後は乾燥気味に管理し、地温も20~15℃と徐々に下げ、日光を十分当てて胚軸基部から緑色の充実した苗にする。
(4) 移植(鉢上げ)
・鉢上げは本葉が展開したころ(は種後20日ころ)に行う。
・直径12~15cmのポットに育苗土を詰め、ビニールで被覆し地温を高めておく。
(5) 定植までの管理
・移植後のかん水は地温の低下と過湿に注意し、活着の促進を図る。
・活着後は乾燥気味に管理し、日光を十分に当てて苗の充実を図る。
・定植1週間前に苗ずらしを行って、葉が重なりあわないようにポットの間隔を広げておく。
・本葉4~5葉期が定植の適期である。
・定植前日に、苗に十分かん水する。
・なお、接ぎ木をする場合は、ユウガオ等の台木に呼び接ぎまたは割り接ぎで行う。

2.畑の準備

(1) 適土壌と基盤の整備
・耕土が深く排水性のよいほ場となるよう整備すると、スイカは耐乾性が高いことから草勢維持が容易となる。
(2) pHの矯正と土壌改良
・pHを6.0くらいになるよう矯正する。
(3) 堆肥の施用
・事前に完熟堆肥を10a当たり2t程度施用しておく。
(4) 輪作
・連作するとつる割れ病やセンチュウによる障害が出やすいので、一度栽培したところでは少なくとも5年は栽培しないようにする。
・深い耕土が必要なことから前作にゴボウ、ニンジン、ダイコンなどの深根性の作物を取り入れるのはよい。

3.施肥

(1) 肥料の吸収特性
1) 総論
・着果期以降の養分吸収量は、各成分とも全吸収量の70%以上を占める。
2) 窒素
・ほ場の地力を考慮して窒素施用量を加減する。
3) リン酸
・自根の場合はリン酸に対する要求度は低いが、接ぎ木スイカでは育苗中や本圃の多施用効果が認められる。
4) カリ
・カリは吸収量が多く果実への配分量が多いことから、10a当たり20kg程度までは増収効果が認められる。
5) その他の要素
・カボチャ台のスイカの方がユウガオ台のスイカより石灰や苦土の吸収量が多い。
(2) 施肥設計
1) 考え方
・施肥量は10a当たり窒素9~12kg(基肥4~5kg)、リン酸15kg、カリ12kg(基肥8kg)程度である。
・なお、小玉スイカの窒素施肥量は、5~8kg程度で基肥重視(分施0~2kg)とする。
・基肥は緩効性の肥料を中心として、定植の7~10日前に全面施用してよく混和しておく。
・マルチ+肥効調節型肥料が理屈に合っている
・カボチャを台木とした場合は、徒長防止のため窒素の20~40%を減肥する。
・トウガン台のスイカは施肥量を減らすと養分吸収量が明らかに減少する。
2) 施肥設計(例)

 区分 肥料名 施用量
(kg/10a)
窒素 リン酸 カリ 苦土 備考
基肥 S827E 60 4.8 7.2 4.2 ・接ぎ木栽培(ユウガオ台木)
・草勢によっては着果後追肥を行う
エコロング413(70日) 35 4.9 3.9 4.6
合計 95 9.7 11.1 8.8 0.0

 

4.定植準備

(1) 畝立て、マルチ
・定植の1週間前に幅80cm、高さ20cmほどのベッドを作成し、マルチングして地温を上げておく(最低15℃以上)。
・マルチ下にはかん水チューブを入れておく。
・定植後の植穴かん水は地温を低下させるので、定植前に十分かん水して地温を上げておく。
(2) 栽植密度
・栽植密度は畝幅270~300cm、株間はハウスの場合45~50cm、露地トンネルの場合80~100cm程度とする。

5.定植

(1) 苗の状態
・本葉5葉前後の状態で定植する。
・若苗を定植すると活着が早く吸肥力が強いので草勢の調節がしにくい。
・生育が盛んになりやすい肥沃な土壌、火山灰土、水分の調節がしづらい露地栽培、トンネル栽培では、若苗定植は避けるべきである。
(2) 定植の方法
・定植は晴天の日に行い、できるだけ午後3時までに終わらせる。
・午後3時以降に定植した苗は、翌朝に霜害を受ける危険性が高くなる。
・深植えにしないことが重要である。

