スイートコーンの栽培

Ⅰ.スイートコーンの概要

1.スイートコーンの導入

(1) 栽培面での特徴
・一般野菜との関連病害がないことから、輪作の一環として取り入れやすい作物である。
・養分吸収力が非常に強いため、養分が過剰に蓄積しているハウスや多肥栽培作物の後作として導入することにより、土壌養分や塩基のバランスを良くする。
・還元可能な有機物の量が多く(2~3t/10a)、地力増進に効果がある。
・深根性であり、土壌の団粒構造など物理性の改良を促進する。
・病害虫や雑草抑制効果もあるため他の輪作作物の安定多収をもたらす。
・栽培面でのポイントは、異品種とは300m以上離して栽培すること、地温を確保すること、肥料の濃度障害に気を付けること、作物生理に合わせた追肥を行うことである。
(2) 経営面での特徴
・作付面積、収穫量とも大きな変動のない安定した栽培環境で、近年、消費者の嗜好性が高まっている野菜である。
・輪作体系の一翼を担う重要な作物で、経営内での位置づけは高い。

2.来歴

・スイートコーンは、とうもろこしの中の甘味種に属するイネ科の植物である。
・原産地はメキシコから南アメリカ北部にかけての地域で、栽培の歴史は米や小麦と同じくらい古く、紀元前7000年頃には穂軸が小麦の穂ほどのものを栽培していたとされている。
・その後改良され、それまで焼畑農業で放浪していた人達が部落を作って定住し、とうもろこし畑を栽培するようになり、早くから南北アメリカ大陸で重要な作物になっていた。
・ヨーロッパへは、コロンブスが粉や飼料用にしているのを見て、1492年にキューバからスペインに持ち帰ったのが最初で、そこから世界各地に広まった。
・日本には、1579年(天正7年)、ポルトガル人によって甘味の少ないフリント種が長崎に伝えられた。
・わが国のスイートコーン栽培の歴史は浅く、明治37年、ゴールデンバンタム種が導入されてからであり、本格的には終戦後の昭和24年、アメリカからゴールデンクロスバンタムが導入され、昭和40年代にスーパースイート種のハニーバンタムの導入により全国的に栽培が普及した。
・最近は糖度の高いスーパースイート系品種が栽培の主流になっている。
・なお、とうもろこしの名前は、中国の「もろこし」という植物に似ていたことが由来とされ、舶来品によく使われていた「唐(とう)」の文字を加えて「とうもろこし」となった。

3.分類と形態的特性

(1) 分類
・イネ科トウモロコシ属の一年生植物である。
(2) 根
・根は深根性で、草丈と同程度以上の深さまで伸びる。
・一般的には生育初期に横方向に浅く形成され、生育の進行に伴ってしだいに斜め下方に広がり、最後に直下方向に広がる。
(3) 花芽分化
・短日・低温で花芽分化・開花が促進されるが、実栽培においては温度の方が重要である。
・雄穂は本葉5~5.5枚頃に分化し、雌穂は雄穂分化の10日後、葉数7~8枚頃に分化する。
(4) 開花と結実
・典型的な風媒花である。
・雄花が開葯して、花粉が飛散し始めてから1~3日後に絹糸が抽出して受粉が行われ、約24時間で受精が完了する。
・同一ほ場で受粉から受精完了まで7~10日間程度を要するため、品質低下のリスクを小さくするため生育の揃いをよくすることが重要である。
・スイートコーンは、異形質品種の花粉を受けて受精すると品種固有の粒質を失い品質が低下する(これをキセニア現象と呼ぶ)ので、異品種とは300m以上(ほ場が防風林で囲まれている場合は150m程度)離して栽培することが必要である。

4.生育上の外的条件

(1) 温度
・種子の発芽温度は最低7~8℃、最適25~30℃、最高40℃で、は種してから出芽するまでの日数は土壌水分や温度で異なり、10~13℃で18~20日、15~18℃で8~10日、21℃では5~6日となる。
・発芽後の生育適温は22~30℃で登熟期の夜温はある程度低い方が良く、15℃前後が望ましく、日較差10℃以上の時に甘みの強い物が生産できる。
・35℃以上の高温、12℃以下の低温は花粉の受精能力を低下させるため、実入りが悪く品質が低下する。
・地温は最低でも13~14℃以上必要で、地温が低いと発芽及び生育が非常に悪くなる。
(2) 水分
・水の要求量は生育ステージによって異なる。
・発芽から本葉3枚までは乾燥と過湿に弱い。
・節間伸長期から水分要求量が高まり、最も必要とするのは開花~受粉を中心とする10日間である。
・この期間の水分不足は穂の形成不良、花粉量の減退等、受精障害を起こしやすい。
(3) 光
・野菜のなかではめずらしい、光の利用効率が非常によいC4植物である。
・C4植物の能力は特に強光条件下の光合成で発揮される。
・そのため水分が十分であれば日射量が多いほど多収が期待できる。
(4) 土壌
・比較的土壌適応性は広いが、土壌pHは6.0~6.5が適し、作土が深く排水の良好なほ場を好む。
・堆肥の投入効果が高く、腐植に富んだほ場で良い物が生産される。

