GAPであなたの農業経営を変えてみませんか?
1.分類と形態的特性
(1) 分類
・エンドウは、莢がかたく実だけを食べる「実エンドウ」、エンドウを若どりして莢を食べる「サヤエンドウ」、莢と未熟な豆の両方を食べる「スナップエンドウ」の3種類に分けることができる。
・なお、エンドウの若い芽や葉を摘んだものが「豆苗」である。
(2) 根
・直根性の主根型で、主根が一本深さ1m以上に伸びるが、二次根は少なくあまり伸びない。
・根の発生量が少ないため、根を痛めないよう十分配慮する。
(3) 主枝、分枝
・発芽後主枝が30cmくらい伸びた頃から地際の下節位から分枝が伸び始める。品種間差異があるが、分枝は1株から2~3本発生し、これを「低節位分枝」と呼ぶ。
・主枝の伸長とともに主枝の上部からも分枝が発生し、これを「高節位分枝」と呼ぶ。高節位分枝は5~6本発生し、その上の節に主枝の第1花が着生する。
・「低節位分枝」からも同じように「低節位分枝」と「高節位分枝」が発生する。
・分枝数は品種や播種期によって異なるが、枝1本当たりの生産能力は、主枝>低節位分枝>高節位分枝の順に、早く発生した枝ほど高い。
・一般に、短日条件では総分枝数が多く、これに低温条件が加わると低節位分枝が多くなる。
・主要な分枝は地際部1~3節から発生し、とくに第2節から分岐したものが強勢である。
・低節位分枝(1~3節)が多いほど多収となる。
・強勢な品種では、分枝の数はおよそ8~15本である。
(4) 花器
・着花習性は、第1花は高節位の第1分枝の直下節につき、以後連続着花する。
・早生種では第1花着生位置が低くなり、晩生種では高くなる。
2.生育上の外的条件
(1) 温度
・生育適温は15~20℃で、10℃以上あれば順調に生育する。ただし、-2℃以下になると生長点付近の葉まで寒害を受け、ついには心止まりとなる。
・地温に対しては、野菜の中で最も低温伸長性が高く、0℃でも多少伸長する。
・開花・結実の適温は14~18℃で、5~20℃であれば正常に行われるが、5℃以下に低下してくると開花数が減少し、2℃以下では結実障害を生じ、莢が寒害を受ける。20℃以上では胚珠数が減少し、気温が25℃以上になると受精能力が低下し結実不良となる。
(2) 発芽
・発芽適温は18~20℃で、4日程度この温度が続くと発芽始めとなる。低温の適応性が広く4℃でも30日以上かければ、80%前後の発芽歩合を示す。
・30℃を超えると発芽が劣り、種子の腐敗が多くなる。高温限界温度は35℃である。
(2) 水分
・酸素要求量(25%以上)が野菜中で最も高いので、停滞水などで酸欠状態にしない。
(3) 土壌
・排水良好な砂壌土~壌土が適し、かつ水分を維持できる土質がよい。
3.品種
(1) ニムラ白花きぬさや(みかど協和)
・草丈1.7m前後で節間は中、分げつはほとんどなく、草勢は極強である
・6~7節から着莢する極早生種豊産種
・莢長8cm、莢幅1.7cm、莢重1.7gで、くず莢がほとんど出ず秀品率が高い。
(2) ニムラ赤花きぬさや2号(みかど協和)
・草丈1.7m前後で節間は短く、分けつはほとんどなく、草勢は極強である
・6~7節から着莢する極早生種で、双なりが多い
・莢長8cm、莢幅1.8cm、莢重1.8gで、莢揃いと色沢がよく、曲がりやそりがない。
・莢の離脱がしやすく、収穫能率が上がる
(3) さつま白花(鹿児島県)
・草勢が強く、草丈がかなり高くなる(節数が多くなる)ので、追肥重点の肥培管理とする。
・栽植密度は、畦1m当たり60本程度が適当である。
・播種から開花までの日数は、ニムラ赤花きぬさや2号と同程度である。
・収量性は、ニムラ赤花きぬさや2号、初姫に比べ同等以上で多収である。
・莢幅、厚さはニムラ赤花きぬさや2号と同程度であるが、長さが7㎝前後(L莢)で一莢重が軽く、そり、うねりの発生が少なく品質が高い。