6.管理作業

(1) 温度管理
・日中は28℃程度、夜間は16℃以上を保つよう管理する。
・親づるの本葉8~10葉期(草丈50~70cmに伸びた頃)からは、最高30℃を目標に換気する。
・換気を開始すると乾燥しやすいので、根の浅い畑では日中葉のしおれる前にかん水する。
(2) かん水管理
・スイカは本来深根性の作物であるが、一般に分布が浅い。
・初期の根張りを十分にすると、根群が深くまで伸長するので乾燥害を受けることが少なくなる。
・生育期間を通じ必要な養分や水分を吸収するためには、根群が深くまで分布していることが必要である。
・着果まではやや水分を控えて根の伸長を図り、着果後はかん水量を増やしていく。
・着果後25日頃までに果実の大きさが決まるので、着果を確認したらかん水を十分に行う。ただし、一度に多量のかん水は避ける。
・果実肥大初期のかん水が不足すると、果実の肥大が制限されるばかりでなく、変形果の発生も多くなる。
・着果後26日頃からかん水を控えていき、収穫10日前からは行わない。
(3) 仕立てと整枝
・本葉5~6葉で摘芯し、子づる3~5本仕立てとする。
・各節より発生した子づるが40~50cmになったとき、3~5本を残して仕立てる。
・同時に子づるのわき芽(孫づる)を除き、株元に引き戻しておく。
・つるの間隔は、20~30cmとする。
・つるは一方向(片側)に揃えて配置すると着果位置が通路の近くに揃うので、摘果、玉直しなどの作業が効率的に行える。
・その後も、着果するまで(着果節位まで)孫づるを除去し、つるの間隔、位置を適正にして光合成の効率を高めるようにする。
(4) 草勢判断
・開花期までに肥効が現れすぎて草勢が強くなりすぎると着果が不安定となる。
・日照不足、多湿などの気象条件で草勢を強く育てると、予定した節位に着果させることができない「つるぼけ」の生育相となる。
(5) 受粉
・スイカは、自然条件下では他花受精で虫媒花である。
・したがって、ミツバチなどを導入し安定着果を図ることが重要である。
・人工交配は低温、曇天などのために訪花昆虫が少なかったり、活動しない場合やつるぼけなど不良条件下に確実に着果させるために行う。
・花粉の発芽適温は23~27℃で、38℃以上や15℃以下では発芽が困難となるので、温度管理に注意する。
・交配は晴天日の午前7~9時に花粉の出方を確認して行う。
・交配時間が遅れると、花粉が少なく受精率が低下する。
・交配は1本のつるに1~2花が短期間に咲く頃、当日開花した雄花を採取して花弁をとり、開いた葯を直接柱頭にこすりつける。
・1つの雄花で3~4花の雌花に交配できる。
・1株3果を目標に一斉着果できるようにする。
(6) 着果と摘果
・着果節位は気象条件、栄養条件によって異なる。
・子づるの15節前後で、株元より1.5m以上離れた節位に着果させることが望ましい。
・雌花の着く間隔は3~8節のものが多い(平均4~5節)。
・このため着果させる節位は、2番目の雌花群となる。
・低節位に着果させたものは、果形が悪く空洞となり果皮も厚く、品質の悪いものが多くなる。
・目標着果節位に着果を確認したら1本につき1果を目安に、余分な果実は摘果する。
・収穫期判定のために、果実がテニスボール大(着果後7日頃)になったら着果棒を立てる。
・着果棒は色を変えて2~3日おきに実施する。
(7) 分施(追肥)
・着果後の吸収量の増加に対応するために、玉肥と呼ばれる追肥を行う。
・着果揃い後に窒素4~8kg(小玉スイカの場合は0~2kg)、カリ4kg程度の分施を行う。
・通常、着果後できるだけ早く追肥を行うが、基肥の施用を抑えた場合や草勢が弱い場合は着果前に施すこともありうる。
・窒素過多は、着果不良や変形果・空洞果発生の原因となるので、つるの状態から施用量を加減する。
(8) 玉なおし
・果実がソフトボール大になったら、横向き果や土やマルチに密着している果実を敷きワラなどの上に正座させる(1回目の玉直し)。
・収穫7~10日前に果実を横にし、接地部を緑化させる(2回目の玉なおし)。

7.主な病害虫と生理障害

(1) 病害
・北海道において注意を要する主な病害は、うどんこ病、菌核病、炭疽病、つる割病、つる枯病、半身萎凋病などである。
(2) 害虫
・北海道において注意を要する主な害虫は、アブラムシ類、ウリハムシ、コオロギ類、ダニ類、ハモグリバエ類などである。
(3) 生理障害
・主な生理障害は、黄帯果、急性萎凋症(葉枯れ症)、たなおち果、肉質悪変果,葉枯れ症、変形果、葉縁黒枯れ症、葉脈間褐変症などがある。

8.収穫

(1) 収穫適期
・北海道では受粉後45~55日(積算温度1,000~1,050℃)で収穫期となるので、着果棒によって果実のおおよその収穫適期を判断する。
(2) 収穫方法
・外観的判定としては、①実の肩の部分が張ってくる、②果面の光沢、果梗部の毛茸がなくなる、③結実部の巻ヒゲが黄化する、④果実のへたの部分が少しへこむ、⑤果実を打つとにぶい濁音に変化する、などがあるが必ず試し切りを行い、糖度、果肉質、空洞などを確認してから収穫する。