5.品種

・北海道で作られているスイートコーンの主な品種は次のとおりである。
(1) ゆめのコーン(サカタ)
・甘味が強く、粒皮がやわらかな食味に優れた黄色と白の中生バイカラー品種
・熟期は「ピーターコーン」と同程度の中生で、草丈は「ピーターコーン」よりやや低く、倒伏に強い。
・雌穂のサイズは2L程度で先端不稔がほとんどなくよく揃い、秀品率が高い。
・黄色粒の色はレモンイエローで光沢が強く、甘味の強さと非常に柔らかな粒皮が特徴で食味が特にすぐれる。
・粒皮の硬化、甘味の低下が遅いので収穫適期の幅が広い。
(2) 恵味86(清水種苗)
・甘味が強く、粒皮が柔らかな、食味に優れた中早生イエロー種
・草丈は180cm程度、倒伏にも比較的強い。
・雌穂はサイズ2L程度で先端不稔がほとんどなくよく揃い、秀品率が高い。
・粒の色はレモンイエローで、甘味の強さと柔らかな粒皮が特徴。
・粒皮の硬化、甘味の低下が遅いので収穫適期の幅が広い。
(3) ゴールドラッシュ(サカタ)
・糖度が高く、粒皮がやわらかいので生のままでも食べられるイエロー系早生品種。
・先端不稔が無く2Lサイズで安定して収穫でき、発芽や低温伸長性がよいのでトンネル栽培など早い作型からでも安心して栽培できる。
(4) 味来390(パイオニア)
・甘味が強くて粒皮がやわらかく、生で食べることもできるイエロー系中早生種。
・包皮の色が濃く先づまりが良好、果皮色は淡く、粒列は14~16条でやや小ぶりである。
・果粒内糖度が高く澱粉質が低いため、発芽率がやや低めなので一穴当り3粒播種で欠株を防ぐ。
(5) ピュアホワイト(雪印)
・甘みが強く皮も柔らかい、白粒色の中早生種。
・先端まで良く実が入る。

6.作型

・北海道での主な作型は次のとおりである。
(1) 半促成
・3月中旬~3月下旬は種、4月上旬~4月中旬定植、6月下旬~7月上旬収穫
(2) トンネル(移植)
・4月下旬は種、5月上旬定植、7月中旬~7月下旬収穫
(3) 露地(直播)
・5月上旬~6月中旬は種、8月上旬~10月上旬収穫

Ⅱ.スイートコーンの栽培技術

1.育苗

・ハウス促成栽培や露地トンネル栽培などで早期出荷を目的とする場合は育苗を行うことが望ましく、直播栽培においても補植は育苗したものを使用する。
(1) 育苗容器
・育苗はペーパーポット(V5号等)または128穴セルトレイを利用する。
(2) 種まき
・覆土は、種子が見えるか見えない程度に薄くする。
・とがったヘソを下にしてまくと発芽率が向上する(特に強甘味黄粒種で有効)。
・ペーパーポットでは1穴当たり2粒播種し、出芽が揃ったら早めに1本仕立てとする。
(3) 発芽
・食味のよい品種ほど種子の貯蔵でんぷんが少ないので、発芽力が弱い傾向にある。
(4) 定植までの管理
1) 温度管理
・出芽までは温度を30℃程度に高める。
・積算温度130~180℃で出芽する。
・出芽後は気温を日中25℃、夜温15℃程度で管理する。
2) 育苗日数
・育苗日数は、15日(葉数 2.5枚)程度とする。
・育苗日数が19日以上の苗では、根鉢が巻き過ぎて活着が遅れ、草丈が低いまま収穫を迎えることがある。

2.畑の準備

(1) 適土壌と基盤の整備
・キセニアによる品質低下を避けるため、風向きに注意し、異品種とは300m以上離す。
・土壌に対する適応性は広いが、深根性なので耕土が深く肥沃な土壌が適する。
・また、過湿には弱いので排水対策を図る。
(2) pHの矯正と土壌改良
・土壌pHは6.0~6.5が適する。
(3) 堆肥の施用
・堆肥の施用は、スイートコーンではリン酸肥効の向上、養分供給源としての役割が期待される。
(4) 輪作
・病害虫や雑草の抑制効果もあるため、他の輪作作物の安定多収をもたらす。