(4) 美笹(アサヒ育成)
・播種後約50日で収穫始めとなる超極早生品種で着莢性がよく、初期収穫も優良品が多く長期安定した収穫ができる。
・双莢性が強く長さ5〜6cm幅1.4〜1.6cm、2g程度の形状で揃いが良い。
・「そり」や「曲がり」がほとんどなく軟莢度が高く風味食味ともに優れ市場性が高いです。
・片手で取りやすく、収穫面でも評価が高い。
(6) オランダ
・濃緑色の大莢で、分枝数が多く、生育旺盛な中生品種
・草丈は2mほどとなり着莢性は複花性で、12~13節目から良い莢が収穫できる豊産種。
・莢長13cm、莢幅2.5cmくらいの大莢で波打莢の発生少なく品質は良い。
(7) ニムラサラダスナップ(みかど協和)
・莢ごと食べるスナップタイプの極早生品種。
・着莢節位が低く、分枝の発生が少なく、着莢性がよい。
・短節間で多節数が確保され、双莢率が高い。
・大莢、濃緑で揃いがよく、秀品率が高い。
(8) スナック753(サカタ)
・スナップタイプの極早生品種。
・耐寒性強く、着莢節位が低く、分枝の発生はやや多い。
・莢色が濃く、肉厚の大莢で子実がよくふくらみ、食味が良い。
4.作型
(1) 秋まき(露地)(ハウス)
・9月中~10月上旬播種、11月上旬~4月下旬収穫
5.畑の準備
(1) 適土壌と基盤の整備
・排水良好な壌土が適し、かつ水分を維持できる土質が最適である。砂質土壌では生育後半が弱りやすい傾向にある。
・耕土の深いほ場の選定や深耕、高畝による排水対策が重要である。
・酸素要求量が高い作物であることから、排水不良地では根腐れをおこしやすく、枯れ上がりも早くなりやすいので、20cm以上の高畝栽培とし明渠・暗渠等を整備する。
(2) pHの矯正と土壌改良
・好適pHは6.5で、酸性土壌に弱い。
・また、リン酸吸収係数の高い土壌では生育が劣るので、リン酸、土壌改良材を施用しておくことが必要である。
・播種の2週間前までにpH等の調整を行っておく。
(3) 堆肥の施用
・前年秋に完熟堆肥3~4t/10aを施用し、深耕することにより有効土層の拡大と物理性改善を図り、十分な根張りのできる環境を整えておく。
(4) 輪作
・サヤエンドウは連作すると茎葉が黄化したり、主枝や側枝の伸長が抑制され、草丈が短くわい化したりして、早く枯れるようになる。
・これらの障害やいや地現象が出やすいので、最低でも5年以上輪作する
(5) 土壌消毒
・盛夏(7月中旬~9月上旬)に太陽熱消毒するか、連作をする場合は、クロルピクリン剤等による土壌消毒を行う。
(6) 畦立て、マルチ
・土壌消毒を行ない、基肥を施肥した後、畦立てを行う。
・畦幅は品種によって異なるが、畦幅が1.5~1.8mの場合は、畦の広さは40~60cm、畦の高さは15~20cm程度が適当である。
・酸素要求量が高い作物なので、排水の悪い圃場では20cm以上の高うねとする。
・作畦後にマルチをする。秋まき栽培では、地温が低いので、黒色マルチを用いて地温の確保と雑草の防除に努めるとよい。
6.施肥
(1) 肥料の吸収特性
1) 総論
・サヤエンドウの養分吸収量は、作型や品種によって異なるが、10a当たりの収量が1tとすると窒素16.5kg、リン酸6.0kg、カリ12.0kg程度である。
2) 窒素
・エンドウの花芽分化は播種後間もない時期であり、根粒の着生はまだ不十分な時期であることから、初期の窒素施肥の効果が有効とされている。ただし、窒素の過多は根粒着生を遅らせ、節間が伸びて徒長を招く。
・したがって、基肥窒素は、根粒菌の着生を促しつるぼけを防止するため、多施用しない。
・窒素の効きすぎで、過繁茂になると開花や収穫時期に遅れがみられ、落花による収量減にもつながる。
・開花期から収穫期の窒素不足は枯れ上がりを早くし、収量減となるので、継続した窒素の供給が重要である。
