カブの栽培

Ⅰ.カブの概要

1.カブの導入

(1) 栽培面での特徴
・栽培面でのポイントは、団粒構造を発達させるような土づくりを行い、水はけ・水もちを良くし、乾燥・過湿を避けることと、発芽を均一に揃えることである。
(2) 経営面での特徴
・栄養が豊富で、漬物を中心に根強い人気がある野菜である。

2.来歴

・カブの原産地は諸説あり、地中海沿岸に自生する、アブラナ科の Brassica campestrisから生じたという説が有力で、北ヨーロッパ系とアジア系に分類される。
・栽培の歴史はヨーロッパでは紀元前の記載、中国でも華北、華南では紀元前770年頃の記載があり、少なくとも2000年前にはすでに食用されていた歴史の古い野菜である。
・わが国へは中国を経て伝わったものと、ヨーロッパから朝鮮半島を経由して渡来した二つの系統の説があり、中国を経て伝わったものは、関西を中心として聖護院カブ、天王寺カブ、近江カブ等として土着し、ヨーロッパから朝鮮半島を経由して渡来したものは、東日本に金町小カブ等として土着したとされている。
・中尾佐助はカブラインと称する作物渡来経路の境界線を提唱し、在来品種の和種系が西日本に、洋種系が東日本に分布し、その境界線は中部地方の西側付近であるとしている。
・栽培の歴史は古く、縄文時代後期には中部地方で焼畑により栽培されたとみられている。
・記録では「日本書紀」の持統天皇の条に栽培を奨励する作物として「蕪」という文字が登場し、「正倉院文書」に記されている「菁菜」や、「万葉集」に出てくる「蕪菁」もカブをさしている。
・奈良時代には蕪菁はアオナ、根をカブラと呼び、五穀を補う糧とされ、平安時代には重要作物のひとつになり、江戸時代には凶荒作物とされ、品種改良も旺盛で多くの在来種が作出され、現在もこれらの多くが地域野菜として親しまれている。

3.分類と形態的特性

(1) 分類
・アブラナ科アブラナ属に属する野菜である。
(2) 根
・カブの根は主根と側根、側根に着く多数の細根で構成されている。
・根部の肥大は葉数の増加に合わせて進行し、4葉期から胚軸部の肥大が始まり、ひげ根の着生点より上の部分が肥大する。
・食用に用いられるのは、下子葉部の胚軸とそれに続く根の中心柱が肥大した部分である。
・カブの根は縦方向に70cm程度、横方向に60cm程度伸びるが、大部分が地下約20cmの表土層に分布することから、わが国では、一般に根系の浅い野菜と考えられている。
(3) 葉
・カブの葉は8分の3の葉序で分化し展葉する。
・花芽分化前の葉は短縮した茎に叢状に着生し、根葉と呼ばれる。
・密植状態は葉の生育を旺盛にする。
(4) 花芽分化と抽苔
・カブは種子春化型の作物で、花芽分化には低温経過を必要とする。
・日長が抽苔に及ぼす影響は大きくはない。
・カブはある程度葉齢が進むと低温感受性が高まるので、春まきの時にはダイコンよりも抽苔することは少ない。

4.生育上の外的条件

(1) 温度
・カブは冷涼な気候を好み、15~20℃前後でよく生育する。
・高温条件下では葉は生育が旺盛となるが、根の肥大は劣るようになる。
・気温が24℃以上になると石灰、カリの吸収が急減し、リン酸、苦土も肥効が低下する。
・根部肥大の最適地温は13~20℃で地温が10℃以下では肥大が遅れ、25℃以上では壊死や奇形となりやすい。
・暑さと乾燥には弱いものの寒さには強いという特徴がある。
(2) 水分
・発芽時や根部肥大期には土壌水分が特に必要である。
・根部肥大期の乾燥後の急激な水分吸収は裂根の原因となるので、土壌水分が一定に保たれる土作りと水分管理が大切である。
(3) 光
・カブの光飽和点は5.5万ルクス程度で、陽性植物である。
(4) 土壌
・カブはダイコンのように深い耕土は必要としないので、ダイコンよりも土壌に対する適応性が広く、様々な土壌で栽培可能であるが、品質の良いきれいなカブが得やすいのは沖積土壌である。
・いずれの土壌でも有機質に富んで保水性がよく、肥沃なことが大切である。