3.施肥

(1) 肥料の吸収特性
1) 総論
・野菜類の中では、吸肥性の強い少肥作物である。
・耐肥性が高く吸肥力は強いが、発芽から本葉3枚までは肥料の濃度障害が発生しやすい。
・肥料ヤケは、特に低温年に発生が多くなる。
・低温年ではアンモニア態窒素から硝酸態窒素への変化が遅いために、アンモニア態窒素が集積して濃度障害が発生しやすくなる上に、低温によって根の生育が弱まり、肥料ヤケを受けやすい状態となるからである。
・スーパースイートコーンは発芽時、稚苗時に肥料焼けを起こしやすく、回復力も弱い。
2) 窒素
・窒素については、肥料ヤケがおきないよう基肥+追肥体系を基本とし、全量基肥で施用する場合はロング肥料などを組み合わせる。
3) リン酸
・全層施肥では、作条施肥と比較して肥効が劣るためリン酸を増肥する。
4) カリ
・カリは、作条施肥も全層施肥も同量でよい。
5) その他の要素
・苦土は、基肥に3~4kg/10a含まれていれば欠乏の心配はない。
・苦土欠乏の症状が発生したときは、1~2%の硫酸マグネシウム液の葉面散布を行う。
・亜鉛欠乏症の出やすいほ場では、あらかじめ基肥に硫酸亜鉛を混ぜて施用する。
・亜鉛欠乏の症状が発生したときは、硫酸亜鉛と生石灰の0.5%混合液を葉面散布する。
(2) 施肥設計
1) 考え方
・全層施肥した場合は、初期の養分吸収が不十分で生育が緩慢になり、雑草が繁茂することが多い。
・ハウス促成栽培やマルチ栽培では、作業体系上、全面全層施肥とする。
・それ以外の栽培では、窒素やリン酸の肥効や効率性の点から作条施肥(種子と肥料の位置を3~5cm程度離す)が望ましい。
・初期の生長力が劣るので、窒素とリン酸はともに早期に吸収されるようにする。
2) 施肥設計(例)
例1

 区分 肥料名 施用量
(kg/10a)
窒素 リン酸 カリ 苦土 備考
基肥 S380 70 9.1 12.6 7.0 2.8 ・追肥は、本葉4~8葉期に畝間中央に施用する
追肥 硫安 25 5.3
合計 95 14.4 12.6 7.0 2.8

例2

 区分 肥料名 施用量(kg/10a) 窒素 リン酸 カリ 苦土 備考
基肥 IBS482 100 14.4 18.0 12.0 4.0 ・追肥省略型
合計 100 14.4 18.0 12.0 4.0

 

4.定植準備

(1) 畝立て、マルチ
・スイートコーンは低温時に発芽不良が発生しやすく、地温が低いと生育が不良となる。
・発芽率の向上による欠株の防止や初期生育の促進、倒伏防止や収穫時期を早めるため、原則マルチ栽培とする。
・早まき栽培では、透明ポリマルチを用い地温の上昇を図る。
・遅まき栽培で地温の確保ができる時期は、雑草の発生防止のため黒ポリマルチを使用する。
・栽培後の省力化を図る場合は、生分解性マルチを利用するとよい。
(2) 栽植密度
・畝幅75~90cm、株間30~45cmで、早生種は密植に、中~中晩生種ではやや疎植にする。
・生食用の場合は、穂の先端まで身が入り大きいものほど市場価値が高いので、収量性は多少劣っても、穂の充実したものを生産することを優先する。

5.定植

(1) 苗の状態
・128穴トレイなどで播種後15日程度育苗した、永久根発生前の本葉2~3葉ころの苗を定植する。
(2) 定植の方法
・できるだけ根を切らないように定植する。
・特に一番太い種子根を切断すると、その後の生育に著しく影響するので注意する。
(3) 直播の場合
1) 時期
・露地栽培での播種時期は、平均気温が15℃になる時期を基準に、その7~10日前から可能である。
・特に、スーパースイート系品種は、低温・過湿や乾燥により発芽に日数がかかると発芽率が低下しやすいので注意する。
2) 方法
・マルチ栽培の場合、欠株を防ぐために1株2~3粒は種する。
・は種深度は、3cm程度とする。
・この深さにしておくと、4葉期過ぎまで生長点が土中にあるため、この時期までに霜害にあっても収量・品質への影響を回避できる。
・浅まきは乾燥等による発芽不良、深まきは二段根の発生など生育の遅れにつながる。
・穴なしマルチの場合は、高温障害を避けるために出芽が始まったらすぐにナイフなどで十字に切れ目を入れ、茎葉を露出させる。
3) 間引き
・2~3葉期に生育の揃ったものを残して間引き、1株1本仕立てにする。
・これより葉齢が進んでからは、引き抜くと残した方の根を傷める恐れがあるため、ホーなどで生長点の直下を切る。