3) リン酸
・リン酸は、生育初期に発根や分枝の発生を促すため、幼苗期に根圏内に施用するのが最も効果的である。
・リン酸とカリは肥効が高いため多めに施す。
4) カリ
・カリが不足すると、徒長や不結実の原因となるので、生育の中期以降カリが不足しないように施肥を行う。
・カリは徒長を抑え耐寒性、耐病性を強める。
(2) 施肥設計
1) 基肥
・土壌消毒を行うと肥効が高くなりがちであるので、基肥を少なくし、追肥重点の施肥を行う。
・夏まき栽培では、10a当たり窒素10~15kg、リン酸15~20kg、カリ15~20kg程度とし、元肥には窒素の40%、リン酸の全量、カリの50%を施す。
・秋まき栽培では、10a当たり窒素7~10kg、リン酸10~15kg、カリ15~20kg程度とし、元肥には窒素とカリの50%、リン酸の全量を施す。
【ハウス栽培】
・ハウス栽培では、収穫期間が長く収量も多くなるため露地栽培より増し、10a当たり窒素15~25kg、リン酸20~25kg、カリ20~25kg程度とする。元肥には窒素とカリの30~40%、リン酸の全量を施す。
・土壌消毒を行なうと、肥効が高くなりがちで、さらにハウスでは、前作の肥料成分が残っていることもあり、過繁茂になりやすいので、元肥を少なくし、追肥重点の施肥を行なうこととする。
2) 追肥
・追肥は、畦肩に深めの施肥溝を切って施す。
・第1回目は、花芽分化時期(は種後1ヶ月頃)に、双莢率の向上をねらって窒素成分量で3~4kg/10a施用する。
・第2回目は、最初の花が見え始める頃に、初期収穫量の確保をねらって窒素成分量で2~3kg/10a施用する。
・第3回目以降は、第2回目の追肥より10~15日間隔で草勢維持を目的に実施する。
・液肥で追肥する場合は、1回当たり窒素成分量で0.5kg前後/10aを4~5日間隔で施用する(1回当たりの上限窒素量は1kg/10aとする)。
・樹勢が衰えると収穫位置が高くなり、花びらに勢いが無くなる。
・また、さやが曲がったり、着色不良になり、うどんこ病も発生しやすくなる。
・樹勢を維持するには、物理性が整っている前提で追肥を行う。
・1花着果では双莢より長い大莢になりやすい。
7.播種
(1) は種方法
・播種量は、10a当たりの目標枝数を基本に考え、分枝の多少等によって品種ごとに決める。
・主枝1本仕立てや主枝+下節位1本仕立てなどのように強整枝して仕立て本数を少なくする場合は種子量を増やす。
・種子消毒をした後、処女地や土壌消毒圃場では必ずえんどう用根粒菌を接種してから播種する。根粒菌を直射日光に当てないようにして少量の水に溶かし,播種直前に種子にまぶす。
・播種は、一穴当たり2~3粒まきとし、2cmくらい覆土し十分鎮圧する。
・土壌が乾燥している場合は、は種後にかん水する。
・高温期の作型は、分枝数が減少するので播種量を多くする必要がある。
・なお、マメ類の種子は胚乳がほとんどなく、種子の中で子葉が大きく発達した無胚乳種子で、乾いた種子を浸漬すると急激に吸水して子葉に亀裂が起こって発芽が悪くなるので注意が必要である。
(2) 栽植密度
・莢エンドウは短期間に若莢で収穫すること、莢が枝の上部につき莢が着生している部分の受光態勢がよいことから、やや密植して栽培する。
・莢エンドウの栽植密度は、単位面積当たりの有効枝数を基本に考え、分枝の多少によって品種別に計算して決める。
・一般に、収量を高めるための最適枝数は10a当たり30,000~50,000本(絹莢エンドウで40,000本,オランダエンドウで24,000本前後)が適当とされている。
・莢エンドウの畦幅は、品種の草丈に応じて決め、半わい性の絹莢エンドウで1.5m、オランダエンドウや高性の絹莢エンドウで1.8mを目安とする。
【ハウス栽培】
・絹莢エンドウのハウス栽培では、ハウスの間口の広さからみて畦幅は130~150cmとする。