5.品種

(1) カブの種類
・品種の数は実に豊富で直径5~6cm程度の小カブ、12cm程度の中カブ、15cmを超す大カブがあり、地方品種を含めると色は白、赤、紫、形は丸いものから長細いものまで幅広く存在する。
(2) 北海道の主要品種
・北海道で作られているカブ用の主な品種は次のとおりである。
1) 玉里(武蔵野)
・北海道で作られているカブの約4割を占める夏どりに適した極早生の品種である。
・草姿は立性で葉色がやや濃く、葉の大きさは中位、葉長は37~38cm位、球とのバランスが良い。
・根部は純白で光沢があり、厚みのある扁円形、根尻のまとまりが良く、ひげ根少なく、球揃いが良好でス入りは特に遅く、品質がよい。
・ウィルス病、べと病、細菌性病害に強い。
・肥料にかなり敏感な品種で、葉の徒長を抑え茎葉を丈夫に作るには株間を広めにとり、有機質を主体とした土作りが必要である。
2) 京千舞(タキイ)
・早太りでス入りの遅い大カブ専用品種。
・肌は純白で美しく、肉質は緻密で甘みに富み、繊維が少なく歯切れがよいので千枚漬に最適である。
・根こぶ病に安定して強く、生育旺盛で作りやすく、甲高で厚みのある玉に仕上がり収量性、秀品率とも高い。
3) 早生大蕪(タキイ)
・早太りでよく揃う、ス入りの遅い大カブ種。
・肌は純白で美しく、肉質は緻密で甘味に富み、繊維が少なくて歯切れがよい。
・生カブとしても千枚漬用としても市場性が高い。
・病害に強くて強勢で作りやすい。

6.作型

(1) 北海道での主な作型
1) 春まきハウス
・2月上旬~3月上旬は種、4月下旬~5月上旬収穫
2) 春まき
・4月中旬~4月下旬は種、6月中旬~6月下旬収穫
3) 春夏まき
・5月上旬~8月下旬は種、6月下旬~10月中旬収穫

Ⅱ.カブの栽培技術

1.畑の準備

(1) 適土壌と基盤の整備
・直根性作物なので作土深25cmを目標とし、適湿を保った土壌が最適で、連作とならない排水性の良い圃場を選定する。
・カブは保水性・排水性のよい圃場が欠かせない。
(2) pHの矯正と土壌改良
・酸性土壌やアブラナ科の連作ほ場では根こぶ病が発生しやすいため、前もって土壌診断を行い、pHを6.0~6.5に矯正する。
(3) 堆肥の施用
・完熟堆肥を適正量投入しておく(未熟堆肥は肌荒れの原因となるので投入しない)。

2.施肥

(1) 肥料の吸収特性
1) 総論
・小カブの要素吸収量は根菜類の平均値と比べてかなり少なく、10a当たり窒素6.4kg、リン酸2.8kg、カリ8.9kg程度である。
2) 窒素
・根部の肥大は葉数の増加に合わせて進行することから、小カブでは特に窒素栄養が重要である。
・窒素の欠乏による影響は、生育初期の2週間が根重に大きく影響する。
3) リン酸
・リン酸の吸収量は比較的多く、リン酸施用の効果が高いといわれている。
(2) 施肥設計
1) 考え方
・生育初期の窒素栄養を高め茎葉部を充実させ、以後は茎葉部からの窒素や同化生産物の転流によって根部を肥大させる。
・乾燥状態が続く場合、葉面散布し樹勢を回復させる。
・生育期間が比較的短いことから、施肥は元肥主体で行う。
2) 施肥設計(例)