6.管理作業

(1) 温度管理
・トンネル栽培で問題になるのは、日中の高温管理である。
・最高気温が35℃以上にならないように十分注意する必要がある。
(2) かん水管理
・幼穂形成期以降急激に生育が進み、水分を多く必要とするのでほ場の乾燥状態に注意する。
・絹糸の抽出から収穫までの20~25日間は、十分かん水して雌穂の肥大充実に努める。
(3) マルチの除去
・マルチ栽培のフィルムの被覆効果は草丈が30~50cmまでの時期で、収穫まで放置すると除去することが困難となるので、この頃に除去する。
・フィルム除去後分肥を行い、中耕(軽培土)する。
(4) 中耕・除草
・中耕は土壌を膨軟にして根の発達条件を良好にし、分肥後に行うと窒素を土に混和させて吸収を促す。
・低温湿害時には、早期にやや深めの中耕を行うと生育の回復が早く効果が高まる。
・断根によるデメリットを回避するため、中耕は7~8葉期までに切り上げる。
(5) 追肥
・窒素の全施用量のうち約40%量を4葉期~幼穂形成期(6~8葉期)に施用する。
・施肥位置は株元でなく畦間に施用し、軽く中耕する。
・マルチ栽培では、マルチ除去後(草丈30~40cm頃)に施用する。
・また、雄穂出穂期にも追肥を行えるが、効果は4~8葉期より劣る。
(6) 除げつ
・分げつには、根量が増えるために葉面積が多くなり、同化養分が増え、穂の肥大が優れ、先端不稔も少なくなったり、倒伏防止の効果や分げつの雄穂からも花粉が供給され受粉期間が長くなるなど様々なメリットがあることから、基本的には除げつは行わないようにする。
・中生~晩生品種で薬剤散布や収穫作業を効率的に行いたい場合や、砂質土壌で蒸散量を少なくおさえたい場合には、意図的に除げつする場合もある。
(7) 除房(除穂)
・除房は、主稈の葉身や葉鞘に損傷を与え、第1雌穂の登熟や大きさに影響する。
・除房を行う場合は、できるだけ早い時期に葉などを傷つけないよう十分注意して第2雌穂以下を取り除く。
(8) トッピング(除雄)
・倒伏防止やアブラムシの被害防止を目的として、受粉後に雄穂を含む稈の上部を除去する作業をトッピングという。
・トッピングは、やり方によっては減収する場合があり、労力も要するため、倒伏の心配が少ない地域では実施する必要はない。
・倒伏しやすい条件では、倒伏による減収や品質低下が大きいので、着雌穂節位葉を含めて3葉程度残すようにしてトッピングを行う。
・時期は絹糸抽出期後10日目頃で、生育が不揃いの場合は少し遅らせるようにする。

7.主な病害虫と生理障害

(1) 病害
・北海道において注意を要する主な病害は、褐色腐敗病、褐斑病、黒穂病、ごま葉枯病、すす紋病、倒伏細菌病などである。
(2) 害虫
・北海道において注意を要する主な害虫は、アブラムシ類、アワノメイガ、トビイロムナボソコメツキ、マキバカスミカメなどである。
(3) 生理障害
・主な生理障害は、亜鉛欠乏症、オニオンリーフ、キセニア、先端不稔、副房、ベアバウなどである。

8.収穫

(1) 収穫適期
・収穫適期は、絹糸抽出20~25日後を目安とする(絹糸抽出後の積算温度400~500℃)。
・外観的には絹糸が褐色に枯れ、果粒を指で押しつぶしたときに乳状とチーズ状の内容物が混じって出てくる時期である。
・他の作物に比べて、スイートコーンの収穫適期は非常に短いので、収穫時期が近づいてきたら外観をよく観察して試し取りを行い、適期収穫に努める必要がある。
(2) 収穫方法
・収穫は、品温の低い早朝収穫を原則とする。
・スイートコーンは、野菜の中でも特に呼吸熱が大きいため、収穫後の品質変化が著しく早く食味や風味が容易に低下する。
・収穫後は涼しい場所で選別し、できるだけ早く予冷して品質保持に努める。