・品質の向上のため強整枝を行ない、株当たりの枝数を制限して株数を増やす傾向にあり、露地栽培よりも弱日射のため10a当たり枝数を少なくする目的で特に、ハウス栽培での株数は露地栽培よりもやや少なめにする。
8.管理作業
(1) 間引き
・播種から5~6日で発芽が始まる。子葉は地下に残り、地上部には出てこない。
・草丈9cm位になるまでの間に、1穴2本になるように間引きを行う。
・間引きの際は、引き抜くと隣の株が痛むので、根元からハサミで切り取る。
(2) 支柱立て、誘引
・間引き後、速やかに30cm程度の仮支柱ネットを張って、茎葉が倒れないようにする。小竹を用いてもよい。その後、仮支柱の上まで枝が伸びたら本支柱を立ててネットを張り誘引する。
・支柱は、基本的にはうねの真ん中に2~3m間隔に立てるが、露地の夏まきなどの作型では収穫期が台風シーズンと重なるため間隔は狭くする。
・誘引ネットはエンドウネットかキュウリネットを用い、露地栽培のネットは、高性品種の場合はハウス栽培同様180cm程度に張るが、わい性品種では150cmほどでよい。
・ネットを用いる場合、1面張りと2面張りがある。畦幅が広く、枝数が多い場合は2面張りがよい。2面張りの場合、ネット同志の幅は20~30cmとする。
・本支柱が1面張りの場合、ネットを中心に両方に枝を分ける。生育にしたがって20~30cmごとに誘引用テープを先端部付近で横に張り、枝の乱れや垂れ下がりを防ぐ。
・ネット1面張りの場合は、ネットの両側に枝が均等になるように振り分ける。2面張りの場合は、ネットとネットの間に枝が入り込まないように両ネットの外側に誘引する。
・生育後半になると通路に茎葉が繁茂するので、中段あたりに30~40cm間隔で横ひもを張り固定する。
・テープをネットにきつく押さえつけると、つるがネット面に集中し、通風や受光が悪くなり、落莢が多くなったり、着莢しても欠粒莢が発生するなど品質が低下するため、余裕をもって張るとよい。
・つるはネットの表面だけでなく裏面にも伸びてくるため、テープはネットの両面に張る。
(3) 整枝
・7節前後に初花房が着くが、樹づくりを行う必要があるので、着莢開始位置は概ね13節(短期栽培では10節)を目安とし、それ以下の花房と側枝は除去する。
・整枝では,通風や採光をよくするために無駄な枝を除く。
・エンドウの分枝数は品種や播種期によって異なるが、枝の生産能力は、主枝>下節位分枝>高節位分枝の順で、早く発生した枝ほど生産能力が高いため、主枝と下節位分枝を有効に利用して能力の高い枝だけにし、高節位分枝などは除去する。
・畦の長さ1m当たりの最適枝数は絹莢エンドウで40~60本、オランダエンドウで40~45本である。そこで、開花始期に下節位分枝を中心に目標枝数を確保し、その後に発生する枝を摘除して密生を防ぐ。
・莢エンドウでも整枝本数を少なくすることにより、産性が向上する。主枝1本仕立てにする場合、分枝は早めに除去する。
・各枝は適当な間隔を保って整枝する。枝の間隔は5~15cmが適当で、この間隔に枝を整然と誘引し、各枝が同じ高さで伸びるようにする。
・季節風などで折れ曲がった枝はただちに誘引し、元どおりにする。
(4) 枝の引き下げ
・莢エンドウのハウス作型では摘心をせずに枝の引下げを行なう。
・引下げ時期は枝が支柱上部まで伸びたときで、1回目は12月下旬~1月上旬頃に行ない、2回目以降は枝が支柱上部まで伸びたときに枝の途中を持って軽く行なう。
・引下げは次の手順で行なう。①引下げ前にやや若い莢まで収穫する、②追肥をする、③灌水をやめて水を切る、④地際の枝を持ち、斜めに引き下げる、⑤引下げ後に十分灌水する、⑥下げ幅は30~50cmとする。
・引下げ後は収穫をしばらく休むことになるので、価格の変動を見はからって引き下げるようにする。