 区分 肥料名 施用量
(kg/10a)
窒素 リン酸 カリ 苦土 備考
 基肥 NS262 100 12.0 16.0 12.0 0.0 ・茎葉の繁茂しやすい初夏まきでは、窒素を2~3割減ずる
合計 100 12.0 16.0 12.0 0.0

 

3.播種

(1) 時期
・播種期間は5月1日~8月25日が安全期間である。
(2) は種方法
・小カブ栽培は栽植密度が高く、発芽のそろいが収穫物のそろいに直結するので、発芽をそろえるよう心掛ける。そのためには、以下の点に十分留意する。
・種子量は10a当たりシードテープ1.5~2.0dl準備し、土壌水分が十分な時(降雨後等)に播種する。
・播種深度は1cm程度で、均一になるように行う。
・発芽がそろうまでは、畑が乾かないように均一に潅水を行う。
(3) 栽植密度
・栽植密度は条間・株間ともに小カブで15cm、中カブで20cm、大カブで40~45cmとする。
・やや広くすることで、蒸れによる病気の発生を軽減することができる。

4.管理作業

(1) かん水
・播種後は発芽不良にならないようにこまめにかん水を行う。
・乾燥を防ぐために白寒冷紗等による被覆を行うと効果的である。
・生育全般に乾燥が続くと肥大が不足したり肌ツヤが悪くなったりするので、適度な土壌水分を保つことが重要である。
・土の乾湿が大きいと根が割れやすいので、土が乾いている時は水やりを行う。
・ただし、頻繁にかん水すると主根の地中深くへの伸長が妨げられ、側根の発育を促し、又根の原因にもなるので注意する。
(2) 間引き
・栽植密度と生育は密接な関係にあり、密植ほど個体生育量は低下する。
・間引きは、通常は本葉1~2葉期と3~4葉期の2回行うが、1回で完了する場合は本葉2~3葉期に除草を兼ねて行う。
・間引き遅れは根の変形や裂根にもつながるため、注意が必要である。
・最終的な株間は小カブで15cm、中カブで20cm程度にする。
(3) 被覆
・カブは葉つき出荷を行うため、葉の傷みは品質を著しく落とす。
・葉を美しく栽培するには、白寒冷紗や防虫メッシュ資材によるトンネル被覆栽培という方法もある。
(4) 中耕・培土
・2回目の間引きの際(本葉3~4葉期)に、土の表面を軽く中耕する。
・この作業で根の張りがよくなり、ひいては肥大期の生育がよくなる。
・間引き後は株元へ土寄せして、株のぐらつきを防ぐ。
(5) 追肥
・大カブは生育後半に急速に肥大するため、追肥が遅れて肥料が遅効きすると玉の変形や割れにつながり秀品率の低下を招くので、間引き後の土寄せ時に追肥を行う。
・また、小・中カブに対しても大雨などで土壌が過湿になり生育が順調でない場合は、葉面散布によって追肥すると効果的である。

5.主な病害虫と生理障害

(1) 病害
・北海道において注意を要する病害は、ウィルス病、白さび病、軟腐病、べと病などである。
(2) 害虫
・北海道において注意を要する害虫は、アシグロハモグリバエ、キスジトビハムシ、ダイコンバエ、タネバエ、マルガタゴミムシなどである。
(3) 生理障害
・主な生理障害は、さめ肌症、芯腐れ、ス入り、内部褐変、割れなどである。

6.収穫

(1) 収穫適期
・小カブなら根の直径が5cmぐらい、大カブは15cmになれば収穫適期で、早く育った株から収穫する。
・とり遅れると肥大しすぎて裂根してしまったり、ス入り等、生理障害の原因になるので注意が必要である。
(2) 収穫方法
・出荷規格に合わせ直根を切除し、病害・障害カブは出荷しない。