(5) かん水
・かん水方法は、畝間かん水とかん水チューブを利用した方法がある。
・かん水チューブを設置すると追肥と合わせて実施できる。
・草丈20cmくらいの時にかん水を行うと、根の働きを促し樹勢を整えることができる。
・広島農試の「キヌサヤエンドウの夏まき露地栽培での灌水点」(1986)によると、pF2.5に達した時点で10mm灌水することで、総収量、上もの率ともに最も高くなり、これは約1週間に1回の割合で灌水することになるとしている。
・和歌山農試(1985)は、「きしゅううすい」の場合、開花まではややかん水量を減らして生育を促進し、開花後はやや土壌水分が多くなるように維持し、収量増加に努める。「オランダ」では、生育および収量性から全期間を通じてpF2.6程度を維持するのが適当である。
・なお、開花期に樹勢が衰えていないのに、花が小さかったり花柄が細かったら水分不足と判定する。
(6) 温度管理
・キヌサヤエンドウでは、ハウスで長期間栽培を行なう場合、樹勢の低下が大きな減収要因となるため、管理温度は3℃とやや低めにするとよい。
・冬場でも、晴天時には日中のハウス内温度はかなり上昇するため、極力換気に努め、実エンドウ、サヤエンドウとも25℃を上回らないようにする。
・灰色かび病対策として、通常の晴天日での換気温度20℃を曇雨天日に15℃に下げ、換気を促進することにより、湿度の低下を図る。
(7) 草勢の維持
・子実が成熟する前に収穫するため、株への負担は小さくて済む。
・根が傷むと樹勢が弱ってしまうので、常に根の生育環境を考えながら肥培管理を行う。
・托葉が小さかったり花弁が細いとき、上位節の花数が減少したり主茎や一次分枝の先端部が細くなってきたときは、樹勢が弱っている合図である。
・一方、花がダブル(2莢)で大きく揃っており、花弁が反転している、茎がえんぴつ程度の太さになっている、托葉が大きく肉厚で、丸葉の3対葉になっている、つるの先端が大きく横向きになっている、キヌサヤの場合頂部から10cm下で、スナップの場合頂部から7節下で開花しているなどが、正常な生育のサインである。
・8~9節の莢の原基は発芽期であり、あまり良い莢は着かないので、樹勢を維持するため早めに除去する。
・また、長さがなくても幅があれば、子座不形成の成熟莢なので除去する。
・このようにして、なるべく株への負担を減らし草勢の維持に努める。
・草勢が弱まると双莢が少なくなり、さらに弱まると花飛びが起こる。
(8) 風害対策
・冬の季節風や春一番による枝の折損、莢ずれの被害を防ぎ、生育を促進させるためには、畑の周囲に防風垣またはダイオネットなどの防風網を設置する。
・防風垣や防風網の効果は高さの約3倍の距離まで至るので、防風網の風下にさらに防風網を設置するとさらに効果を高める。
・エンドウのうねは南北うねが理想的であるが、防風垣と平行にするとよい。
・気流の停滞による霜害を防ぐためには、防風網を地上30cmの高さから張る。
・夏から初秋に播種する作型では台風の被害を受ける危険がある。台風対策としては、幼苗期は防風網や寒冷紗を用いてべたがけや小型トンネルをし、周囲を土で押さえるのが最も効果的である。また、稲わらによる押さえや土寄せなども効果がある。生育が進んだものは、畑の周囲に防風ネットを張って風圧を弱めるとともに、畦の周囲を寒冷紗などで囲んで風を防ぐ。さらに支柱の補強や誘引も徹底する。
(9) 寒害対策
・秋まきの露地栽培では寒波の被害(特に霜害)を受けやすい。しかし、越冬時の草丈が低いほど耐寒性があり、幼苗期には-4~-7℃まで耐えられるとされており、寒波の被害は少ない。
・開花が始まると耐寒性が弱まり、着莢すると被害は大きい。
・生育中の茎葉は早春期に0~-4℃で激しい寒害を受け、春先の寒波によって花や莢の被害を受けやすい。そのため、寒害を受けにくいように圃場の選定や適作型の導入、低温性品種の導入などを行なう。
・寒波の被害を少なくするために、タフベルなどを支柱上部に棚状に張ると,効果がみられることがある。
・寒波の被害を受けた場合は、被害枝の更新、被害莢の除去、病害の防除などを行なって回復を図る。
・寒害を受けた莢は子実の肥大が悪く、実入りが少ない場合もあり、商品価値が劣るので、早めに除去する。
・事前の対策として、強い霜が予想される場合には腋芽かきを早くしすぎないようにして、予備の芽を確保しておく。強い霜にあったときは心止まりの危険性があるので、心が生きていることが確認されるまで(7~10日)腋芽かきをしない。
・主枝が心止まりになったときは、上節位からの側枝を利用するが、上節位の側枝がないときは下節位からの側枝を利用する。
・側枝を利用する場合は開花期間が短くなるので、1m間枝数を若干増やす。心止まりにならずに落花や落莢が多かった場合は4月以降も草勢が維持できるので、摘心をせずに収穫段数を確保する。
(10) ハウスのよる寒害対策
・ビニールの被覆は、地域の最低気温の旬平均が10℃を下回る頃を目安に行なう。年平均気温17℃の地域では11月中旬頃となる。被覆が早すぎると徒長や落莢を引き起こし,遅くなると低温害を受ける場合がある。
・昼間の温度管理は18℃前後を目標とし、20℃以上にならないようにサイド換気、肩換気で管理する。
・被覆当初はサイドを昼夜ともに開放する。夜間は最低5℃を目標に、3℃以下にならないように保温する。
・夜間の被覆方法には一重被覆(外ビニールのみ)と一重一層(外ビニール+内ほろカーテン1枚)、一重二層(外ビニール+内ほろカーテン2枚)被覆がある。
・一重被覆は外気温が0℃まで、一重一層と一重二層被覆(密閉)は外気温が0℃以下から-3.5~-4.0℃まで,無加温で寒害を防ぐことができる。
・0℃までの一重被覆の場合、夜間は密閉するより肩部分を10~15cmすかしたほうが寒害は軽い。
・なお、ビニールは、灰色かび病対策として、防霧性加工フィルムまたは紫外線除去フィルムを使用するとよい。
・霜の心配のない暖かい夜はハウスの肩を開けて換気する。できれば寒害防止のために補助的にストーブや暖房機で加温すると効果的である
9.主な病害虫
(1) 病害
・注意を要する病害は、ハウス栽培で問題となる灰色かび病、株全体が枯死に至る茎えそ病、草勢を低下させ枯れ上がりを早くするうどんこ病や褐紋病、褐斑病などである。
・発病適温は褐斑病が28℃、褐紋病が25℃で、水田転換畑の施設栽培では3月頃から褐紋病が見られ、露地栽培では褐斑病を中心に多雨年の4月以降に発生する。
(2) 虫害
・注意を要する害虫は、ウラナミシジミ,ハスモンヨトウ,シロイチモジヨトウ,オオタバコガ,ハモグリバエ類,アブラムシ類,ハダニ類,アザミウマ類などなどである。
・アブラムシの薬剤防除を9~10月と3~4月に行なう。
・ウラナミシジミ:10/上~10/下(11月一杯)
・ハスモンヨトウ:9~11月に多発
・オオタバコガ:7~10月に多発
・ナモグリバエ、ハダニ、アブラムシ類:春季に多発
・ヒラズハナアザミウマの防除は重要
10.収穫
(1) 収穫適期
・キヌサヤエンドウの場合、収穫適期は子実の大きさで米粒大、莢の長さ6~8cm、厚さ3mm以下の時である。
・開花から15日頃が一般的な収穫時期であるが、高温期では7日前後で適期となる。
・スナップエンドウの場合は、粒が十分にふくらんで、莢がまだ鮮緑色で外観のよい時に収穫する。
・温暖期では、開花後およそ20日位でこの状態になる。
(2) 収穫方法
・収穫時間は、朝どりとする。
・収穫後、莢の品温が高いと品質が著しく低下するので、速やかに予冷する。
・樹勢が低下するのを防ぐため、規格外の過熟莢や曲がり莢、老熟莢など商品価値のない莢も収穫に合わせて取り除く。